TOPページへ

1テーマ3分で学ぶ!心不全緩和ケアの考え方

心不全緩和ケアの基礎知識35

カバー写真
  • 編集:心不全緩和ケア研究会
  • 監修:佐藤幸人
  •     坂田泰史
  • B5変型判・96頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-1940-3
  • 2017年9月発行
定価 2,700 円 (本体 2,500円 + 税)
あり
在庫
電子版販売サイト
電子書籍の販売サイト

※電子版の購入方法は,各販売サイトにてご確認ください.

内容

序文

主要目次

書評

高齢心不全患者の増加に伴い,心不全の終末期医療や苦痛に対する緩和ケアが注目されているが,始まったばかりでありエビデンスも乏しい分野である.本書は,現場で心不全緩和ケアに携わる研究会のメンバーにより,これからの心不全緩和ケアを考えるために必要な基礎知識をまとめたものである.厚労省と関連学会の考え方から現場の声に至るまで,現段階の考え方と課題を整理し,必要な知識を35の項目にコンパクトにまとめた1冊.

序 文

 近年,心不全患者は高齢化しており,併存症も多くなっている.さらに,社会的背景,家族背景も複雑化している.日本では10年くらい前から取り組まれている心不全多職種チーム医療であるが,医師,看護師,薬剤師,心臓リハビリ指導士,管理栄養士,医療ソーシャルワーカーなどの多職種が多面的に,医学的なことだけでなく社会的背景や家族的背景にまで踏み込んで介入する試みが浸透してきている.
 その活動の中で心不全の緩和ケアは医学的にも社会的にも重要な課題であるにもかかわらず,終末期との判断がしばしば困難であることやエビデンスに乏しいことなどから,具体的な記述が困難な領域となっていた.しかし心不全患者の予後は平均すると「がんにも匹敵するほど不良」なことが明らかになってきた.また,最期はどうしても呼吸困難や浮腫がとれずに堪え難い苦痛を伴う症例もある.このため心不全多職種チーム医療のひとつとして,緩和ケアに焦点を当てることが数施設を中心に2010年頃より行われ始めた.
 がんに対する緩和ケアには歴史があり基本骨格が定められ,講習会も盛んに行われている.一方で,非がん疾患である心不全の緩和ケアは骨格も定められておらず,従来は現場の医師が試行錯誤しながら単独で行っていた施設もある.しかし時代の流れとともに,医師単独で心不全緩和ケアを行うことはすすめられなくなってきた.患者・家族にも予後不良な疾患であることを理解していただき,心不全多職種チームまたは従来の緩和ケアチームの中でオープンに検討しながら行うことが望ましい.エンドポイントには精神的な改善,身体的な改善,患者・家族が望む場所で最期を迎えることなど多くあるが,それぞれの目標にそれぞれの専門職種が積極的にかかわることが大切である.
 このような社会的背景の中,われわれは心不全緩和ケアの検討を公の場で行い,その知識を医学的,社会的に還元することを目的として心不全緩和ケア研究会を組織した(http://shinfuzenkanwa.jp).本書はその活動の一環として作成したが,多くの患者とその家族の苦痛を少しでも取り除く助けになれば幸いである.

