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「目の前の依存症患者とどう関わっていくのか?」依存症に関わる全ての専門職に役立つ経験知を解説.多職種・多機関連携まで包括したアディクション診療と回復支援の決定版!

やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド

アルコール・薬物・ギャンブルからゲーム依存まで

  • 編集:松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部部長)
  • 編集 佐久間寛之(国立病院機構さいがた医療センター副院長)
  • 編集 蒲生裕司(正心会よしの病院副院長)
  • A5判・448頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-3629-5
  • 2021年9月16日発行
定価 5,280 円 (本体 4,800円 + 税10%)
あり
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正誤表

内容

序文

主要目次

近年,アルコールや薬物の依存症,ギャンブルやゲームといった嗜癖行動は社会的関心を集めており,アディクション問題に関する専門職への期待は高まっている.本書は,アルコール依存・薬物依存・ギャンブル依存・ゲーム依存の4章から構成.総論・診断にはじまり,医療機関での治療,多職種連携・地域多機関連携による回復支援,各依存症に特有の問題点とその対応,関連法規,さらには当事者の治療・支援への期待と要望の声まで網羅した.多彩な執筆陣による経験ベースのリアルな声,想定される事例と具体的な対応についての解説も交え,目の前の依存症患者に対して診療・支援が一通りできるようになる内容を盛り込んだ.依存症の実態を学び,実践したくなるアディクション診療の手引き.
序 文

 近年,アルコールや薬物の依存症,それから,ギャンブルやゲームといった嗜癖行動は社会的関心を集めており,わが国の保健行政においても重要な課題となっています.そのような中で,アディクション問題に関する治療や相談対応に関して,医療・保健・福祉領域の専門職に対する期待は日に日に高まっています.
 しかしながら,一般の精神科医療関係者がアディクションの治療や回復支援の方法を学ぶのは,容易とはいえません.既存の精神医学テキストでは,アディクションに関する章の記述はとても表面的で,臨床現場で悩み,苦慮する問題の答えはどこにも見当たりません.アディクションに特化した専門書ならば違うのではないかと期待して紐解けば,基礎医学的な知見や疫学的統計こそ充実しているものの,読めば読むほどに,基礎研究と臨床実践とのはなはだしい乖離ぶりに驚きを禁じ得ません.
 結局,いかなる書物を読もうとも,目の前のアディクション患者とどう関わるのかといった実践上の疑問は,ずっと棚上げされたままなのです.
 もちろん,「臨床のことは実地で揉まれながら身をもって学ぶべきものであって,書籍で学ぶものではない」というのが正攻法であることは,理解しているつもりです.とはいえ,アディクション専門医療機関の数はかぎられており,実地から学ぶ機会はそうそうない,というのも実情なのです.したがって,誰もがアディクション臨床を経験できるわけではありません.かくして,アディクション臨床に関心を抱く若き専門職は,初志を断念してしまう……そんな姿を,私はこれまで何度となく至近距離で目撃してきました.
 やはり幅広い専門職に向けたアディクション臨床の教育は,夢のまた夢なのか……そう挫けかけた矢先に,今回のアディクション臨床に関する教科書作りの話をいただきました.まさに吉報でした.それも,医学分野の教科書で定評のある文光堂から,しかも,蒲生裕司先生(よしの病院/北里大学精神科)と佐久間寛之先生(さいがた医療センター)との共同編集という提案でした.その話を聞いた瞬間,私は,「このメンツならば,これまでなかったアディクションの教科書ができるはず」と確信しました.というのも,蒲生先生と佐久間先生のお二人は,かねてより私がひそかにわが国における依存症業界の次世代リーダーと目していた方たちであり,その発想には,ともすれば従来のアディクション専門医に欠けていたしなやかさと,屈託を感じさせない明るさがあるからです.
 さっそく私たち三人は知恵を出し合い,「この人にぜひ書いてもらいたい」という著者をリストアップして,本の構成を練っていきました.三人の役割分担としては,アルコール依存症を佐久間先生,薬物依存症を私,ギャンブルなどの非物質の嗜癖行動を蒲生先生が企画するという仕切りで作業を進めていきました.
 本書が目指したのは,「辞書的な教科書ではなく,通読できる『リーディング・テキスト』を!」,「無味乾燥な教科書でなく,執筆者の臨床家としての声(ソウル)が聞こえてくるような教科書」,そして,「読者が初診,再診,入院,そして地域という治療の一連の流れを追体験できるような教科書」というものです.そして,そのイメージを実現するために,執筆陣選定のポリシーとして,あえて大御所ではなく,次世代を担うフレッシュな若手精鋭,それも,多職種連携と地域における多機関連携のイメージが広がるように,医師以外の専門職,さらには回復者や依存症者家族といった幅広い執筆陣を選定させていただきました.
 人手不足といわれつづけて久しいこのアディクション領域ですが,本書を契機として,この分野に飛び込み,私たちの仲間になってくださる若い専門職の方が,ひとりでも増えることを心より祈念しています.
 最後になりましたが,このような貴重な機会を与えてくださった文光堂編集企画部の中村晴彦さまと西菜々子さまに,この場を借りて心からの謝意を表したいと思います.

