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解剖学から臨床神経学までこれ一冊!大好評のロングセラー教科書最新版!!

新刊

神経局在診断第7版

その解剖,生理,臨床

  • 原著:Mathias Bähr,Ingo Bechmann
  • 訳:代田悠一郎(東京大学医学部附属病院検査部講師)
  • B5変型判・484頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-1548-1
  • 2025年9月10日発行
定価 13,200 円 (本体 12,000円 + 税10%)
あり
在庫

内容

序文

主要目次

遺伝学的検査・抗体検査や画像診断が進歩した現在でも,臨床神経学の第一歩は神経学的診察による局在診断であり,その基盤として正確な神経解剖学的知識が欠かせない.本書はMathias Bähr教授とIngo Bechmann教授による「Neurologisch-topische Diagnostik Anatomie-Function-Klinik」第11版の日本語訳.分かりやすい訳文と260点を超える豊富な図表により,実際の神経症候を基礎となる神経解剖学と結びつけて理解するのに最適な1冊.神経診断学を志す学生からさらに理解を深めたい専門家まで,幅広く支持され続けるロングセラー教科書の最新版!
日本語第7版への訳者序文

 本書は,ドイツ人著者Mathias Bähr 教授とIngo Bechmann 教授による,Neurologisch—topischen Diagnostik 原著第11 版の日本語訳である.
 遺伝学的検査・抗体検査や画像診断がいかに進歩しようとも,臨床神経学の第一歩は神経学的診察に基づく局在診断である.これは近代神経学150 年の歴史を貫く真実である.その基盤は正確な解剖学的知識であるが,現在の医学教育においては神経解剖学と臨床神経学を学ぶ時期が異なるなど,両者の結びつきを体感し難い場合がある.本書は,ドイツの著名な臨床神経学および解剖学の教授による局在診断の指南書であり,両学問分野を結びつける好著である.
 解剖学から臨床神経学までをカバーする本書は,箇所により難易度に開きがある.日本語第7版での試みとして,図表に大まかな難易度を付した.医学生や医療系学生は,まず神経解剖の基礎として[★★★]の図表を理解することから始めるとよい.さらに臨床現場に出る際には,[★★]の図表,見出しが緑色の文字で記載されている臨床事項,症例提示を見てほしい.呈する徴候について,明確に責任病巣や関連する神経伝導路を説明できるであろうか? あやふやな部分は,本文を改めて確認すると理解が深まるだろう.さらに意欲的な,脳神経内科,脳神経外科,整形外科など専攻医・専門医レベルでは,本書の魅力を余すところなく感じ取ってほしい.
 昨今の国際化の時代にあってドイツ語書籍を翻訳する意義は何であろうか.多くのアジア諸国において,医学を母国語で学べる国は少ない.その有難さをかみしめるとともに,国際語である英語のみでは汲み取れない医学の深さを感じられる点で,本書は非常にユニークである.訳文ではドイツ語原語を多用して徒に衒学的であることは慎んだが,一部日常会話としてのドイツ語単語を残している.医学は個体の多様性に基づく.標準的な教科書にはない味わいを感じていただければ訳者としては望外の喜びである.
 治療に関する記載について,本書は治療の教科書ではなく,医療システムもドイツと日本では異なる.そのため,日本の保険制度や標準治療と隔たりがあると思われるものも,ある程度原文を尊重した.各疾患の治療については,最新のガイドラインなどを参照されたい.
 医学用語については,日本神経学会用語委員会 編「神経学用語集(文光堂)」に掲載されている用語は原則として同書にならった.原著でラテン語記載のある解剖学用語については,本書第7版では原則として英語名のみにとどめた.適宜,日本解剖学会 監修「解剖学用語(医学書院)」などの用語集を参照いただきたい.
 第6版までの訳者であった花北順哉先生から引き継ぐことになり,身の引き締まる思いで訳出を進めた.慣れない翻訳作業にもかかわらず本書が刊行にこぎつけられたのは,ひとえに文光堂の佐藤真二氏,藤木仁真子氏をはじめ,関係各位の多大なご協力のおかげである.もとより,訳文の誤りその他一切の責任は,訳者に帰する.賢明なる読者諸氏のご意見をいただければ幸いである.

