TOPページへ

診断こそがシミ治療の成否を決める―シミ“診断”テキストの決定版,ついに登場!

新刊

シミの診断

シミは診断がすべて

カバー写真
  • 著:葛西健一郎(葛西形成外科)
  • B5判・292頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2640-1
  • 2025年9月24日発行
定価 29,700 円 (本体 27,000円 + 税10%)
あり
在庫
電子版販売サイト

上記の電子版販売サイトのボタンをクリックすると,外部のサイトに移動します.電子版の購入方法は各販売サイトにてご確認ください.

正誤表

内容

序文

主要目次

シミ診療の根幹である「診断」に徹底的にフォーカスした実践的テキスト.ロングセラー『シミの治療』の著者が,各種シミの定義,成因,診断のポイント,経時変化を体系的に解説した.多彩な症例を通じて診断までの思考プロセスや鑑別のポイントを具体的に紹介した症例集は必見.同じ患者に異なる成因のシミが混在するケースも多く,確実な治療にはまず正確な診断が不可欠.本書を通じて診断力を磨くことで,患者一人ひとりに最適な治療への道筋が見えてきます.シミ診療の新たな一歩を踏み出したいすべての医師に,ぜひ手に取っていただきたい一冊.
序 文

 シミの治療法のひとつとして,「レーザートーニング(LT:低フルエンスQスイッチNd:YAGレーザー治療)」というものがある.QスイッチNd:YAGレーザーを,痂疲のできない程度の比較的低フルエンスで照射することを高頻度(1〜4週間隔)で繰り返すというものである.このLTは,ダウンタイム(絆創膏を貼らなければいけない期間)がなく,肝斑を含めあらゆるシミに効くということで,2009年ごろから爆発的にヒットした.このLTは,実は,雀卵斑やSK(老人性色素斑)には少し効果があるものの,ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)には効果がなく,肝斑に対しては,治療継続中には色調軽減効果があるものの中止時に増悪(リバウンド)が起こり,また難治性の白斑形成の危険がある,問題の多い治療法であった.筆者はLTに対して,初めは反対しても何の得にもならないので静観していた.ところが,LTが野火のように急速に広がっていくのを見るにつけ,このまま放っておいたら大変なことになると思い直し「LT反対運動」を開始した.しかし,このLT反対運動は困難を極めた.賛同してくれる医師は一定数いたが,皆消極的であった.それはそうだろう.LTに反対しても何の利益も得られないばかりでなく,LTで儲けている人たちに嫌われるだけである.かくして,LTは,反対派は筆者くらいであり,賛成派が大多数という状態で,世の中を席巻していくことになる.
 そのときに,筆者は考えた.業者は機械を多数販売して利益を上げたいのだから,少々事実と異なる宣伝をしてでも拡販するのはある意味宿命的なことである.また業者の息のかかった「御用医者」が,旗振り役を演じるのも,定番のストーリーである.そして,レーザーもシミもよくわかっていない未熟な新規参入の医師たちが,業者の口車に乗せられて「LTが良い」と考えるのも無理はない.ところが,筆者が意外に思ったのは,ある程度の知識と経験がある「まともな」医師たちが,けっこう「LTは肝斑に効果がある」と発言していたことである.これは,いったいどうしたことなのか,筆者にはとても理解できなかったことである.しかし,実は,ベテランを含めて多くの医師たちは,肝斑と多発性SKの鑑別診断ができていなかったのである.かくして学会では,LTは肝斑に効く? 効かない?と,肝斑の診断が正しくなされていないなかで,結論の出ない議論を繰り返していたのである.「LTが肝斑に効く」と言っている人たちは,LTが多発SKに効いているのを肝斑に効いたと誤認していた.論文でも学会発表でも「LTが肝斑に効いた」と提示されている写真は,多発性SKが取れている写真が多い.つまり,正しい診断ができていなければ,治療法の議論など全く意味がなくなってしまう.ここで,筆者はシミの診断の重要性を深く再認識させられたのである.
 本書は,これからシミを勉強していこうと考えている医師に,まず正しい診断ができるようになってもらいたいという筆者の願いの詰まった一冊である.何回読んでも新しい発見があるようにしてあるので,何回でも熟読して味わっていただきたい.治療法の議論はそのあとである.

2025年夏
葛西健一郎
Ⅰ章 総論
 1 シミの診断がなぜ大切か
 2 各種シミの組み合わせ

Ⅱ章 シミの診断
 1 SK
 2 ADM
 3 雀卵斑
 4 PIH(炎症後色素沈着)
 5 肝斑

Ⅲ章 症例集