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学生の教科書,栄養教育の実践書として活用できる1冊!

新刊

学生・管理栄養士のための

栄養教育論

  • 編集:丸山千寿子(日本女子大学家政学部食物学科教授)
  •     赤松利恵(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系教授)
  •     中村菜々子(中央大学文学部心理学専攻教授)
  • B5判・192頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-6065-8
  • 2021年4月発行
定価 2,640 円 (本体 2,400円 + 税10%)
あり
在庫

内容

序文

主要目次

本書では行動科学や社会科学,心理学に裏付けられた栄養教育の実践を具体的な事例を用いて解説する.冒頭で2つの事例を挙げ,「栄養教育」の全体像を把握しつつ,続く章では,食に関する行動変容を促すための,行動科学やカウンセリングの理論・技法,栄養教育のマネジメント法を図表を用いて分かりやすく論じる.また,対象別の栄養管理についても,教育計画の立案から実施および評価までの事例を掲載して詳説.管理栄養士を目指す学生には国家試験対策の教科書として,また,すでに栄養教育を実践している栄養管理士には,栄養教育の課題分析とその改善に役立つ実践書として活用できる1冊.新ガイドライン,コアカリキュラム準拠.



 本書は,管理栄養士となることを目指す学生の皆さんに加えて,すでに栄養教育を実践している管理栄養士の方々を読者対象として編集した初めての教科書です.
 私たちは「栄養教育」の教育対象(学習者)に対峙したときに,なぜ,何のために栄養教育を行うのかということを,その都度確認します.つまり,対象(学習者)のアセスメントを行って課題を抽出し,計画を立て,アウトカムを明確にして,教育効果の最大化を目指すのです.本書では「栄養教育」とは何かを考え,イメージしていただくために,栄養教育の対象となる児童と患者の事例を第1章に提示しました.各章の解説は,第1章に示した課題を念頭において読んでいただきたいと思います.
 栄養教育は,保健・医療・福祉・介護をはじめとしたさまざまな領域において展開されます.食品や料理を組み合わせて「食事をする」ことは,人が生を得てから死ぬまで一生続く営みで,命をつなぐ栄養素を取り入れるためだけでなく,幸せや豊かさにつながるものでもあります.そして,習慣化された「食生活」は心と身体の健康と生活の質・人生の質に大きな影響をもたらします.一方,私たちが生活する自然環境や社会環境は絶えず変化して「食生活」に影響するため,日常化した食生活を変える行動変容は学習者にとって必ずストレスを伴うものとなります.したがって,栄養教育は人の心と生活を尊重しつつ,行動科学,社会科学,心理学などに裏付けられた知識とスキルをもって行うことが不可欠なのです.この難しい問題を克服するために,これまでに得られた諸科学のエビデンスに基づいて計画を立て,実践し,評価を客観的に行うことができるようになりたいものです.そのデータを集積することで,教育の質を高めるための新たなエビデンスが生み出されます.マニュアルに従っているのに成果が得られないと悩むのではなく,成果を得るためには何をすべきか考えましょう.
 本書は,科学的視点をもって栄養教育を推進している新進の専門家に執筆していただきました.カウンセリングの項は,臨床心理学の専門家として臨床栄養に関わり,管理栄養士と連携されている先生方に,学習者とどのように対話したらよいか,わかりやすく解説していただきました.また,対象別の栄養教育については,現状の社会制度などとの関連を踏まえて,栄養教育計画の立案から実施および評価の事例を提示し,今後に向けた課題も理解できるように,それぞれの分野の管理栄養士に執筆していただきました.巻末の年表は国内外の社会情勢と行動科学,社会科学,心理学などの学問的発展が,日本の栄養教育にどのように関連してきたかを理解するために役立ててください.
 これから管理栄養士となる皆さんには科学的な視点をもって栄養教育を行うことができるように,すでに栄養教育を実践している管理栄養士の方々には現状の課題分析と改善に本書が役立つことを願っています.

