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将来の生活・暮らしを見据えたアプローチに焦点を当てた急性期の作業療法!

生活の行為を紡ぐ作業療法プラクティス  

急性期作業療法マネジメント

シームレスにつなぐ早期のアプローチ

カバー写真
  • 常任編集:小林  毅(千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科准教授)
  •       東  祐二(元 藤元総合病院リハビリテーション室室長)
  •       渡辺愛記(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)
  • B5判・192頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-4520-4
  • 2015年4月発行
定価 5,400 円 (本体 5,000円 + 税)
あり
在庫

内容

序文

主要目次

書評

急性期の定義から始まり,生活を見据えた取り組み,必要な知識と技術,情報収集・関わり方,評価,“意味のある作業”につなげるための実践,目標設定,連携について記載している.大きな可能性を秘めている対象者が障害を持ったその時から,今すべきことが将来にどのようにつながるのか,その人らしい生活・暮らしを見据えたアプローチと急性期から生活維持期までシームレスにつないだ作業療法を提供することに焦点を当てている.
☆図版21点,表組15点,モノクロ写真46点



 前書である『脳血管障害の評価とアプローチ─回復期における着眼点と行動プロセス─』の序でも述べたとおり,この「生活の行為を紡ぐ作業療法プラクティス」の編集方針は,「急性期から生活期までをシームレスに作業療法を提供する」ことに資することである.前書では,多くの若い作業療法士が携わりながら,回復期から生活期に紡ぐ,住み慣れた場所,住み慣れた地域での暮らしを積極的に支援することに主眼を置いた.今回は,急性期として,対象者が障害をもったその時点から,どのように将来の生活・暮らしを見据えたアプローチができるかに焦点をあてた.
 急性期に携わる作業療法士から,「すぐに退院してしまう」「急性期は,できることが少ない」「単位をとるのに,多くを受けもたなければならないので忙しい」などという声を聞くことがある.もちろん,急性期の作業療法士だけが忙しいわけではないが,本当に「急性期の作業療法」アプローチに役割はないのだろうか.
 編者たちは,そのほとんどが長く大学病院や急性期病院といわれる施設で,作業療法士としての臨床業務に従事してきた.そこでは,救命救急時の意識がない時から,または術後の麻酔覚醒前から,医学的治療が優先されて点滴など数多くの治療器具がついているなかで,的確な作業療法評価に基づいて,例えば脳血管障害であれば「麻痺も回復し,在宅復帰して職業的にも現職復帰が叶う」かもしれないし,「重度の障害を残しても,福祉機器やその他の社会資源を利用して,その人の望む場所での生活を支える」ことになるかもしれないと,大きな可能性をもっている対象者に接することになる.この広く,大きな可能性を秘めている対象者に対し,「その可能性の門を開き,これからその大きな可能性に向かってさまざまアプローチをシームレスにつないでいくことができるのが作業療法である」という意識で,本書の編集を企画した.
 「急性期の作業療法は,理学療法と区別がつかない」と言われることがある.関節可動域訓練や筋緊張の調整など,機能的訓練だけに偏りがちな作業療法士がいることも事実である.注意してほしいのは,機能訓練を否定しているものではない.作業療法士として,その先にあるその人らしい生活・暮らしに向けて,シームレスに関わるなかで「今,すべきことが,将来にどのようにつながるのか」ということを見据えたアプローチなのかをあえて問うことも本書の役割である.ぜひとも,本書が急性期の施設に勤務する作業療法士だけではなく,急性期の作業療法を理解したうえでシームレスに紡ぐための作業療法の一助としていただけることを願っている.
 このような企画にもかかわらず,ご執筆を快くお引き受けいただいた長谷川敬一先生をはじめ,竹田綜合病院の作業療法士の諸先生方と相澤病院の村山幸照先生,そして急性期病院でご勤務され,今はデイサービスで地域での生活を支えている甲斐雅子先生に支えられ,刊行できましたことに感謝申し上げます.