2025 年 初夏の本郷にて
代田 悠一郎
第1章 神経系の構成要素
 1.1 概 説
 1.2 神経系における情報の流れ
 1.3 ニューロンとシナプス
  1.3.1 ニューロン(神経細胞)
  1.3.2 シナプス
 1.4 神経伝達物質と受容体
 1.5 ニューロンの結びつき
 1.6 グリア細胞
第2章 体性感覚系
 2.1 概 説
 2.2 体性感覚系の末梢部と末梢での神経回路
  2.2.1 受容器
  2.2.2 末梢神経,後根神経節,後根
  2.2.3 末梢での神経回路
 2.3 体性感覚系の中枢部
  2.3.1 神経根進入部と後角
  2.3.2 後および前脊髄小脳路
  2.3.3 後索
  2.3.4 前脊髄視床路
  2.3.5 外側脊髄視床路
  2.3.6 脊髄内のその他の求心路
 2.4 体性感覚情報の中枢での処理
 2.5 体性感覚伝導路の特定の部位の病変でみられる障害
第3章 運動系
 3.1 概 説
 3.2 運動系の中枢での構造と障害時の臨床症状
  3.2.1 運動皮質野
  3.2.2 皮質脊髄路(錐体路)
  3.2.3 皮質核路(皮質球路または皮質延髄路)
  3.2.4 運動系におけるその他の構成要素
  3.2.5 運動系の障害
 3.3 運動系の末梢側での構造とそれらが障害された場合の臨床症状
  3.3.1 運動単位が障害されたときの臨床症状
 3.4 神経系において一定の領域が障害された場合に出現する複雑な臨床症状
  3.4.1 脊髄症候群
  3.4.2 脊髄血管障害による症候群
  3.4.3 脊髄腫瘍
  3.4.4 神経根症候群
  3.4.5 神経叢症候群
  3.4.6 末梢神経障害時の症候群
  3.4.7 神経筋接合部および筋での障害時の症候群
第4章 脳 幹
 4.1 概 説
 4.2 表面からみた脳幹の構造
  4.2.1 延髄
  4.2.2 橋
  4.2.3 中脳
 4.3 脳神経
  4.3.1 起源(起始領域)―構成要素―機能
  4.3.2 嗅覚系(第Ⅰ脳神経)
  4.3.3 視覚系(第Ⅱ脳神経)
  4.3.4 眼球運動(第Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ脳神経)
  4.3.5 三叉神経(第Ⅴ脳神経)
  4.3.6 顔面神経(第Ⅶ脳神経)と中間神経
  4.3.7 前庭蝸牛神経(第Ⅷ脳神経)―蝸牛神経と聴覚器
  4.3.8 前庭蝸牛神経(第Ⅷ脳神経)―前庭神経と平衡系
  4.3.9 迷走神経系(第Ⅸ脳神経,第Ⅹ脳神経および第Ⅺ脳神経頭蓋枝)
  4.3.10 舌下神経(第Ⅻ脳神経)
 4.4 脳幹の局所解剖
  4.4.1 脳幹の内部構造
 4.5 脳幹病変
  4.5.1 虚血性脳幹症候群
第5章 小 脳
 5.1 概 説
 5.2 表面からみた小脳の構造
 5.3 内部構造
  5.3.1 小脳皮質
  5.3.2 小脳核
  5.3.3 小脳皮質・小脳核間の回路
 5.4 小脳と他の神経系との連絡
  5.4.1 下小脳脚
  5.4.2 中小脳脚
  5.4.3 上小脳脚
  5.4.4 小脳遠心路に関する注意点
 5.5 小脳の機能と小脳症状
  5.5.1 前庭小脳
  5.5.2 脊髄小脳
  5.5.3 大脳小脳
 5.6 小脳病変
  5.6.1 小脳梗塞と出血
  5.6.2 小脳腫瘍
  5.6.3 遺伝性あるいは代謝性小脳疾患
第6章 間脳と自律神経系
