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廃用症候群に対して,理学療法は何ができるのか?何をすべきか?その答えがここにある

理学療法から診る廃用症候群

基礎・予防・介入

カバー写真
  • 編集:奈良 勲(金城大学特任教授,広島大学名誉教授)
  •     神戸晃男(金沢医科大学病院副部長)
  •     山崎俊明(金沢大学教授)
  •     木林 勉(金城大学教授)
  • B5判・264頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-4506-8
  • 2014年5月発行
定価 6,480 円 (本体 6,000円 + 税)
あり
在庫

内容

序文

主要目次

理学療法士にとっての廃用症候群について,今ぜひ押さえておきたいポイントを一冊にまとめた.前半で,さまざまな廃用症候群の特徴,発症のメカニズム,経過など,前提となる基礎知識を症状ごとに簡潔に解説した.後半で,実際の臨床でどう対応すべきか,主な疾患に特有な廃用症候群を想定し,その予防と臨床的介入について具体的に解説した.理解の助けになる図表も多用し,新人・若手理学療法士向けに,わかりやすく記載した.
☆図版142点,表組36点,カラー写真2点,モノクロ写真53点

序 文

 重量を受けている地球環境下で生まれ,発達して生活を営む人間にとって,重力に抗して直立歩行(ambulation)という形態で移動(locomotion)することは,最大の条件である.つまり,何らかの理由で寝たきり状態になることは,重力に完敗した現象であり,個々人の自由意思による人間らしい生活が奪われることになる.
 近年,保健・医療・福祉領域は顕著な発展を遂げてはいるが,超高齢化社会のスピードに十分に対応できているとは言えない.また,近年,バリアフリーが広がり,新たな車いす,小型移動車,義肢装具などが開発されているとはいえ,個々人の本来の移動能力が最小限であったとしても,それが確保されていることに勝るものはない.
 抗重力姿勢を保ちながらより安全に移動するために必要な3 大要素は,前庭機能,体性感覚,視覚であるが,実際的にはその他の多岐にわたる要素が必要となる.よって,移動能力に関しても多面的な角度から対処する必要がある.
 そのなかで,近年では「生活不活発病」と呼ばれているが,本書では従来の呼称である「廃用症候群」に焦点を絞り,基礎的側面と主な疾患特有の廃用症候群について,その予防と臨床的介入を探ることを目的として企画した.また,「廃用症候群」と同様,「過用症候群」や「誤用症候群」も留意すべきことではあるが,それらについては,各執筆者の判断に委ねた.基礎的側面では可能な範囲で,主に細胞・組織・器官に関連して触れていただいた.
 ちなみに,移動という機序・概念をミクロ・マクロ的に観ると,生体の分子レベルから,神経系,循環系,消化器系,代謝系などの働きに関連していることであるが,終局的に,個体はシステムとして機能することを銘記しておく必要性がある.
 さらに,移動の概念は,社会生活に関連する事項として,ライフライン・通信・交通・経済など,自然環境では,風(空気の移動)・河水・海水の移動など,地球内では地下水,断層,マグマなどがある.宇宙では天体の秩序ある運動によって地球自体も存続しているのである.よって,地球上の人間の生活もミクロ・マクロ的に捉え,移動を妨げる1つの大きな要因となる廃用症候群の予防と改善に善処する必要性があると確信する.
 さて余談ではあるが,本書では, マイナスイメージを呈する「訓練」,「障害・障害者」という用語の使用を控えている.前者については,以前より私が関与するジャーナルや書籍などでは,その使用を行政用語や文献を除いて自粛してきた.それは本書でも同様である.その理由は,「訓練」とは特定の人間にある行動を習得させる際に,上から目線で命令的に使用されることが多いからである.これまで差別・放送禁止用語などの使用は是正されてきたが,行政,マスメディア,リハビリテーション分野領域や軍隊,テロ組織などでも未だ「訓練」が多用されている.さらに,これは学術用語としても曖昧模糊であり,運動療法に関連している場合には「運動:exercise」,ADLに関連している場合には「練習:practice,training・能力低下:disabilityなど」を使用すれば「訓練」を使用する必要性はないと考える.
 後者の「障害・障害者」の用語も行政用語,マスメディアはもとより,学術用語としても使用されている.私は,最近,表面的な対処ではあるが「障がい・障がい者」と表記している.しかし,ICFのimpairment,disabilityの言語的ニュアンスとして「障害」は,その同意語とは考えられないのである.これに代わる用語として,状況によるが,「機能損傷,機能不全,機能変調,機能低下など」,構造に関しては「変形,配列変位,欠損など」の用語が考えられる.
 ことばや専門用語を含め,私たちは生まれ育った国や地域の文化の多大な影響を受ける.しかし,すべての文化が望ましいとは限らない.己が刷り込まれた文化の功罪を常に吟味しながらより適切な文化を温存すると同時に,新たな文化を創造してゆくことが,それぞれの時代の人間に求められよう.

2014年5月
編著者代表 奈良 勲

Ⅰ章 廃用症候群論
 01 臨床哲学からみた廃用症候群─心身の老衰などにおける人間の尊厳─
 02 生理学から見た廃用症候群
II章 廃用症候群のメカニズム
A.局所性廃用症候群のメカニズム
 01 拘縮
 02 筋萎縮
 03 骨萎縮
 04 軟部組織変化(萎縮)─皮膚
 05 褥瘡
B.全身性廃用症候群のメカニズム
 01 栄養に関連する廃用症候群
 02 摂食嚥下機能,消化吸収機能に関連する廃用症候群
 03 廃用症候群による代謝機能の異常と理学療法
 04 口腔機能に関連する廃用症候群
 05 姿勢調節機能に関連する廃用症候群に対する理学療法
III章 臨床的特徴,予防および廃用に対する理学療法・リハビリテーション
 01 全置換術後関節の廃用症候群
 02 慢性腰痛疾患の廃用症候群
 03 脳卒中患者の廃用症候群
 04 筋ジストロフィーの廃用症候群
 05 心疾患の廃用症候群
 06 脊髄損傷の廃用症候群
 07 高齢下肢切断者の廃用症候群
 08 新生児集中治療室入院児の廃用症候群
 09 精神疾患者の廃用症候群
 10 高齢者の廃用症候群
索引