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「運動のつながり」に着目すれば,肩の運動機能の理解がより深まる!臨床手技の幅が広がる!!

運動のつながりから導く肩の理学療法

カバー写真
  • 編集:千葉慎一(昭和大学保健医療学部理学療法学科)
  • B5判・180頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-4554-9
  • 2017年4月25日発行
定価 4,400 円 (本体 4,000円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

肩関節の運動は足し算のようなものであり,肩関節複合体を構成する肩周囲の関節,体幹,胸郭,さらに下肢がそれぞれに与えられた機能を十分に果たすからこそ,一部の関節に負担をかけずに運動が遂行される.複雑な肩関節の運動機能を理解し,臨床で成果を上げるには,複数の関節機能や関節間の「運動のつながり」を理解しなければならない.本書では,昭和大学藤が丘リハビリテーション病院で臨床を行ってきたセラピストや医師を中心に,部位やテーマごとに肩との「運動のつながり」を分かりやすく解説し,その評価方法と治療への展開・実践を豊富な図を用いて解説する.


 すでに皆さんもご承知のように,肩関節の運動は複雑です.そのため,肩関節の運動機能を理解するためには,複数の関節の機能や各関節間の「運動のつながり」を理解する必要があります.私自身は1992年に昭和大学藤が丘リハビリテーション病院に入職した時に,「運動のつながり」という考え方をはじめて知りました.当時の昭和大学藤が丘リハビリテーション病院は技士長である山嵜勉先生のもと,入谷誠先生は足,福井勉先生は膝,山口光國先生は肩の分野でそれぞれ活躍されている時で,私は入谷先生のもとで足底板を学ばせて頂くことになりました.私は入谷先生の足底板療法を通して,足から膝,股関節,腰,肩甲帯というような,下から上に遡っていく「下肢から見た運動のつながり」の概念を学びました.この時期の経験が,今現在でも私の理学療法に対する考え方の基本となっています.
 私は1998年からは山口先生のもとで肩関節を学ばせて頂き,今現在に至っております.その頃の山口先生の肩関節疾患に対する治療は,肩関節に対するアプローチは当然ですが,下肢や体幹のストレッチや前腕の運動など,肩関節以外の部分に対するアプローチを盛んに行っておりました.「肩関節の治療のために下肢や体幹のストレッチをする」,このような考えは今では当たり前のことになっておりますが,当時は一風変わったやり方として捉えられていました.しかし,多くの患者さんが山口先生の治療で良くなっていく場面を見ていく中で,私は「なぜ,体幹をストレッチすると肩が挙がるようになるのか?」「なぜ,下肢をストレッチすると肩が挙がるようになるのか?」など,それらの理由を追及するようになりました.その作業結果の蓄積が「上肢から見た運動のつながり」という考え方となりました.したがって,「上肢から見た運動のつながり」の考え方は決して私のオリジナルというわけではなく,「下肢から見た運動のつながり」の概念をベースに,沢山の先生方の文献を参考にさせて頂いた内容を私なりの解釈でまとめたものです.
 今回,編集させて頂いた本書『運動のつながりから導く肩の理学療法』では「上肢から見た運動のつながり」という考え方を,「運動のつながり」という概念を共有する昭和大学藤が丘リハビリテーション病院の理学療法士,作業療法士,医師の方々,そして私が「上肢から見た運動のつながり」の考え方をまとめる際に特に参考にさせて頂いた方々に,それぞれが得意とする立場から肩関節について書いて頂きました.著者の皆様方のおかげで,様々な視点から肩関節をより深く考えるための材料になる本を作ることができたと感じております.この場をお借りして心より感謝申し上げます.
 「運動のつながり」という考え方は最近,「運動連鎖」という言葉で広く認知されるようになりました.しかし,臨床現場では,まだ十分に応用できていないのが現状だと思います.本書が肩関節疾患の治療に携わる方々の悩みを解決する糸口となれば幸いです.

2017年4月吉日
千葉 慎一
1 肩関節障害の評価と理学療法
 OPA 知っておきたいX 線画像の診かたのポイント
 OPA 知っておきたい超音波画像の診かたのポイント
 OPA 知っておきたい診断のポイント─身体所見のとりかた─
2 肩甲上腕関節の機能に着目した肩の理学療法
 OPA 知っておきたい肩甲上腕関節の動態解析─3D-to-2Dレジストレーション法─
3  肩甲胸郭関節,肩鎖関節・胸鎖関節の機能に着目した肩の理学療法
 OPA 知っておきたい上肢挙上時における肩甲骨・鎖骨の運動機能評価のポイント
4 肩甲上腕リズムに着目した肩の理学療法
5 胸郭の機能に着目した肩の理学療法
6 体幹の機能に着目した肩の理学療法
 OPA 知っておきたい頚椎の機能解剖とバイオメカニクス
7 下肢の機能に着目した肩の理学療法
8 姿勢調整に着目した肩の理学療法
9 肘,前腕,手関節の機能に着目した肩の理学療法
 OPA 知っておきたいヒトの進化と肩─上腕の役割の変化─
10 投球動作への応用
 OPA 知っておきたい投球時の肩関節と肘関節に加わるストレス
索 引

OPA=ONE POINT ADVICE