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心房細動100万人の時代を生きるプライマリ・ケア医必携の一冊!

もう怖くない!心房細動の抗凝固療法

プライマリ・ケア医のためのシンプルアプローチ

  • 著:小田倉弘典(医療法人土橋内科医院院長)
  • A5判・200頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-1939-7
  • 2017年8月発行
定価 3,780 円 (本体 3,500円 + 税)
あり
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正誤表

内容

序文

主要目次

心房細動は,現在日本に100万人以上いると推定されているcommon diseaseであり,プライマリ・ケア医も遭遇することの多い疾患である.心房細動では血栓が生じやすく,脳梗塞リスクの高い患者ではその予防のために抗凝固療法が必要であるが,出血リスクが高まるため,苦手としているプライマリ・ケア医が多い.本書では,自身もプライマリ・ケア医の現場に身を置く第一線の専門医が,心房細動の抗凝固療法を行ううえでプライマリ・ケア医が知っておくべき知識を余すところなく解説する.

はじめに─ エビデンス,患者世界と現実世界とのギャップを埋めるには?─

 2010年の後半からブログ「心房細動な日々」を本格的に書き始めました.心房細動に関する論文をとにかく片っ端から読んで,アブストラクトを日本語に訳し,コメントを入れ,毎日のように更新しました.
 初めは「若いころから慣れ親しんできた心房細動について,読んだ論文をまとめよう」くらいの軽い気持ちでした.最初は,おとなしく日本語訳のみを書き残していましたが,始めて数ヶ月くらいから心房細動について語りたくて仕方がなくなり,いつのまにか語ることが楽しくなっていることに気がつきました.気鋭の哲学者,千葉雅也氏が「勉強の哲学」(文藝春秋)で指摘した「享楽的こだわり」の状態です.
 ところが,さらに論文を読み進め,批判的吟味を加える作業を毎日行っていると,ひとつひとつのエビデンスに対してどんどん懐疑的になり,ひいてはエビデンスと現実世界とのギャップを痛切に感じ続ける日々がやってきました.「この論文のこういう問題点が目の前の患者さんには適応できない」,たくさん論文を読んで心房細動オタクになるほど,そうした論文の限界だけが目について患者さんに適応できず,現実世界から遠ざかっていく,そのギャップを埋めるべくまた論文を読んでいく,という,たちの悪い堂々巡りでした.この悪循環を断ち切るには,千葉雅也氏も言うように,あるところで自分なりに主観的に,エビデンスと現実世界の比較を「中断」する作業が必要となります.中断して自分なりに「まぁこんなところだろう」と決めるのです.
 さて,この中断作業には患者さんの病態や心房細動治療への思いや,その人の文脈を理解することが不可欠と思われますが,患者さんの世界を理解することにも上記の「中断」が必要であることに気がつきます.患者さんを含め他者の内面を完全に理解することは不可能です.「この人はこう思っているのだろう」とある時点で理解の追求を中断しないことには,処方箋の一枚も書けなくなります.
 ブログを開始して約7年,ここに来てようやく,日々の診療とはこのように論文世界や患者世界をとことん追求することではなくて,自分なりの思いに基づいてその追求を中断し,現実的な決断をつける営みであるということに気がついたのです.「世の中も患者さんも,決して100%わかることはできない」ということがわかったわけです.そしてそうした中断の中で,現実的な着地点を見つけ出すことにこそ,医療の楽しみがあるということも…….
 ただ,やはりこうした着地点の発見にはある程度の指標が必要かもしれません.「抗凝固薬のここが知りたい.でも論文にもガイドラインにも書いていない」,診察室でそういう思いを抱く医師は多いのではないでしょうか.抗凝固薬には,まだまだどう対処してよいかわからない問題がたくさんあります.
本書は,あくまで診察室で日々悩む医師の視点から,多くのプライマリ・ケア医が抱く抗凝固療法に関する日常的な細やかな疑問に対して,できるだけ現実的に対応することに主眼を置きました.また専門医の先生が読んでも,読み応えがあるように,最新のエビデンスやガイドラインも網羅したつもりです.そして,今まで述べたようなエビデンスと現実世界,ひいては患者さんと医師のギャップを埋めるために何が必要かという視点を貫くように心がけました.
 そのため,これまで出版されている抗凝固薬に関する書籍に比べると,生物社会心理的なアプローチや,専門医の先生からはお叱りを受けるような見解が記載されているかもしれません.しかし一方で,ワルファリンの細かな調整法から在宅認知症患者さんの抗凝固療法に至るまで,「かゆいところに手が届く」ように項目を設定しています.
 上記のようなアプローチには,家庭医療学のコンセプトが欠かせませんでした.医療福祉生協連家庭医療学開発センターの藤沼康樹先生には,各種セミナーやFacebook等を通じて多くのインスピレーションをいただきました.また文光堂の小柳健さんには,本書の企画から出版に至るまで,多くのアドバイスを頂きました.この場をお借りして厚く御礼申し上げます.
 ブログ「心房細動の日々」はこのような変遷を続けながら,これからも続けていくつもりです.本書が7年にわたるブログの現時点での集大成として,先生方の「中断」と「着地点の発見」の一助になれば幸いです.