平成29年8月
心不全緩和ケア研究会代表世話人
佐藤 幸人

1章 心不全緩和ケアの概念と社会的背景
 01 心不全における緩和ケアの概念とは
 02 緩和ケアの歴史
 03 人生の最終段階における医療体制整備事業について
 04 心不全緩和ケアと厚生労働省,わが国の学会の方向性
 05 現場の声の必要性
 06 教育システムの必要性とPEACEプロジェクト
 07 臨床倫理の考え方
2章 緩和ケアを行うための体制構築
 08 すべての治療が十分検討されたか
 09 患者が希望する人生を送るための意思決定支援の体制
 10 心不全多職種チーム医療の構築
 11 地域連携における緩和ケア
3章 緩和ケアを行うための基礎知識
 12 緩和ケアにおける身体症状の評価指標
 13 スピリチュアルペインとソーシャルペイン
 14 抑うつ・不安・認知機能障害の評価
 15 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の概念
 16 アドバンス・ディレクティブとリビング・ウィル
4章 多職種による実践
 17 緩和ケアにおける点滴強心薬,利尿薬の考え方
 18 呼吸困難に使用する薬剤
 19 疼痛に使用する薬剤
 20 鎮静に使用する薬剤
 21 せん妄に使用する薬剤
 22 うつ・不安に使用する薬剤
 23 看護師による非薬物緩和ケア
 24 薬剤師によるサポート体制
 25 管理栄養士による塩分制限の緩和
 26 心臓リハビリの緩和ケア効果
 27 家族のケア
 28 死後カンファレンスの意義
 29 在宅医療における緩和ケア
 30 訪問看護における緩和ケア
5章 今後の課題
 31 透析の中止
 32 人工呼吸器の中止
 33 終末期における輸液,輸血の制限
 34 植込み型除細動器(ICD)の停止
 35 補助人工心臓(VAD)の導入と停止
索引

MEMO
 心不全ステージ分類とは
 緩和ケアと医の倫理委員会
 予後,医療コストの視点からみた緩和ケア
 心不全多職種チーム医療と心臓リハビリ
 医療者のバーンアウトのケア
 今後の地域医療

評者:平山篤志(日本⼤学医学部内科学系循環器内科学分野主任教授)

 40 年前には,急性心筋梗塞を救命することが人⽣を全うさせることを意味していた.現場で救命をあきらめることは,医学的にも倫理的にも許されないことであった.しかし,この40 年に急性心筋梗塞は致死的な病気ではなくなり,重症患者も救命できるようになった.このように,循環器医療の革新的技術の進歩により医学的に⽣物学的寿命を延ばすことはできるようになったが,一方現場では,人⽣を本人が希望するように全うさせているのかという倫理的な問題が⽣じ,医学と倫理に⼤きなギャップが⽣じるようになった.背景には,悪化と緩解を繰り返しながら最終的には死を迎えるという心不全の増加,その多くが高齢者ということがある.高齢者は,どのように⽣きるかではなく,どのように死を迎えるかを考えなければならない.これを国⺠一人一人が真剣に論議することができない風土が我が国にはある.それは,宗教との結びつきが希薄になったことと関連する.宗教には死に対する考えや一定の倫理がある.それが希薄になった今,臨床の現場では新たなる倫理的規範としての「緩和ケア」が必要とされている.医療側だけでなく本人,家族,そして社会的背景を考慮して,患者の希望する医療を提供することである.
 がん領域での緩和ケアではすでに実践されているが,循環器領域では概念はあっても実践されていない.心不全が症状の悪化と緩解を繰り返しながら死を迎えるなかで,突然死ということも起こりえるため,がんとは異なった経過をとる病態であることによる.このような心不全特有の経過を辿るなかで,緩和ケアという考えは,患者本人だけでなく家族にも理解しがたい.死を迎える最終段階では,納得はしてもらえるがすでに遅きに失するし,初回の心不全入院では納得してもらうことは難しい.このように「心不全の緩和ケア」は必要性が理解されていても,実践が難しいのが現実である.その困難に立ち向かったのが本書である.この本には,実際に臨床の現場で難治性心不全患者を数多く診療している医療チームにしか書けない問題点と解決への模索策が如実に記載されている.現場で悩んでいる人たちや,まだ緩和ケアという言葉を聞いただけという人たちに是非一読してもらいたい本である.この本が基礎知識と書かれているように,この本に解決策があるわけではない.この本を一つの梃子として,⼤きく「心不全の緩和ケア」が現場での議論の端緒となって⼤きな広がりを⾒せ,国⺠を含めた⼤きな議論に発展してゆくことを期待するものである.