2015年3月
常任編集 小林 毅・東 祐二・渡辺愛記

PART Ⅰ 急性期とは
 1.急性期をとりまく環境・急性期の定義
  リハビリテーションの流れを理解しよう!
  本書での急性期の定義
  急性期リハビリテーションの概要
  意外と多い軽症例,在宅復帰例
  早期からも実践しよう,生活行為向上マネジメント!
 2.SCU,SUとは
  脳血管障害診療の流れ
  SU,SCUについて
  ストロークチームについて
  ストロークチームの一員として作業療法士に求められていること
PART II 急性期における生活を見据えた作業療法の取り組み
 1.病前の生活の捉え方
  病前の生活とは
  病前の生活の聴き取り方
  病前の生活の捉え方
   ミニレクチャー  発症前の生活から考えること
PART III 急性期に必要な知識と技術
 1.急性期に必要な知識と技術
  病態を知ろう!
  画像を見よう!
  検査データをみよう
  医療機器を知ろう
  検査を知ろう
  感染予防を知ろう
   ミニレクチャー  リスク管理って!?
PART IV 情報収集・関わり方
 1.指示書(処方箋)やカルテから診ること・考えること
  指示書の内容を読み取ろう
  カルテ内容を読み取ろう
  温度表を読み取ろう
   ミニレクチャー  ベッド周囲を観察しよう
 2.チーム医療の実際
  なぜチーム医療が重要なのか?
  チーム医療に関わる職種
  チームの中心は患者本人,家族もチームの一員!
  どうやって連携をとるの?
   ミニレクチャー  情報の聞き出し方と伝え方
   ミニレクチャー  会議への臨み方
PART V 急性期における作業療法の評価
 1.急性期に特有な作業面接の方法
  初回面接・評価に行く前に行っておくこと
  病室に入ったときから評価は始まる
  まずは患者確認をしよう
  オリエンテーションはしっかり行うこと!
  ちょっとしたことでも見逃さないで!
  すばやく全体像をつかもう
  具体的な評価の進め方の例
  急性期であっても,その人にとって“意味のある作業”を聞き出してみよう
   ミニレクチャー  意識障害に対する作業療法
 2.急性期に特有な評価の方法
  ベッドサイドを訪れるときの作業療法士の持ち物を見てみよう
  急性期で行う評価スケールあれこれ
   ミニレクチャー  「その人らしさ」を知るために
   ミニレクチャー  日々の変化に追いつかない…
   ミニレクチャー  作業療法士としての高次脳機能評価とは?
PART VI 急性期における作業療法の実践(作業の捉え方,用い方)
 1.“意味のある作業”に焦点をあてた支援
  「作業」について,もう一度考えてみよう ─「手段としての作業」と「目的としての作業」とは─
  目的としての作業を早期から用いていこう
   “意味のある作業”へ焦点をあてた実践のために
  目的の作業を遂行するために
 2.“意味のある作業”につなげるための機能訓練(関節可動域訓練・ポジショニング)
  何のための関節可動域訓練?
  作業療法士が行う関節可動域訓練とは?
  関節可動域訓練は奥が深い!
  なぜポジショニング?
 3.“意味のある作業”につなげるための機能訓練(上肢・手指機能訓練,利き手交換)
  早期から積極的なアプローチを行っていこう!
  上肢機能訓練
  肩の痛みに気をつけよう.亜脱臼対策は作業療法士の大切な仕事!
  両手動作のすすめ
  手の機能を分けて考えよう.尺側と橈側の役割分担
  段階づけが重要な利き手交換訓練
 4.“意味のある作業”につなげるための座位練習と車椅子への移乗練習
  何のための座位練習? 移乗動作練習?
  作業療法士が行う座位練習,移乗動作練習とは
  座位と移乗動作の評価
  座位練習,移乗動作練習の実際
  患者の潜在能力を活かした座位練習と移乗動作練習
 5.“意味のある作業”につなげるための立位練習と歩行練習
  作業療法士も積極的に立位練習を行っていこう!
  病棟で始める立位練習
  応用的な立位練習につなげていこう
  病棟の手すりを利用しての歩行訓練
  四点杖での歩行訓練
  軽症例は積極的に実用的な練習を行おう!
 6.“意味のある作業”につなげるための摂食嚥下訓練
  作業療法士が摂食嚥下にアプローチする意義
  摂食嚥下に関係する要因とは
  人の要因に対するアプローチ
  食品の要因に対するアプローチ
  環境の要因に対するアプローチ
  自力摂取へ向けて
 7.“意味のある作業”につなげるためのADL練習(排泄動作を中心に)
  何のためのADL練習?
  作業療法士が行う排泄動作練習とは
  排泄動作の評価
  患者の潜在能力を生かした排泄動作練習とは
  排泄動作練習の実際
 8.“意味のある作業”への具体的なアプローチ(IADL中心)
  “意味のある作業”を在宅復帰後の生活につなげる
 9.急性期から在宅支援をする軽症例
  早期退院支援の必要性
  軽症例への具体的な退院支援
  在宅支援部門との連携
 10.急性期から在宅支援をする重症例
  在宅に退院するためには
  退院に向けて確認しておきたいこと
  実際の症例から
 11.急性期から回復期へつなぐ中〜重症例
  機能回復訓練は大事!
  回復期リハビリテーション病棟から求められる申し送り内容って何?
  信頼関係を築く
  回復期リハビリテーション病棟へはいついくの?
PART VII 目標設定
 1.目標設定の重要性
  目標ってみんな同じ? 達成している??
  その人らしい目標を聞いてみよう
  「歩きたい」「手が動くように」は目標!? “意味のある目標”とは?
  患者の意識も変える,目標設定の効果
 2.目標設定の仕方・適切な時期
  急性期でも,長期目標?
  短期目標設定の時期
  段階的に目標を達成するには?
  目標を申し送ろう
   ミニレクチャー  PT vs OT vs STではない
PART VIII よりよい連携のために
 1.情報提供書に記すべきこと
  記すべき最低限の情報
  在宅支援部門から求められる記すべき情報
  急性期から始める,在宅生活の見通し
  “意味のある作業”を申し送ろう
 2.退院後の生活につながるよりよい連携のために
  実のある連携とは
  脳卒中地域連携パスを活用しよう
  退院前訪問指導に行こう
  在宅支援部門のサービスを知る,連携する
   ミニレクチャー  急性期に期待すること─回復期の立場から─
   ミニレクチャー  急性期に期待すること─訪問リハビリテーションの立場から─
 3.患者の退院後の生活を知る
  患者の本当の希望を聞き出すことができているだろうか?
  患者の退院後の生活を確認したことがあるだろうか?
   ミニレクチャー  日常生活が自立したAさんのその後