令和3年9月
編集者を代表して
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
松本俊彦
第1章 アルコール依存
 1 総論・診断
  嗜癖の歴史
  アルコール依存症の疫学
  人を信頼できない病としての依存症―自己治療仮説や信頼障害仮説―
  アルコール依存症の遺伝・素因
  アルコール依存症の診断
 2 治療
  アルコール依存症の離脱期の管理
  アルコール依存症の心理社会的治療―集団治療から個別化へ―
  アルコール依存症の薬物療法
  自助グループを知り,体験し,誘う
  アルコール依存症の否認とどう向き合うか・動機づけ面接
  減酒
  アルコール依存症患者の内科合併症
 3 回復支援
  なぜ連携が重要か
  アルコール依存症の内科との連携
  アルコール依存症の多職種連携
  地域連携
  アルコール依存症の家族支援
  当事者から見た治療・支援への期待と要望
 4 アルコール依存特有の問題と対応
  飲酒運転
 5 関連法規
  アルコール健康障害対策基本法などの施策

第2章 薬物依存
 1 総論・診断
 ①総論
  乱用薬物の実態と診断
 ②薬物別診断のポイント
  覚醒剤
  処方薬・市販薬
  大麻
  危険ドラッグと吸入剤・幻覚薬
 ③自己治療仮説
  薬物依存症と併存精神障害―自己治療仮説に基づく理解―
 2 治療
 ①治療総論
  医療機関における薬物依存症治療
 ②乱用薬物別の治療上の留意点
  覚醒剤依存の治療上の留意点
  処方薬・市販薬依存の治療上の留意点
  大麻使用障害の治療上の留意点
  危険ドラッグと吸入剤・幻覚薬への依存の治療上の留意点
 ③集団療法
  薬物依存症に対する集団療法
  薬物依存症に対する作業療法
  薬物依存症に対するエンカウンター・グループ
  女性を対象とした薬物依存症治療
 ④個別的な配慮を要する特殊な病態
  慢性持続性精神病性障害を併存する薬物依存症の治療とその留意点
  トラウマを抱えた薬物依存症患者の治療とその留意点
  発達障害を合併した薬物依存症の治療とその留意点
  「常用量依存」と主張する身体症状症患者の治療とその留意点

 3 回復支援
 ①多職種連携
  薬物依存症治療における心理職の役割
  薬物依存症治療における看護師の役割
  薬物依存症治療における精神保健福祉士の役割
 ②地域連携
  精神保健福祉センターにおける薬物依存症支援
  薬物依存症者をもつ家族に対する支援
  当事者から見た治療・支援への期待と要望
 4 薬物依存特有の問題と対応
  性的マイノリティと薬物依存症および感染症
 5 関連法規
  患者の違法薬物使用を知った場合の司法的対応
  保護観察所における取り組み

第3章 ギャンブル依存
 1 総論・診断
  ギャンブル障害の総論・診断
 2 治療
  ギャンブル障害の治療
 3 回復支援
  ギャンブル障害の多職種連携・多機関連携のあり方
  ギャンブル依存症と地域共生―山梨モデル―
  当事者から見た治療・支援への期待と要望
 4 ギャンブル依存特有の問題と対応
  ギャンブル依存症の債務処理
 5 関連法規
  ギャンブル障害と法令

第4章 ゲーム依存
 1 ゲーム依存
  ゲーム依存の診断・治療・予防

索引