糖尿病のすべてを楽しく学べる名著の新装版!
ここから始める糖尿病レクチュア(電子版のみ)
内容
序文
主要目次
☆図版3点,表組12点,イラスト・線画99点
ある教育学者が,“私は,学習とは楽しいものであるという古くからある考えを信じている”と書いていた.しかし,かつて私が受けた講義を思い起こしてみよう.“楽しく学習できた”と感じた講義も少しはあったが,“ちっとも楽しくなかった”と感じた講義のなんと多かったことか.教育学者って,皆,本当にそう思っているのか,疑問がフツフツと湧いてくる.
学習が楽しいかどうか.それを左右する第1の因子は,クラスメイトにどんな人がいるか.第2は,その分野の試験が,たいして勉強しなくても楽に通過できるかである.楽しい友人がいたり,単位が取りやすかったりすると,“学習は楽しい!”のだ.
内容がチンプンカンプンであれば,“学習とは楽しいものだ”などと金輪際思わない.とくに,その学習の始めに“これは難しい”と感じてしまったら,それから先の詳しいことまで勉強しようという気には絶対にならない.学習の入口は,とっつきやすさこそが命.本書のねらいはそこにある.
糖尿病は,多職種連携が必須の疾患である.この場合の多職種とは,医師はもとより,歯科医師,看護師,薬剤師,栄養士,臨床検査技師,理学療法士,ひいては病院の事務方や行政の人々に至るまでをさす.そして,発症予防や合併症の進展抑制のために,医療に関係するすべての人々が,糖尿病について知り,適切に行動できるようにならなければ,国民の期待には応えられない.そのためには,職種や学部を問わず,本書を開いていただきたい.
本書のルーツは,1989年初版の拙著「ナースのための糖尿病レクチュア」である.しかし,その後の臨床糖尿病学は,発症の仕組みから,合併症,コントロールの目安,内服薬,インスリン製剤などに至るまで,どこをとっても大きく進歩した.同時に,ケアにはいろいろな立場の人のサポートが不可欠であるという考えが,医療人ばかりでなく一般の人々にも広く知られるようになった.そのため旧著は大改訂が必要となり,大幅な書き換えや書き足し,イラスト変更などが求められ,改訂版というより新版として,このたびの“新装開店”となった.
イラストをお願いした印南ゆう子さんには,旧著以来,久方振りにお目にかかった.著者はそれなりに齢を重ねたが,彼女は当時と全くお変わりになっていない.絵を描くことが若さを保つコツなのか.文光堂の編集担当はバリバリの若手の中村珠理さん.お世話になったお二方に深謝である.
平成26年2月
齋藤 宣彦
1 炭水化物(糖質)とは
2 体内に入ったブドウ糖(=グルコース)のゆくえ
3 エネルギー源としてのブドウ糖
[1]エネルギーをつくる
[2]エネルギー産生の第1歩
[3]ブドウ糖の細胞内への取り込み
[4]糖の代謝における肝臓の重要性
[5]脳細胞はブドウ糖に頼りきっている
[6]筋肉が使うブドウ糖
[7]その他の臓器が使うブドウ糖
4 血糖値はこうして一定に保たれる
[1]血糖値の調節機構
[a]血液中に入ってくるルート
[b]血液から出ていくルート
[2]血糖値を調節するホルモン
[a]インスリン
[b]グルカゴン
[c]その他の血糖調節ホルモン
Lesson2 糖尿病の定義とその分類
1 糖尿病とは
[1]まず正確な言葉を知っておく――糖尿病と尿糖陽性とは違う
[2]糖尿病とはどういう病気か――糖尿病の定義
2 糖尿病の分類
[1]成因から4つに分ける
[a]1型糖尿病(Ⅰ型とは書かない)
[b]2型糖尿病(Ⅱ型とは書かない)
[c]その他の特定の機序,疾患による糖尿病
[d]妊娠糖尿病
[2]各種の糖尿病の成因と病期
[a]インスリン非依存状態とは
[b]インスリン依存状態とは
Lesson3 糖尿病の成因に関する説
1 1型糖尿病の成因に関するいくつかの説
[1]自己抗体が認められる場合と認められない場合とがある
[2]1型糖尿病と関係がある遺伝因子もある
[3]ウイルス感染との関係も推察されている
2 2型糖尿病の成因に関するいくつかの説
[1] 2型糖尿病は多因子遺伝――いくつかの疾患感受性遺伝子がある
[2]インスリン抵抗性
[3]環境因子では
[4]インスリン分泌低下やインスリン抵抗性の有無を知るには
Lesson4 糖尿病の疫学
[1]糖尿病は増加の一途
[2]国際的にみて,わが国は2型糖尿病が多いのか
[3]1型糖尿病はヨーロッパ諸国に比べて少ない
[4]糖尿病の予後
[5]糖尿病の死因
Lesson5 糖代謝の異常を知るための検査
1 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
2 その他の糖代謝の検査
Lesson6 糖尿病はこうして診断する
1 診断のすすめかた
[1]糖尿病発見の糸口
[2]血糖値とともにヘモグロビンA1cを測定する
[3]「糖尿病」と診断するための条件
[4]「境界型」へはこう対応する
[5]妊娠糖尿病は別に扱う
2 糖尿病の自覚症状と身体所見
[1]初期には自覚症状がないのが糖尿病
[2]自覚症状が出るのはかなり悪くなってから
[3]その他の症状は糖尿病の合併症によるもの
Lesson7 糖尿病治療の原則
1 糖尿病の治療
[1]1型糖尿病の治療
[2]2型糖尿病の治療