評者:高畑進一(大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科教授)      

 題名の通り,随所に作業療法をシームレスに提供する知恵が示された書である.時間の限られる急性期においてはOTが何をすべきか,いつ行うべきか,という観点が優先されることが多いと思うが、さらに一歩踏み込んで,なぜそれを行うべきかという観点を重視することの大切さを改めて認識させてくれる書でもある.
 わが国の医療制度の変革に伴い,急性期のセラピストには,短期間で,多数の対象者に,良質で安全な介入を実施することが求められている.それは効果的かつ効率的な介入というニーズである.これを可能にする方法の一つとして,急性期にはクリニカルパスを用いることも多い.クリニカルパスは科学的根拠に基づいた方法を一定の質を保って提供すること,いわば提供する医療の標準化を目的としている.このように書くと,「やはり急性期にセラピストが行うことはおおよそ決まっている」,あるいは「疾患や障害の種別,対象者の状態によって介入の方法や時期に多少の差はあっても,短期間にOTができることは限られている.その結果,対象者に提供する介入はほとんど同じになってしまう」という誤解を招くかもしれない.標準化と画一化は同義ではないのだが,急性期のOT,あるいは急性期の医療そのものに対してこのような誤解が生じている可能性がある.また,急性期にかかわるOTや医療関係者自身がこのような誤解をしているかもしれない.一部かもしれないが…….
 きっとこのような思い,懸念が,本書の編者と著者に共有されていたのだと思う.それが,本書の特徴となっている.つまり,本書には,急性期のOTが何を行うかという観点だけでなく,なぜそれを行うのか,どのように行うのかという観点を重視した知識と技術が盛り込まれている.同時に,経験豊かなOTの思考の流れが随所に示され,読み手の理解を深めてくれる.初学者にもわかりやすい構成である.
 読み終えて,対象者の眼前にある可能性の扉を開くために,OTが対象者の過去を知り,将来を見据えて「今」にかかわることの重要性にあらためて気づかされる.それはOTが想像力を働かせて対象者の人生を縦断的に眺め,「今なすべきこと」を考え,実行すること,そして,つなげることである.このあたりまえで,とても重要な実践の基軸になるのが「対象者にとって意味ある作業を同定し,それを目標とする介入によって意味ある生活・人生を取り戻す」というOTの信念なのである.そんなことまで考えさせてくれる書である.
 急性期のOTを学ぶ学生諸氏,急性期に関わる新人OT,急性期のOTに悩んでいる方々に是非読んでいただきたいと思う.

(「作業療法ジャーナル」 49(8):852,2015 掲載)