2021年3月
編集者を代表して
丸山千寿子

第1章 栄養教育はどのような人に行うのだろう
 A [事例1]家で食事を与えられていない子ども
  1 この児童はどのように生活しているのだろうか(栄養教育の対象者の背景)
  2 どのような身体的異常が起きているか(医学的診断と栄養診断)
  3 これを改善しなければ何が起こるか(異常のリスクと予防・治療目的)
  4 なぜ,このような状態にあるのか(原因と影響する要因)
  5 予防できなかったのはなぜか(行動に関わる課題の抽出)
  6 どうしたら,改善できるのか(栄養教育計画を立てる)
 B [事例2]複数の生活習慣病を合併した患者
  1 この患者はどのような人だろう(栄養教育の対象となる患者背景)
  2 どのような身体的異常が起きているか(栄養診断)
  3 これを改善しなければ何が起こるか(病態のリスクと治療目的)
  4 なぜ,このような状態にあるのか(原因と影響する要因)
  5 予防・改善できなかったのはなぜか(行動に関わる課題の抽出)
  6 どうしたら,改善できるのか(治療計画を立てる)
 C 栄養教育の目的を確認する─健康教育と栄養教育─
  1 健康教育のなかに位置づけられる栄養教育(一次予防)
   1 健康教育と栄養教育
   2 栄養教育とヘルスプロモーション
   3 一次予防と栄養教育
  2 疾病の治療を担う栄養教育(二次予防,三次予防)

第2章 人はどのように行動しているのだろうか─行動科学の理論とモデル
 A 行動科学がなぜ必要なのか
  1 行動科学とは
  2 理論とモデル,構成概念
  3 行動科学と栄養教育
  4 エコロジカルモデル
 B 個人に焦点をあてると
  1 刺激─反応理論
   1 レスポンデント条件づけ
   2 オペラント条件づけ
  2 ヘルスビリーフモデル
  3 トランスセオレティカルモデル
  4 計画的行動理論
 C 個人間に焦点をあてると
  1 社会的認知理論
   1 社会的認知理論の概要
   2 自己効力感
   3 セルフモニタリング
   4 ソーシャルスキルトレーニング(ロールプレイ)
  2 ソーシャルサポート
   1 ソーシャルネットワークとソーシャルサポート
   2 効果的なソーシャルサポートとは
  3 ストレスマネジメント
   1 ストレスとコーピング
   2 コーピングの方法
 D 組織・地域に焦点をあてると
  1 コミュニティオーガニゼーション
  2 ソーシャルキャピタル
  3 イノベーション普及理論
   1 イノベーションの普及の速さを決定する5つの要因
   2 イノベーション採用者の5つの分類
  4 ソーシャルマーケティング
   1 ソーシャルマーケティングとは
   2 ソーシャルマーケティングの特徴
  5 ヘルスリテラシー
  6 ナッジ
   1 ナッジとは
   2 具体的なナッジ

第3章 栄養教育の進め方
 A 栄養教育の計画とマネジメントの概要を知る
  1 栄養教育の実施において計画を立てる意義
  2 マネジメントサイクル(PDCAサイクル)
  3 プリシード・プロシードモデル
 B 栄養教育の計画を立てる(新規プログラムを立案できる)
  1 実態を把握する
   1 栄養教育の計画を立てるための“実態把握(アセスメント)”とは?
   2 「何を」実態把握(アセスメント)するか?
   3 「どのように」実態把握(アセスメント)するか?
  2 課題の抽出と目標設定
   1 実態把握から課題を抽出する:重要性と実施可能性
   2 抽出した課題から栄養教育計画の目標を設定する
  3 目標達成に求められる期間(目標を達成するための教育に必要な期間・頻度, 時間などを決める)
   1 予防の場合
   2 治療の場合
  4 場所を決める,確保する
   1 実施場所
   2 部屋の確保
   3 機材など設備の準備
  5 教材を選ぶ
   1 アセスメント結果の利用,実態把握
   2 目標栄養素等摂取量
   3 食品に含まれる栄養素等の量と特徴
   4 食べ方
  6 学習形態を決める
   1 個別学習
   2 一斉学習
   3 グループ学習
   4 ICTを活用した学習
  7 媒体を入手する,作成する
   1 媒体の種類と特徴
   2 媒体の入手・作成と活用の留意点
   3 媒体の例
  8 教育の実施者を決める
  9 必要な資源を確保する
  10 計画書を作成する
 C 計画を実施し,評価しよう
  1 なぜ栄養教育計画の評価をするのか?
  2 評価の種類とそれぞれの評価の位置づけは?
   1 形成的評価
   2 総括的評価
   3 経済評価
   4 総合的評価
  3 質の高い評価を行うためには?
   1 評価デザインを選択する
   2 適切な評価手法を選択する:妥当性と信頼性
  4 評価結果をフィードバックする
   1 プログラムの報告と公表