 6.1 概 説
 6.2 間脳の解剖と構成要素
 6.3 視 床
  6.3.1 核
  6.3.2 上行性・下行性投射路における視床核群の統合
  6.3.3 視床の機能
  6.3.4 視床病変での症候群
  6.3.5 視床の血管障害
 6.4 視床上部
 6.5 腹側視床
 6.6 視床下部
  6.6.1 解剖と構成要素
  6.6.2 視床下部の核
  6.6.3 視床下部への求心路とここからの遠心路
  6.6.4 視床下部の機能
 6.7 末梢自律(植物)神経系
  6.7.1 基本的概念
  6.7.2 交感神経系
  6.7.3 副交感神経系
  6.7.4 個々の器官の自律神経支配とその障害
  6.7.5 内臓痛と関連痛
第7章 大脳辺縁系
 7.1 概 説
 7.2 大脳辺縁系の解剖概観
  7.2.1 大脳辺縁系の有する内部および外部との連絡路
 7.3 大脳辺縁系の主な構成要素
  7.3.1 海馬
  7.3.2 扁桃体
 7.4 大脳辺縁系の機能
  7.4.1 記憶のタイプと機能
  7.4.2 記憶障害―健忘症候群とその原因
第8章 大脳基底核
 8.1 概 説
 8.2 用語に関する注意
 8.3 運動系における大脳基底核の位置づけ:系統発生的な観点から
 8.4 大脳基底核の構成要素とその神経連絡
  8.4.1 核
  8.4.2 大脳基底核における神経連絡
 8.5 大脳基底核の機能とその障害
  8.5.1 大脳基底核が障害された場合の症候群
第9章 大 脳
 9.1 概 説
 9.2 発 生
 9.3 大脳の肉眼的な構造と諸領域
  9.3.1 脳回と脳溝
 9.4 大脳皮質の組織構造
  9.4.1 層構造
 9.5 白 質
  9.5.1 投射線維
  9.5.2 連合線維
  9.5.3 交連線維
 9.6 大脳皮質における機能局在
  9.6.1 さまざまな検査法
  9.6.2 一次皮質領域
  9.6.3 連合野
  9.6.4 前頭葉
  9.6.5 高次大脳皮質機能と皮質病変による大脳機能障害
第10章 髄膜および脳脊髄液・脳室系
 10.1 概 説
 10.2 脳と脊髄をおおう膜
  10.2.1 硬膜
  10.2.2 くも膜
  10.2.3 軟膜
 10.3 脳脊髄液と脳室系
  10.3.1 脳室系の構造
  10.3.2 脳脊髄液の循環と吸収
  10.3.3 脳脊髄液循環の障害―水頭症
第11章 中枢神経系の血管支配と血管障害
 11.1 概 説
 11.2 脳の動脈系
  11.2.1 脳を灌流する血管の硬膜外での走行
  11.2.2 前・中頭蓋窩での硬膜内血管系
  11.2.3 後頭蓋窩の動脈
  11.2.4 脳動脈狭窄時の側副路
 11.3 脳の静脈系
  11.3.1 脳表および脳深部の静脈
  11.3.2 硬膜静脈洞
 11.4 脊髄の血流支配
  11.4.1 動脈系における血管吻合網
  11.4.2 脊髄の静脈還流
 11.5 脳虚血
  11.5.1 動脈性の循環障害
  11.5.2 脳梗塞時にみられる固有の症候群
  11.5.3 脳からの静脈還流障害
 11.6 頭蓋内出血
  11.6.1 脳内出血(非外傷性)
  11.6.2 くも膜下出血
  11.6.3 硬膜下血腫と硬膜外血腫
 11.7 脊髄の血管障害
  11.7.1 動脈性の循環障害
  11.7.2 脊髄の静脈還流障害
  11.7.3 脊髄出血
文 献
索 引