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脳卒中後のリハビリのメカニズムを知る上で必要不可欠な基礎研究を多数紹介!

脳卒中後の運動機能回復レビュー(電子版のみ)

PT・OTが知っておきたい基礎知識

カバー写真
  • 監修:潮見泰藏(北海道千歳リハビリテーション学院,前国際医療福祉大学教授)
  • 著:今井  樹(那須脳神経外科病院)
  • B5判・120頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-4516-7
  • 2014年12月17日発行
定価 3,960 円 (本体 3,600円 + 税10%)
なし
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内容

序文

主要目次

脳卒中後の運動機能回復メカニズムの知見について触れ,基礎研究の内容を多く紹介している.患者により良いリハビリを提供するために重要なリハビリのメカニズム,それを知る上で必要不可欠な基礎研究は,臨床へのヒントを与えてくれるものである.基礎および臨床研究の知見は,臨床の場にフィードバックすることが必要であり,リハビリというものをより深く知るために重要である.専門用語の使用を必要最小限とし,図を多用することで,学生が読んでも理解できる内容にし,臨床上有意義と思われる研究や,臨床が楽しくなるような研究なども紹介.
☆図版78点,表組2点,モノクロ写真12点


 本書は,脳卒中後の運動機能回復に関心のある,臨床の理学療法士,作業療法士およびその学生に向けて書いたものです.本書の特色の一つに,基礎研究の内容を多く紹介していることが挙げられます.基礎研究はリハビリテーション(以下,リハビリ)のメカニズムを知る上で必要不可欠なものですし,臨床へのヒントを与えてくれるものだからです.そして,何より基礎研究の内容にも目を向けて欲しいという私の願いが込められているからでもあります.
 今から約15年前(大学3年の夏),リハビリのメカニズムについて詳しく知りたくなった私は,生理学研究室の門を叩きました.そこで初めて,リハビリのメカニズムはわかっていないことが多いということを知り,とても衝撃を受けたのです.このことは,リハビリのメカニズムを背景としたアプローチがほとんど行われていないことを意味し,従来の経験に基づいたリハビリが未だ継続されていることを示しています.ここにおいて,より良いリハビリを患者に提供するためには,その背景にあるリハビリのメカニズムを知ることが重要であり,そして基礎および臨床研究の知見を臨床の場にフィードバックすることが必要だとの考えを抱くようになりました.実際に臨床の世界に飛び込んでからもその考えは変わらず,現在に至っています.
 臨床の場に出てから,幸運にも,科学技術振興機構の創造的研究推進事業(CREST)の鍋倉チーム(加藤グループ)に参加し,脳卒中後の機能回復メカニズムについての情報に接する機会を得ました.この研究プロジェクトが終了した後,これらの知見を多くのセラピストに還元することができないかと考えていたところに本書の話をいただきました.今回はその知見の一部を還元できるよう執筆したつもりです.
 基礎および臨床研究で得られた知見は臨床にすぐに活用できない場合も多く,セラピストから敬遠されがちです.しかしながら,これらは自分たちが提供しているリハビリというものをより深く知るために重要であり,また,プロフェッショナルとしてセラピストが存在し続けるためにも不可欠なものです.本書を通じて,少しでもこの想いを共有していただけたのであれば,これ以上に嬉しいことはありません.
 本書では,専門用語の使用を必要最小限とし,図を多用することで,学生が読んでも理解できる内容にしたつもりです.また,あまり知られていないが,臨床上有意義と思われる研究や,臨床が楽しくなるような研究などもあえて紹介しました.本書が基礎および臨床研究・論文に触れる端緒となり,臨床のセラピストにとって,さらには脳卒中患者およびその家族にとっても有益なものとなれば望外の幸いです.
 最後に,本書を著すにあたり,このような貴重な機会を与えてくださった潮見泰藏先生に感謝申し上げます.また,学部生および院生時代に根気強くご指導してくださり,今の私の土台を築いてくださった恩師の黒澤美枝子先生に御礼申し上げます.

平成26年11月吉日
那須脳神経外科病院 理学療法士
今井 樹
第1章 基礎および臨床研究の成果を臨床の場面へ
 1 セラピストであるために
 2 基礎研究と臨床研究
第2章 早期リハビリテーションの有効性
 1 早期とは発症後いつ頃までを指すのか
 2 早期リハビリによる有効性(運動パフォーマンスの観点から)
 3 早期リハビリで逆に悪くなることはないのか
 4 点滴(薬物)によるリハビリ援護(エダラボンの効用)
 5 早期リハビリは心理面にも良い影響を及ぼす
第3章 脳損傷後の運動機能回復メカニズム
 1 超急性期の回復はペナンブラ次第
 2 脳は柔軟な器官
 3 運動学習と脳の可塑性
 4 脳卒中後のリハビリと脳の可塑性9
 5 脳卒中後の代償運動の捉え方
 6 脳卒中後の脳の可塑性に影響を及ぼす因子
第4章 脳卒中後の予後予測
 1 評価指標から見た予後予測
 2 損傷部位が最も予後に影響を及ぼす
 3 mirror movementsも手がかり
 4 年齢の影響を考える
第5章 やる気は脳卒中後の運動機能改善に重要な要素
 1 脳卒中と抑うつ状態
 2 脳卒中患者の運動機能改善とドーパミン
 3 リハビリ課題の順番も大切
 4 順番だけでなく,難易度も大切
 5 リハビリにおける報酬とは
 6 やる気(脳活動)と運動機能回復との関係
第6章“豊かな環境”が大切
 1 豊かな環境が運動機能改善に重要
 2 脳卒中患者の一日を振り返る
 3 リハビリ以外の時間をどう活用するか
 4 退院後のサポートも大切
第7章 脳卒中患者に対するmirror therapy は有効なのか
 1 mirror therapyとは
 2 どれくらい有効性があるの?
 3 有力なmirror therapyのメカニズム
第8章 視点を広げてくれる臨床研究
 1 脳卒中の再発予防
 2 脳卒中後の筋力トレーニング再考
 3 somatosensory gatingという現象
 4 意外と知られていないあらゆる立位時の脳活動
索 引