臨床推論は『問診』で決まる!どこに注目し,何を引き出すか,そのポイントを総合診療のエキスパートが解説!
新刊目指せ総合診療エキスパート!
臨床推論力がアップする問診の“勘どころ”
内容
序文
主要目次
実地医家にとって,診察室で交わされる医師と患者の対話こそが,診断プロセスの出発点となる.とはいえ,非常に多忙な日常診療という限られた時間の中で,患者の語りの中から疾患鑑別に直結する情報を拾い上げるためには,漫然と質問を重ねるのではなく,意図をもった問診が求められる.問診を行うとしても,「具体的にどのようなことをきけばよいのか」,「いわゆるエキスパートはどうやってきいているのか」など,誰しも疑問に感じるところではないだろうか.
私自身,総合診療医として研修を開始した当初,「エキスパートの医師と初学者では,いったい何が違うのか」という問いを強く抱いていた.その原体験の一つが,私の“臨床の父”である生坂政臣先生の問診を間近で学ばせていただいたことにある.患者によって,同じ主訴であっても,問いかけの順序,言葉の選び方,患者の反応の受け止め方がまったく異なり,そこから導かれる臨床推論は驚くほど洗練されたものである.その違いは,単なる知識量の差ではなく,「どこに注目し,何を引き出そうとしているのか」という問診の“視点”にあるのではないか,そう感じたことが,本書の原点となっている.
本書は,臨床推論力を高めるために,「問診」に焦点を当てた「臨床現場で使える」実用書である.特に,疾患を切り分けるうえで決定的となる「キーフィーチャー」を,いかに医師と患者の対話の中から引き出すか,その“勘どころ”を具体的に解説することを目的としている.本書は,2023年から2025年にかけて雑誌「Medical Practice」に連載された総合診療領域のエキスパートによる各症例を軸に,より学びが深まるよう加筆修正を行うとともに,連載では扱わなかった6つ
の新規症例を追加している.なお,書籍化にあたり各症例の末尾に初出情報を記載した.
また,本書の各症例は以下の項目から構成されている.効果的に学びを深めるためのポイントとして本書を読み進める前に以下を是非ともご参照いただきたい.
1. 医師と患者の対話
実際の診察場面を想定した「医師と患者の対話」を豊富に提示している.ある症状について病歴聴取を行う際,どのように質問するのか,そしてその問いかけに対して患者はどのように反応するのかを,具体的なフレーズとして示している.読者には,対話を読み進めながら,「自分であれば次に何をきくか」,「なぜ医師はこの質問をしているのか」を意識し,鑑別疾患を頭に思い浮かべつつ読み進めていただきたい.
2. エキスパートの着眼点
医師と患者の対話の中に潜む重要なポイントを抽出している.対話を読んで考えた内容を振り返り,「どこが診断の分かれ目であったのか」,「見逃してはいけない情報は何か」を整理するためのパートである.初学者が思考を言語化する助けとなると同時に,経験を積んだ医師にとっても自身の臨床推論を振り返る機会となることを目指している.
3. Pivot & Cluster
臨床推論の思考の枠組みとして「Pivot & Cluster」を取り入れている.これは,症候やキーフィーチャーから診断へ向けての“軸(Pivot)”を定め,そこから関連する疾患群を“塊(Cluster)”として想起する考え方である.診断を一問一答で進めるのではなく,柔軟に仮説を行き来しながら鑑別を洗練させていくための,実地診療に即した診断推論戦略の一つである.
4. その後の経過と診断
各症例では,その後の臨床経過と最終診断を簡潔にまとめている.必要に応じて,身体診察所見や画像所見なども提示し,問診で得られた情報がどのように診断へと結びついたのかを確認できる構成としている.
5. 病歴聴取のピットフォール
病歴聴取には,陥りやすい落とし穴が存在する.本書では,症例ごとにピットフォールとなりやすい点を見出しとして明示し,なぜ誤った方向に進みやすいのかを解説している.さらに,理解を深めるための「メモ」さらには「学びを深める」といったコラムを追加している.
6. 一歩踏みこむ!キーフィーチャーを捉える問診フレーズ!
各症例を通じてぜひ身につけてほしい「実践で使える問診フレーズ」を提示している.初学者が用いがちな問いかけと,エキスパートが用いる問いかけを対比させることで,キーフィーチャーを的確に捉えるための違いを明確にした.明日からの診療ですぐに活用できるフレーズ集として役立てていただきたい.
また,巻末には各症例の「主訴」「Pivot & Cluster」ならびに「一歩踏みこむ!キーフィーチャーを捉える問診フレーズ」をまとめた一覧を掲載している.取り上げた症例についての振り返りに活用いただきたい.
本書が,読者の先生方の診療における臨床推論の質を一段高める一助となれば幸いである.
2026年1月
千葉大学大学院医学研究院地域医療教育学 特任教授
千葉大学医学部附属病院総合診療科
千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター
鋪野紀好
case 1 「今朝からめまいが続いています」
case 2 「意識を失ってました」
case 3 「頭が痛くてだるいです」
case 4 「変な匂いがして嫌な気持ちになるんです」
第2章 顔面・口腔・頸部の症状
case 5 「左のまぶたが腫れて,目が開かなくなりました」
case 6 「歯茎が腫れぼったくて歯磨きのときに血が出ます」
case 7 「熱が続いて,首が腫れています」
第3章 胸痛・呼吸困難・動悸
case 8 「歩くと息切れがするんです」
case 9 「急に左胸が痛くなりました」
case 10 「夜寝ようとすると息苦しくて眠れないです」
case 11 「昨日から左胸が痛いです」
case 12 「3日前から咳があります」
case 13 「時々,胸がドキドキします」
第4章 腹部症状
case 14 「昨日から腹痛と嘔吐が続いています」
case 15 「突然便器いっぱいに真っ赤な便が出たんです!」
case 16 「ご飯を食べているとお腹が痛くなります」
case 17 「ずっとお腹の痛みが続いています」
case 18 「昨日から下腹部に痛みがあります」
第5章 四肢・運動器の痛み
case 19 「足が痛くて眠れないんです」
case 20 「歩くと左足が痺しびれます」
case 21 「膝から下が腫れて痛いです」
case 22 「手の痛みがずっと続いています」
case 23 「痛い,痛いと騒いで動けなくなりました」
case 24 「手先が痺れるんです」
case 25 「2日前から腰が痛いです」
case 26 「右肩が痛くて腕も痺しびれているんです」
第6章 全身症状
case 27 「熱があって寒気もします」
case 28 「急激に寒くなって,その後火照るんです」
case 29 「1年前から脈が速いんです」
case 30 「寝ても疲れが取れないんです」
case 31 「食欲がありません」
◆ case一覧(主訴・Pivot&Cluster・キーフィーチャーを捉える問診フレーズ)