2017年7月
小田倉弘典

序章 心房細動の基礎知識
 1 心房細動のメカニズム
 2 心房細動の疫学と予後
 3 心房細動の分類
 4 心房細動診療のロードマップ
 5 心房細動の旅
1章 抗凝固薬の基礎知識
 1 凝固系の基礎知識
 2 ワルファリンとNOAC
  コラム NOAC,DOAC,どちらで呼ぶ?
2章 抗凝固療法の基本的な考え方
 1 抗凝固療法の超基本
3章 脳塞栓症のリスク評価(A)
 1 リスク評価の超基本
  コラム 「非弁膜症性」と「弁膜症性」の違いは?
 2 CHADS2スコアの問題点
 3 CHADS2スコア0,1点の低リスク例の適応はこう考える
  メモ HAS-BLEDスコア
 4 高齢者の適応はこう考える
  コラム 在宅認知症患者の現実世界を考える
 5  発作性心房細動の適応はこう考える
4章 抗凝固薬の意思決定(D)
 1 抗凝固薬意思決定の超基本
  コラム 患者中心の医療の方法と抗凝固薬
5章 抗凝固薬の選び方(C)
 1 薬理の比較
 2 エビデンス,ガイドラインの比較
  a.RCT
   コラム 大出血? 頭蓋内出血?出血性脳卒中?
  b.リアルワールドデータ
   コラム リアルワールドデータはこう読む
   コラム 用量設定からみた各NOACの強みと弱み
  c.ガイドライン
 3 使い分け実践編·
  a.ワルファリンかNOACか?
  b.4つのNOACのどれを選ぶか?
   メモ TTRとは?
   コラム ワルファリン治療の人種差とSAMe-TT2R2スコア
6章 抗凝固薬の管理(A)
 1 抗凝固薬管理の基本8項目
 2 ワルファリンの上手な使い方
   コラム 脳出血,大出血,脳梗塞後の抗凝固薬の再開
 3 NOACの上手な使い方
  a.モニタリング
  b.用量設定
  c.薬物相互作用
  d.NOAC服用中の出血への対処法
  e.ワルファリンとNOACの切り替え方
   コラム 透析患者の抗凝固療法
 4 抜歯,内視鏡,手術,除細動,アブレーション時の対処法
  a.抜歯
  b.内視鏡
  c.手術
  d.除細動
  e.カテーテルアブレーション
 5 冠動脈疾患患者に対する抗凝固薬+抗血小板薬の使い方
 6 血圧管理
 7 服薬アドヒアランス

【診察室で便利な心房細動,抗凝固療法のお役立ち図表】
●心房細動の分類
●症状のある心房細動への対処法
●CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア
●抗凝固薬を誰に処方すべきか
 ・私案
 ・日本循環器学会ガイドライン
●HAS-BLEDスコア
●高齢者の抗凝固療法の考え方
●抗凝固療法における意思決定の手順
●各抗凝固薬の薬理学的特性比較一覧
●SAMe-TT2R2スコア
●各抗凝固薬の特徴比較一覧
●当院における抗凝固薬の使い分け
●Dr.Lipの提唱する抗凝固薬のシンプルな使い分け
●脳梗塞予防薬チェックシート
●ワルファリンの導入と維持
●PT-INR上昇時の管理アルゴリズム
●ワルファリンに影響を与える因子
●NOACのモニタリングの実際
●NOACの減量基準と禁忌(各薬剤添付文書より)
●腎機能とNOACの用量
●ワルファリンとNOACの切り替え方
●抗凝固薬服用者の内視鏡検査時のフローチャート
●外科的手技前のNOAC中止期間
●除細動時の抗凝固療法
●冠動脈疾患合併心房細動患者の抗血栓療法
 ・2016年ESCガイドライン
 ・2015年ヨーロッパ不整脈学会実践ガイド