TOPページへ

日頃の抗菌薬療法を見直す一冊!

ここがポイント!

抗菌薬耐性を攻略する 抗菌薬の選び方・使い方(電子版のみ)

抗菌薬の基礎知識から感染症治療・感染制御まで

カバー写真
  • 編集:堀井俊伸(浜松医科大学医学部感染症学講座教授)
  • 著:堀井俊伸(浜松医科大学医学部感染症学講座教授)
  •  矢野邦夫(浜松医療センター副院長兼感染症科科長)
  • A5判・212頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-1015-8
  • 2012年4月23日発行
定価 2,750 円 (本体 2,500円 + 税10%)
なし
在庫
電子版販売サイト

上記の電子版販売サイトのボタンをクリックすると,外部のサイトに移動します.電子版の購入方法は各販売サイトにてご確認ください.

内容

主要目次

書評

抗菌薬耐性を克服するには,日々適切な抗菌薬の処方を積み重ねていくなど,日頃からの対策が重要で,そのためにはどのような視点で抗菌薬療法を進めるとよいか,正しい知識を持っていなければならない.
本書は,種々の抗菌薬耐性菌のなかでも日常診療で遭遇する頻度の高い病原微生物を取り上げ,使用される抗菌薬の薬理学的特徴(作用機序,PK-PDの特徴,経口薬の吸収率・生物学的利用率,組織移行,排泄経路など),注意すべき副作用,注意すべき薬物相互作用,抗微生物スペクトルの特徴,薬物耐性の問題,使い分けを含めた抗菌薬療法のための知識,医療機関における処方規制のポイントを含めた感染制御のための知識などを解説したテキストである.
医療関連感染を発生させない,拡大させないために,すべての医療従事者が読んでおくべき一冊.
☆図版25点,表組15点,線画5点
第1章  MRSA感染症(ディフィシル菌感染症を含む)
1 概 要
2 抗菌薬の基礎知識
A 薬理学的特徴
 1.グリコペプチド系薬
 2.リネゾリド
 3.ダプトマイシン
 4.アルベカシン(アミノグリコシド系薬)
 5.ST合剤
 6.リファンピシン
B 注意すべき副作用
 1.グリコペプチド系薬
 2.リネゾリド
 3.ダプトマイシン
 4.アミノグリコシド系薬
 5.ST合剤
 6.リファンピシン
C 注意すべき薬物相互作用
 1.グリコペプチド系薬
 2.リネゾリド
 3.ダプトマイシン
 4.アミノグリコシド系薬
 5.ST合剤
 6.リファンピシン
3 抗微生物スペクトルの特徴
 1.グリコペプチド系薬
 2.リネゾリド
 3.ダプトマイシン
 4.アルベカシン
 5.ST合剤
 6.リファンピシン
4 抗菌薬耐性の問題
5 抗菌薬療法のための知識
6 感染制御のための知識
 1.感染制御
 2.医療機関における抗菌薬の処方規制
 3.ケーススタディー
第2章  緑膿菌感染症
1 概 要
2 抗菌薬の基礎知識
A 薬理学的特徴
 1.β-ラクタム系薬
 2. タゾバクタム・スルバクタム・クラブラン酸(β-ラクタマーゼ阻害薬)
 3.キノロン系薬
 4. ゲンタマイシン・トブラマイシン・アミカシン(アミノグリコシド系薬)
 5.ポリミキシンE(コリスチン)
B 注意すべき副作用
 1.β-ラクタム系薬
 2.キノロン系薬
 3. ゲンタマイシン・トブラマイシン・アミカシン
 4.ポリミキシンE(コリスチン)
C 注意すべき薬物相互作用
 1.β-ラクタム系薬
 2.キノロン系薬
 3. ゲンタマイシン・トブラマイシン・アミカシン
 4.ポリミキシンE(コリスチン)
3 抗微生物スペクトルの特徴
 1.ペニシリン系薬
 2. 注射用セファロスポリン系薬・セファマイシン系薬・オキサセフェム系薬
 3.カルバペネム系薬
 4.モノバクタム系薬
 5.キノロン系薬
 6.ゲンタマイシン・トブラマイシン・アミカシン
 7.ポリミキシンE(コリスチン)
4 抗菌薬耐性の問題
5 抗菌薬療法のための知識
6 感染制御のための知識
 1.感染制御
 2.医療機関における抗菌薬の処方規制
 3.ケーススタディー
第3章  基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌感染症
1 概 要
2 抗菌薬の基礎知識・抗微生物スペクトルの特徴
A 薬理学的特徴
 1.β-ラクタム系薬(β-ラクタマーゼ阻害薬を含む)
 2.キノロン系薬
 3.ST合剤
 4.アミノグリコシド系薬
B 注意すべき副作用
 1.β-ラクタム系薬
 2.キノロン系薬
 3.ST合剤
 4.アミノグリコシド系薬
C 注意すべき薬物相互作用
 1.β-ラクタム系薬
 2.キノロン系薬
 3.ST合剤
 4.アミノグリコシド系薬
D 抗微生物スペクトルの特徴
 1.β-ラクタム系薬(β-ラクタマーゼ阻害薬を含む)
 2.キノロン系薬
 3.ST合剤
 4.アミノグリコシド系薬
3 抗菌薬耐性の問題
4 抗菌薬療法のための知識
5 感染制御のための知識
 1.感染制御
 2.医療機関における抗菌薬の処方規制
 3.ケーススタディー
第4章  嫌気性菌が関与する感染症:誤嚥性肺炎
1 概 要
2 抗菌薬の基礎知識
A 薬理学的特徴
 1.β-ラクタム系薬(β-ラクタマーゼ阻害薬を含む)
 2.キノロン系薬
 3.マクロライド系薬
 4.クリンダマイシン(リンコサミド系薬)
B 注意すべき副作用
 1.β-ラクタム系薬
 2.キノロン系薬
 3.マクロライド系薬
 4.クリンダマイシン(リンコサミド系薬)
C 注意すべき薬物相互作用
 1.β-ラクタム系薬
 2.キノロン系薬
 3.マクロライド系薬
 4.クリンダマイシン(リンコサミド系薬)
3 抗微生物スペクトルの特徴
 1.β-ラクタム系薬(β-ラクタマーゼ阻害薬を含む)
 2.キノロン系薬
 3.マクロライド系薬
 4.クリンダマイシン(リンコサミド系薬)
4 抗菌薬耐性の問題
5 抗菌薬療法のための知識
6 感染制御のための知識
 1.感染制御
 2.医療機関における抗菌薬の処方規制
 3.ケーススタディー
●索引
評者:向野賢治(福岡記念病院感染制御部長)