2 食事療法
[1]食事療法の基本
[a]1日の摂取エネルギー量(熱量)はどのくらいにすれば
[b]1日の摂取エネルギー量が決まったら
[c]特別な場合――小児と妊娠
[d]合併症がある場合の食事療法
[e]食事療法に関するいくつかの新しい問題
3 運動療法
[1]運動の種類を表す言葉
[2]運動がなぜ糖尿病によいか
[3]運動前のメディカルチェック――運動トレーニング前には必ず実行しましょう
[4]どんな運動を,どれくらいすれば――運動療法の実際
[5]運動トレーニング中の注意事項
4 経口糖尿病治療薬療法
[1]スルフォニル尿素薬(SU薬)
[2]速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
[3]α(アルファ)-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬)
[4]ビグアナイド薬
[5]チアゾリジン薬
[6]ジペプチジルペプチダーゼ-4(DDP-4)阻害薬
[7]配合薬
5 インスリン療法
[1]インスリン療法の基本――なぜインスリンの補充が必要か
[2]インスリン療法の適応
[3]インスリン製剤の種類
[4]インスリン注射回数とインスリン量
[5]インスリン注射のしかた
[6]インスリン治療時の注意
[a]低血糖症
[b]シックデイ対策
6 インクレチン関連注射薬(GLP-1作動薬)
7 糖尿病治療に必要な生活習慣サポート・精神的サポート
[1]糖尿病治療の基本は,“規則的生活をする”努力から
[2]生活習慣の基本は,食習慣・運動習慣・禁煙・節酒
[a]食習慣
[b]運動習慣
[c]喫煙
[d]飲酒
[3]糖尿病患者さんの心を支える
[a]患者さんの心が揺さぶられるとき
[b]心の変化
[c]“コーチング”の応用を
Lesson8 よりよい治療のために―糖尿病の治療は教育にあり―
1 糖尿病について教育が必要な3つの理由
[1]糖尿病は生活習慣病
[2]発症している人には日常生活こそが重要
[3]自覚症状がない
2 糖尿病教育とは
[1]学習カリキュラムの立案
[a]学習目標の作成
[b]目標到達のための方法
[c]学習目標到達度の評価
Lesson9 よいコントロール状態かどうかの評価
[1]「糖尿病のコントロール」という言葉
[2]平均血糖値の指標
[3]「糖尿病のコントロール」と「血糖コントロール」という言葉
[4]患者さん自身が血糖値を測る
Lesson10 糖尿病の急性合併症
[1]糖尿病ケトアシドーシス
[2]高浸透圧高血糖症候群
[3]その他の状態
[a]乳酸アシドーシス
[b]低血糖昏睡――急性合併症ではないが…
[c]その他の病態による昏睡
Lesson11 糖尿病の慢性合併症
[1]ミクロアンジオパシーとマクロアンジオパシー
[2]トリオパシーとは
[3]糖尿病網膜症とその他の眼の合併症
[4]糖尿病腎症
[a]低蛋白血症による浮腫に対して
[b]腎臓の機能低下に対して
[c]低血糖にも注意
[5]糖尿病神経障害
[6]糖尿病と脳血管障害・認知症
[7]糖尿病と心臓
[8]糖尿病と高血圧
[9]糖尿病の下肢病変
[a]糖尿病壊疽
[b]下肢の蜂窩織炎
[c]下肢の閉塞性動脈硬化症
[10]歯周病
[11]糖尿病の皮膚病変
[a]糖尿病に特異的な皮膚病変
[b]糖尿病があるために合併しやすい皮膚疾患
Lesson12 小児糖尿病
[1]小児の糖尿病の多くは1型糖尿病――その発症のしくみ
[2]小児の糖尿病の治療
Lesson13 糖尿病と妊娠
[1]糖尿病妊婦の妊娠前管理
[2]糖尿病妊婦の妊娠中の管理――産科医と併診する
[3]周産期の管理
Lesson14 糖尿病と外科手術
[1]手術時や外傷時には,血糖のコントロールが乱れる
[2]糖尿病があると感染しやすい
[3]糖尿病の合併症がかくれていることがある
[4]創傷治癒が遅い
[5]手術後の血糖管理のためのインスリン投与量
索引
■Column
●「早朝尿」「朝食前尿」「食後尿」を使いわけよう
●単位は正確に覚えよう
●糖尿病は代謝の異常,「代謝」とは?
●糖尿病の種類:もっとたくさんの種類があるということがわかってきた
●C-ペプチドってなんですか?
●〔CASE REPORT 1〕1型糖尿病:典型的な発症のしかたを呈した例
●膵臓と糖尿病との関係
●ランゲルハンスは「ランゲルハンス島」という呼び名を知らない
●夢の人工膵臓は可能か
●開業医アレテウス
●ナウル島の人々
●糖尿病は「コントロールする」もの
●あけぼの現象
●次世代への教育
●イヌシリンおじさんのこと:インスリンの飲み薬はできないか
●〔CASE REPORT 2〕心筋梗塞を起こしても非常ベルは鳴らない!
●今後,発売される薬:SGLT2阻害薬
●ALTの本名
●開発中の薬:GPR40作動薬
●脂肪細胞が作りだすアディポカイン(アディポサイトカイン)
●「空腹時血糖値」という言葉
●犬の膵臓を取ってから120年
●オジサンが変なことをいいだした
●説明はわかりやすい言葉で
●インスリンを体内に入れるには
●〔CASE REPORT 3〕糖尿病のコントロール不良で脳梗塞を合併した例
●〔CASE REPORT 4〕血漿浸透圧の高値による意識レベルの低下