第4章 学習者とどのように対話するか
 A カウンセリングの基本と技法を知る
  1 心理療法・カウンセリングの代表的な理論
   1 精神分析的心理療法
   2 認知行動療法
   3 クライエント中心療法
  2 カウンセリングの基本態度
   1 クライエントの主体性を尊重する
   2 クライエントに対して偏見をもたない
   3 クライエントの個人情報を守る
   4 カウンセラーも見られているという意識をもつ
   5 専門家として関わる
   6 カウンセラー-クライエント間の心的距離を適切に保つ
  3 話を聴き,クライエントと協働して進める技法
   1 基本的コミュニケーションスキルの階層
  4 栄養カウンセリングを始めよう
   1 面接前の準備
   2 ラポールの形成
   3 課題の明確化と目標の共有
  5 面接技術を向上させるには
   1 自分の面接を聴く・観る
   2 自分が自分のカウンセラーになる
   3 柔軟な視点をもつ練習
 B 行動変容理論とカウンセリングマインド,技法を統合した実践
  1 「行動を変えてあげなくては」の気持ちに気づこう
  2 変えようとすることをやめる
  3 動機づけ面接とは
  4 私たちは患者に何を望んでいるのだろう?
  5 その行動が続いているのはなぜなのだろう?
  6 理解した行動の仕組みから具体的で実行可能性の高い目標を設定する
  7 「〇〇しない」ではなく,「〇〇する」目標を立てる
  8 “できなかったとき”より“できたとき”に注目しよう
  9 “行動”を理解しようという姿勢が関係づくりにつながる
  10 アドヒアランス向上にグループの効果を生かす
  11 グループ形式による心理的効果
  12 グループでのやりとりの実際
   1 糖尿病であることの認識や感情を話し合う
   2 セルフケアが困難な場面への対処を学び合う
   3 血糖コントロールの先にある独自の生き方を明らかにする
  13 おわりに

第5章 栄養教育の展開について考察する
 A 予防に焦点をあてた栄養教育(課題と留意点)
  1 妊婦・授乳婦,新生児・乳児
   1 妊婦・授乳婦
   2 新生児・乳児
  2 幼 児
   1 どのように実態を把握するか(アセスメントの内容と方法)
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか(明確化する際の留意点)
   3 教育計画を策定する際の留意点は何か(期間,時間,回数,学習形態,場所,チームなど)
   4 汎用される既存の教材を紹介し,その教材で何をどこまで教育できるのか
   5 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   6 残されている課題は何か
  3 児童・生徒(栄養教諭)
   1 どのように実態を把握するか(アセスメントの内容と方法)
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか(明確化する際の留意点)
   3 教育計画を策定する際の留意点は何か(期間,時間,回数,学習形態,場所,チームなど)
   4 汎用される既存の教材を紹介し,その教材で何をどこまで教育できるのか
   5 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   6 残されている課題は何か
  [事例1]の栄養指導
   1 どのように実態を把握するか(アセスメントの内容と方法)
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか
   3 栄養教育計画を策定する際の留意点は何か
   4 既存の教材と媒体の工夫
   5 計画を実施し,評価して目標を達成するために,どのような仕組みが必要か
   6 残された課題は何か
  4 成人(地域保健・産業保健)
   1 どのように実態を把握するか
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか
   3 教育計画を策定する際の留意点は何か
   4 栄養教育に使用する教材
   5 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   6 残されている課題は何か
  5 高齢者
   1 どのように実態を把握するか(アセスメントの内容と方法)
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか(明確化する際の留意点)
   3 教育計画を策定する際の留意点は何か(期間,時間,回数,学習形態,場所,チームなど)
   4 汎用される既存の教材を紹介し,その教材で何をどこまで教育できるのか
   5 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   6 残されている課題は何か
  6 外国人
   1 はじめに
   2 外国人患者は多くの不安を抱えている
   3 外国人患者の実態をどのように把握するか
   4 問題点の抽出と目標設定はどのように行うか
   5 教育計画を策定する際の留意点
   6 栄養教育に使用する教材
   7 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   8 残されている課題は何か
 B 治療・増悪防止に焦点をあてた栄養教育
  1 障がい者/障がい児(介護)
   1 どのように実態を把握するか(アセスメントの内容と方法)
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか(明確化する際の留意点)
   3 教育計画を策定する際の留意点は何か(期間,時間,回数,学習形態,場所,チーム)
   4 汎用される既存の教材を紹介し,その教材で何をどこまで教育できるのか
   5 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   6 残されている課題は何か
  2 病人(慢性疾患,代謝異常)
   1 どのように実態を把握するか(アセスメントの内容と方法)
   2 どのように課題を抽出し,目標を設定するか(明確化する際の留意点)
   3 教育計画を策定する際の留意点は何か(期間,時間,回数,学習形態,場所,チーム)
   4 汎用される既存の教材を紹介し,その教材で何をどこまで教育できるのか
   5 計画を実施し,評価してより良いプログラムにするためにどのような仕組みが必要か
   6 残されている課題は何か

あとがき
巻末資料 年表
参考文献
索引