大きく進歩したパーキンソン病類縁疾患の最新知見をエキスパートが解説!
新刊パーキンソン病類縁疾患のすべて
診断・治療・研究の最前線
内容
序文
主要目次
私が脳神経内科医として歩みはじめた頃,進行性核上性麻痺や多系統萎縮症は強烈な印象を残した.何の抵抗もなく後方に転倒してしまう患者さんの姿,夜間病棟に響く大きなイビキ,そして突然死の知らせを受けた経験は,今なお鮮明に記憶に残っている.以来,主治医,指導医として,有効な治療を提供できない悔しさを抱えてきた.その思いを背景に,2019年,『非定型パーキンソニズム─基礎と臨床─』(文光堂)を企画・編集し,当時の知見を総括した.
それから7年,この領域は大きく変貌した.タウやαシヌクレインを標的とする疾患修飾療法の開発が進み,複数の臨床試験が行われる一方,自己免疫性パーキンソニズム,機能性パーキンソニズム,CAR-T療法に伴うパーキンソニズムなど,新たなmimicsも注目されている.疾患修飾療法を真に患者さんの利益につなげるためには,臨床表現型の多様性を捉え,背景病理をできるだけ早期かつ正確に診断するとともに,mimicsを適切に除外することが不可欠である.希少疾患であるがゆえに,病理,画像,遺伝学を含む知見を集積し,多領域・多施設で協働することも欠かせない.
同時に,「非定型パーキンソニズム」という呼称そのものを見直す動きも生まれている.parkinsonismは本来,疾患名ではなく症候を表す語であり,atypicalという表現が患者さんやご家族に否定的な印象を与えかねないとの指摘もある.こうした国際的な潮流を踏まえ,本書では「パーキンソン病類縁疾患」という名称を採用した.
本書では,神経変性疾患としてのパーキンソン病類縁疾患と,主に非神経変性疾患に伴う二次性パーキンソニズムを体系的に整理し,症候,疫学,診断,画像,病理,治療から,病態解明・治療開発の最前線までを網羅した.各分野の第一線で活躍される先生方にご執筆いただき,臨床医と研究者の双方にとって,現在地を知り,次の一歩を考えるための道標となる一冊を目指した.
ご多忙のなかご執筆くださった先生方,ならびに本書の企画から刊行まで支えてくださった編集部の皆様に,心より御礼申し上げる.本書が日々の診療に役立ち,さらにパーキンソン病類縁疾患で苦しむ患者さんのよりよい診療と,未来の治療開発につながることを願ってやまない.
2026年9月
下畑 享良
岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 教授
1 本領域の概念の変化……下畑享良
2 パーキンソン病類縁疾患の自律神経障害……中村友彦
3 パーキンソン病類縁疾患の認知機能障害……馬場 徹
4 パーキンソン病類縁疾患の睡眠障害……藤田裕明,鈴木圭輔
5 パーキンソン病類縁疾患の嚥下障害……上羽瑠美
6 パーキンソン病類縁疾患のリハビリテーション……古和久典
7 病因タンパク質研究の最新情報……三木康生,若林孝一
8 クライオ電子顕微鏡が解き明かす神経変性疾患の分子病態……樽谷愛理
9 PETが可視化するパーキンソン病類縁疾患の多層的病態……島田 斉
10 神経免疫学的研究(神経炎症)の最前線─パーキンソン病類縁疾患における炎症・免疫の関与……松瀨 大
11 疾患修飾薬の最前線 αシヌクレイン……長谷川隆文
12 疾患修飾薬の最前線 タウ……山原直紀,下畑享良
Ⅱ.各論
A.Parkinson-like disorders
1 多系統萎縮症
a 疫学・臨床像・診断基準・画像所見……松島理明
b MSA mimics……森 泰子,下畑享良
c 病理・病態……他田真理
d 睡眠関連呼吸障害と突然死……大嶋康義
e 治療とケア……西田勝也,二村直伸
2 進行性核上性麻痺と大脳皮質基底核変性症
a 疫学・臨床像・診断基準……瀧川洋史,花島律子
b mimics……大野陽哉,下畑享良
c 画像所見……德丸阿耶
d 病理・病態……岩崎 靖
e 治療とケア……花島律子
3 レビー小体型認知症
a 疫学・臨床像・診断基準・画像所見……髙橋牧郎
b mimics……波田野 琢
c 病理・病態……仙石錬平
d 治療とケア……藤城弘樹
4 前頭側頭葉変性症……渡辺宏久
5 パーキンソニズムをきたすその他の変性疾患……関 守信
B.二次性パーキンソニアン障害(Secondary Parkinsonian disorders)
1 特発性正常圧水頭症(iNPH)……山原直紀,下畑享良
2 脳血管性パーキンソニズム……三原雅史
3 自己免疫性パーキンソニズム……木村暁夫
4 IgLON5抗体関連疾患……下畑享良
5 Niemann-Pick病C型(NP-C)……喜多也寸志
6 機能性パーキンソニズム……上床希久,藤岡伸助
7 CAR-T療法に伴うパーキンソニズム……髙尾昌樹
索 引