無痛分娩システムを安全に立ち上げる! チーム医療の実践ガイド
新刊無痛分娩みんなのギモン
チームで支える質と安全
内容
序文
主要目次
「無痛分娩にしたい」と希望する女性は,近年ますます増えています.これまで日本では,無痛分娩は一部の施設で行われる,どちらかといえば特別な分娩と捉えられてきたかもしれません.しかし,希望する女性が増え,無痛分娩を提供する施設も広がるなかで,これからは無痛分娩を行うこと自体が特別ではない時代になっていくでしょう.そして,出産にかかわるすべての医療者にとって,無痛分娩についての基本的な知識が必要な時代がやってきます.
無痛分娩は,誰か一人の力で成り立つ医療ではありません.安全で質の高い無痛分娩を提供するためには,麻酔科医,産婦人科医,助産師をはじめとする多職種が,それぞれの専門性を活かしながら協力することが不可欠です.鎮痛を始めるまでの準備,分娩進行の評価,鎮痛効果や母児の観察,異常の早期発見と対応など,必要な業務は多岐にわたります.それぞれが自分の役割を果たすだけでなく,互いの役割を理解し,情報を共有しながら必要な業務を分担してはじめて,無痛分娩は安全に,そして円滑に行うことができます.無痛分娩は,まさに「チームで支える」医療です.
実際の現場では,様々な「ギモン」に出会います.「いつ鎮痛を始める?」「なかなか痛みがとれない時は?」「胎児心拍数が急に下がったら?」「無痛分娩をすると分娩時間が長くなる?」「帝王切開になったら?」「分娩後に頭痛や足の痺れがあったら?」そして「急変した時,誰が何をする?」.職種や経験によって抱くギモンは異なっていても,その答えをチームで共有しておくことが,安全で質の高い無痛分娩につながります.
本書『無痛分娩 みんなのギモン―チームで支える質と安全―』は,こうした臨床現場の「ギモン」を出発点として,無痛分娩に必要な知識をできるだけわかりやすく整理することを目指しました.すでに無痛分娩に携わっている方にも,これから携わる方にも,そして麻酔科医,産婦人科医,助産師など職種を問わず手にとっていただける入門書でありたいと考えています.
単に痛みをとることにとどまらず,安全を守ること,そしてより質の高い無痛分娩を提供することが目標です.そのためには,チームのみんなが知識を共有し,同じ方向を向くことが大切です.本書がそのための共通言語となり,それぞれの現場でよりよい無痛分娩をつくっていく一助となることを願っております.
2026年11月
昭和医科大学
加藤里絵
1.無痛分娩の流れ
2.妊婦の生理的変化
3.分娩の流れ
4.胎児心拍数陣痛図
5.分娩時の痛み
6.分娩時の鎮痛法
7.無痛分娩のメリット
2章 無痛分娩の安全を守る取り組みは?
1.JALA
2.「母体安全への提言」からの学び
3.無痛分娩の体制づくり
4.緊急時に備えた薬剤
5.安全のための物品
6.無痛分娩中の飲食
7.ノンテクニカルスキル
3章 無痛分娩に向けて備えることは?
1.妊婦の意思決定を支える
2.無痛分娩の鎮痛前評価
3.インフォームドコンセント:脊髄幹鎮痛
4.インフォームドコンセント:分娩関連
4章 脊髄幹鎮痛のキソ
1.解剖と生理
2.適切な鎮痛範囲と深度
3.脊椎超音波による穿刺部位の同定
4.脊髄幹鎮痛に注意を要する疾患
5.清潔操作のために
6.局所麻酔薬
7.重炭酸ナトリウム(メイロン®)とアドレナリン
8.フェンタニル
5章 脊髄幹鎮痛を実践するには?
1.鎮痛開始のタイミング
2.導入時の体位
3.鎮痛の開始方法
4.鎮痛の維持方法
5.鎮痛中の観察項目
6.突発痛への対応
7.鎮痛記録
8.子宮内胎児死亡
9.帝王切開移行時の麻酔
6章 脊髄幹鎮痛の副作用と合併症
1.分娩への影響
2.高位脊麻
3.局所麻酔薬中毒
4.脊髄幹鎮痛による神経障害
5.母体発熱
6.胎児一過性徐脈
7章 脊髄幹鎮痛にあわせた分娩管理とは?
1.計画分娩/オンデマンド
2.分娩中の助産ケア
3.微弱陣痛
4.回旋異常
5.器械分娩
6.分娩中に注意すべき重篤な産科疾患
7.局所浸潤麻酔と陰部神経ブロック
8章 無痛分娩後も観察して考えよう!
1.観察・診察項目
2.硬膜穿刺後頭痛
3.産後の下肢神経障害
4.分娩後閉尿
5.腰痛・骨盤痛
6.分娩後のメンタルヘルス
7.無痛分娩体制の構築と症例振り返り
文 献
索 引