最適な薬物選択に最短距離でたどり着くための一冊!
徹底解説!糖尿病治療薬 選び方・使い方
患者に応じた処方のポイント
内容
序文
主要目次
近年,新規糖尿病治療薬の発売が続いている.これら新薬の多くは,血糖降下作用に加え,心腎疾患に好ましい影響を与える,体重を増やさない,低血糖のリスクが少ない,など優れた特徴を持つ.良好な血糖コントロールを目指すうえで,優れたツールを使い分けることができるようになったのは大変良いことなのだが,一方で,薬物の選択方法は複雑かつ難しくなった.さて,たくさんの糖尿病治療薬の中からどのように最適な1剤を選んだら良いのか?
わが国のガイドラインにはこれまで,患者ごとの病態を評価して,①インスリン分泌と②インスリン抵抗性を指標に糖尿病治療薬を選択するべき,と記載されていた.また,欧米のガイドラインでは,①動脈硬化性心血管疾患と心不全,慢性腎臓病のリスクまたは合併の有無,②低血糖のリスク,③体重増加の最小化,④コスト,などを基準に薬物を選択するべきと記載されている.
一方実臨床では,患者ごとの多彩な情報すなわち,年齢や性,糖尿病の型や病態,罹病期間(2型糖尿病も進行性),多彩な糖尿病の合併症や併存症の有無,疾患や治療に対する思い,経済的状況を含む家庭環境など多くの情報をもとに,患者ごとに最適と思われる薬物を選択している.ガイドラインに記載されている数個の指標だけで糖尿病治療薬が選択されているわけではない.
本書を作成するにあたりまず考えたのは,ガイドラインに記載されている一般的な原則と,臨床医の経験則をつなぐ役割をする材料を提供したい,ということであった.そのためには,薬物選択に用いる具体的な条件を多く挙げて,それぞれの条件における薬物選択の考え方や根拠を個別に提示するのが良いだろうと考えた.目の前の患者が複数の条件や特徴を持つ場合(例えば,高齢で腎機能障害を持つ,など),それぞれの項(高齢者糖尿病の項と,腎機能障害合併糖尿病の項)を読むことによって,一般的な原則と経験則を踏まえた薬物選択に最短距離でたどり着く.そのような本にしたいと考え,編集を行った.治療の個別化において,最適な第一選択薬が何か,そして第二選択薬,第三選択薬として何を追加すべきかを分かりやすく説明している.
また本書では,様々な条件を持つ典型例も提示し,処方に至る過程をより実感できるような工夫もした.さらに,不完全ながら,様々な条件において選択するべき薬物が一目で分かるような早見表も付録として添えた.
糖尿病診療では今後さらに,「個別化」や「オーダーメード診療」が重要なキーワードとなるはずである.上記のような特徴を持つ本書が,患者ごとに「個別化」された「オーダーメードの薬物選択」の助けになることを願ってやまない.
最後に,本書の企画から完成まで大変なご尽力をいただいた,文光堂の佐藤真二氏に深く感謝申し上げます.
2021年1月
麻生好正,薄井 勲
1 糖尿病の病態
2 糖尿病の診断,分類,検査
3 糖尿病の治療戦略
Ⅱ章 各種糖尿病治療薬の基本知識
1 ビグアナイド薬
2 チアゾリジン薬
3 DPP-4阻害薬
4 スルホニル尿素(SU)薬
5 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
6 SGLT2阻害薬
[COLUMN]イメグリミン塩酸塩
7 α-グルコシダーゼ阻害薬
8 経口GLP-1受容体作動薬(経口セマグルチド)
9 配合薬
10 GLP-1受容体作動薬
11 インスリン
12 配合注射薬
[COLUMN]GIP/GLP-1受容体デュアルアゴニスト
Ⅲ章 病態・状況別の薬物療法
1 肥満,インスリン抵抗性を伴う糖尿病
2 やせ,インスリン分泌不全を伴う2型糖尿病
3 妊娠糖尿病,糖尿病合併妊娠
4 小児糖尿病
5 高齢者糖尿病
6 腎機能障害合併糖尿病
7 虚血性心疾患合併糖尿病
8 肝機能障害合併糖尿病
9 ステロイド治療中の糖尿病
10 1型糖尿病への経口糖尿病治療薬の選択
11 2型糖尿病へのインスリン治療─経口糖尿病治療薬とインスリン注射との併用─
12 薬剤費を軽減したい場合
13 周術期・絶食検査時の薬剤中止と再開
14 シックデイ時の薬剤調整
Ⅳ章 症例から考える薬物療法
1 健診で初めて糖尿病を指摘された症例
2 10年間放置された糖尿病症例
3 シフトワーカー 服薬アドヒアランス不良の症例
4 高齢者でサルコペニアと認知症を合併した症例
5 糖尿病性腎症を合併する症例
6 周術期に経口薬中断,インスリン,経口薬再開した症例
7 高度肥満の合併症例
8 心不全と虚血性心疾患の合併症例
V章 付録
1 病態別薬剤選択早見表
2 糖尿病治療薬一覧表
索引