 堀井先生と矢野先生の共著『抗菌薬耐性を攻略する抗菌薬の選び方・使い方』は,現場で遭遇することの多い耐性菌,① MRSA(クロストリジウム・ディフィシルを含む),② 緑膿菌,③ESBL 産生菌,そして院内肺炎として最も頻度の多い④ 誤嚥性肺炎をテーマとし,4 つの各章から構成される.テーマをこの 4 つに絞ってじっくりと記述されているところが,まず本書の良い点である.なぜなら他の耐性菌(VRE,RSP,BLNAR など)による感染症は,日々の臨床で問題になることが非常に少ないからである.医療現場で日々,これら 4 つの感染症と格闘している医師にとって,有益な情報が満載されている本書は頼もしい援軍である.
 本書の記載方法は考え抜かれた独特なもので,読者の理解を促進すると同時に,頭の中の知識が整理されるように工夫されている.
 第一に,要旨を 2~3 行で記載し,その下に本文(説明文)を記載するという方式が貫かれている.この各章および 12 のコラム読了後,再度この要旨を復習確認のために何度も読み返し,知識を完全マスターすべきである.
 第二に,各章は次の順序で整然と統一的に記載されている.
 「1.概要」では,耐性菌に有用な抗菌薬が列挙され,各感染症についても概説される.
 「2.抗菌薬の基礎知識」では,各抗菌薬の作用機序,PK/PD の特徴,経口剤の吸収率(生物学的利用率),組織移行,排泄経路,薬物相互作用が図解入りで丁寧に記述され,堀井先生の臨床微生物学への造詣の深さが示されている.これらは抗菌薬適正使用の土台となる不可欠の知識であり,ここをマスターしなければ,先に進めない.
 「3.抗微生物スペクトルの特徴」では,推奨された各抗菌薬の重要な有効菌種の抗菌スペクトルが記載され,重要抗菌薬の知識をさらに進化させることができる.
 「4.抗菌薬耐性の問題」では,感染制御の専門家として理解しておくべき,耐性菌の発生状況,耐性メカニズム,耐性に関するトピックなどが記されている.
 「5.抗菌薬療法のための知識」では,耐性菌感染症に対する効果的な抗菌薬の使い方,第一選択薬とすべき薬剤,併用療法の組み合わせ,de-escalation の方法などが記されており,非常にプラクティカルな記述であると同時に最新の話題
も取り入れられており,臨床現場の医師・薬剤師にとって最も有用な部分でもある.
 「6.感染制御のための知識」では,耐性菌の隔離予防策の考え方とともに,TDM や抗菌薬の処方規制(届出制,許可制)を含め,耐性菌を増やさない抗菌薬投与法が述べられている.さらに,感染対策のケーススタディとして,アウトブレイクの発生に対し,どのような手順で対策を取ることにより問題を解決していったかが,事例を通して明確に解説されている.
 本書が感染症を診療する医師のみならず,抗菌薬使用の適正化活動に参加するすべての医療従事者の座右の書となることを願う.
(「Medical Practice」2012年8月号掲載)