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臨床実習でも頼りになる一冊!新しい国家試験出題基準に準拠!!

臨床精神科作業療法入門(電子版のみ)

カバー写真
  • 編集:田端幸枝(県立広島大学教授)
  • 編集 谷口英治(大阪河﨑リハビリテーション大学教授)
  • 編集 山崎郁子(国際医療福祉大学大学院特任教授)
  • B5判・336頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-4527-3
  • 2015年6月12日発行
定価 5,500 円 (本体 5,000円 + 税10%)
なし
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正誤表

内容

序文

主要目次

精神科作業療法の臨床で必要とされる基礎知識や技術,基本的態度,さらにどのように実践するか,臨床の実際について解説した入門書.初学者や,臨床の基礎を確認したい作業療法士のために,平易な文章と理解の助けになる図表を用いて,わかりやすく記述した.学生の臨床実習にも役立つ記述が満載.
平成28年から適応される理学療法士作業療法士国家試験出題基準の「Ⅴ 臨床実習」にほぼ準拠した内容で構成した.
☆図版84点,表組101点,モノクロ写真1点
序 文

 日本で作業療法士が医療専門職として認められてから約半世紀が過ぎた.かつて,パラメディカルスタッフと呼ばれた医療専門職はそれぞれの領域でメディカルスタッフとして知識や技術を高め,今や多職種協働チームの中で不可欠な専門職として役割を果たしている.
 精神科医療も昭和59年の不祥事事件以降,精神障害者の人権を尊重する医療へと大きく変化している.閉鎖的だった病院は地域に開かれ,電話の利用や親書の自由も保障されるようになった.長期間であった入院は1 年以内の退院をめざし,患者の退院促進や地域生活支援が進められている.短期となった入院では,救急や急性期治療の症状緩和や退院困難患者の治療等より高度な知識と技術を必要とされ,これらを実現する医療に適応することが作業療法士に求められている.
 不祥事事件が起きた当時の作業療法の主たる対象は慢性期の統合失調症者であった.作業療法は彼らの陰性症状を改善する有用な治療法として処方され,長期入院患者の社会復帰のためのリハビリテーション技術であった.しかし,現在では対象とする障害も多様となり,急性期の患者や家族にはなぜ作業療法を行うかという説明を相手に分かるように話し,治療への同意を得ることから始める.また,外来では作業療法の経過と効果を説明することが求められるようになり,そして,併用される治療法についても意見を求められるようになった.このような中で求められているのは専門職としての幅広い知識と高度な技術と共に,患者や家族に対して効果を示しうる臨床能力であり,説明責任を果しうる医療者としてのプロフェッショナリズムである.このような高度専門医療職としての作業療法士を養成するための臨床教育も医療の変化や社会の変化に応じて見直すことが必要になっている.
 現代の社会的要請に応えて,精神科作業療法の臨床で必要な基礎知識や技術を分かりやすく伝える成書は極めて少ない.そこで,精神科医療を経験する初学者や本領域における臨床的基礎を堅固にしたい作業療法士のために本書を出版することとなった.臨床では1つの理論に基づいての治療や最新の欧米で用いられている評価法をそのまま用いて成功裡に導くことは少なく,基本的態度を身に付け,基礎知識と技術を使いこなせて初めて,個別の患者に対する実際的な専門的技能へと発展できる.個別の患者に対する実際的な専門的技能の修得に寄与できるよう,内容を5章の構成にした.第1章は初学者が臨床を始める前に,自分を確認することができる.第2章は臨床家としての第1 歩を踏み出すための基礎知識について知ることができる.第3 章は精神科医療で必要と考えられる基本的態度と基礎知識について知ることができる.第4章は第2章と第3章を実際にどのように実践するかについて知ることができる.最終章は現在課題となっている臨床実習の今後について知ることができる.本書を執筆されたのは臨床実践を積みながら教育に長年携わってこられた作業療法士の方々と医療専門職の養成に関わってこられた医師の方々である.自らの長年の臨床及び教育経験の中で初学者に伝えたい基本について,テーマに応じてわかりやすく展開していただくことができたと思う.本書が患者の困難や課題に向きあい,問題解決に真摯に取り組もうとしている方々の役に立てば幸いである.
 最後に,体調不良により執筆することは叶わなかったが,企画で先頭に立ち編者らを導いて下さった小平憲子神戸大学名誉教授とご協力を賜った著者の先生方に敬意を表する.また,精神科作業療法の臨床教育の必要性をご理解いただき,出版にご尽力いただいた文光堂の皆様に心からお礼を申し上げる.

2015年6月
編者一同
第1章 臨床実習の準備
1 臨床実習に参加する前に自分と向かい合ってみよう
 1 はじめに
 2 社会のなかの役割について
 3 初診患者としての自分に置き換えてみる
 4 思春期〜青年期の心性と実習について
 5 自分を知り新たな自分に気がつくこと
 6 臨床実習で得るもの
 7 おわりに
第2章 臨床実習の基礎的知識
1 臨床と臨床実習
 1 臨床とは
 2 臨床実習の目的
 3 教育環境
2 臨床における指導
 1 はじめに
 2 臨床における指導
 3 学ぶ者と教える者の基本的姿勢
 4 学ぶ者と教える者の関係
 5 指導効果
 6 おわりに
3 医の原則
 1 医の原則
 2 医療における安全性の確保
 3 対人関係技能とチーム医療
第3章 実践のための基礎的知識と技術
1 職業人としての基礎的知識と技術
 1 職業人として要求されること
 2 接遇の実際
2 作業療法基礎知識と技術
 1 インフォームドコンセント
 2 患者への接し方
 3 治療技法
 4 安全管理
 5 薬物
 6 記録法
 7 実践の場
第4章 臨床実習の実際
1 臨床実習過程
 1 実習形態と目的・内容
 2 臨床実習の展開
2 評価と治療・支援
 1 精神医学的評価・治療の基礎
 2 精神科作業療法の評価・治療の基礎と実際
 3 精神科作業療法の評価・治療例の紹介
 4 国際生活機能分類に基づく評価と支援
3 精神疾患別対応の原則
 1 総論─精神疾患のある方への対応(統合失調症を中心とした基本的対応)
 2 統合失調症
 3 気分障害
 4 不安障害
 5 アルコール依存症候群
 6 認知症
4 症例報告
 1 臨床実習における症例報告とは
 2 症例を報告することの意味
 3 文書報告例
 4 口頭報告例
 5 口頭報告と文書報告
5 実習とトラブル
 1 精神科実習ならではのトラブル
 2 トラブルが生じる実習の特徴と対応策
 3 実習でトラブルが発生したら
 4 より良い実習にするための助言
第5章 今後の臨床実習モデル
1 臨床実習の現状と課題
 1 臨床実習の現状
 2 教育を取り巻く環境の変化に伴う実習形態の変化の必要性
 3 作業療法教育における今後の臨床実習形態の方向性
2 クリニカル・クラークシップによる臨床実習
 1 学生は臨床へ何を学びに行くのか ~CCSという考え方~
 2 学生が臨床で学ぶものはスキルである
 3 安全に診療参加するためのルール~クリニカル・バディシステム~
 4 学生はどうやってスキルを学ぶのか~正統的周辺参加による学習~
 5 指導者はどうやって学生にスキルを伝達するのか~認知的徒弟制による教育~
 6 CCSにおける学生の学習姿勢
3 クリニカル・クラークシップの実際例
 1 CCS実習の枠組み
 2 CCS実習の具体例
 3 メリットとデメリット
索引