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“頭痛なんです”と言われて頭を抱え込んでしまわないために!

この1冊で極める頭痛の診断学

患者の痛みの理解と,適切な診断・治療のために

カバー写真
  • 著:柴田 靖(筑波大学水戸地域医療教育センター/水戸協同病院脳神経外科教授)
  • A5判・184頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-1028-8
  • 2020年3月18日発行
定価 4,180 円 (本体 3,800円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

頭痛は頻度の高い主訴のひとつである.しかし,訴えは主観的で評価が難しく,加えて,原因疾患は緊急性の高いものから全身性の疾患まで多岐にわたるため,診断に至らず,“とりあえず鎮痛薬を処方”――ということもあるのではないだろうか.本書では,頭痛の病態生理から,問診,身体・神経診察,画像検査まで,適切な診断と治療を導く考え方をロジカルに解説.ケーススタディでは著者の経験から22症例を取り上げた.自分ならどう攻めるかを考え,「頭痛の診断力」を身につけよう.
序 文

 頭痛は多くの人が経験する,ごくありふれた症状です.しかし,慢性頭痛で長期にわたって悩んでいる人も多くいます.痛みは患者自身にしかわかりません.サイエンスが進歩した現在においても,痛みを評価できるのは,患者自身の主観的評価です.頭痛の診療は,この患者が訴える頭痛を理解することから始まります.医療機関へのアクセスが容易である日本においても,頭痛の診療は遅れています.何年もの間,多くの医療機関を受診してきたが,鎮痛剤のみ処方され,頭痛をきちんと診断・治療されてこなかった患者は多くいます.
 また重篤な疾患の初発症状として頭痛から始まることは多いです.脳血管障害,脳腫瘍,髄膜炎はもちろん,感染症,ホルモン異常など全身の疾患が頭痛を呈します.逆に,頭痛疾患が全身症状で発症する,あるいは全身症状を合併することもよくあります.その疾患を知っているか,経験しているかが,患者の生死を分けることもあるのです.
 本書は主に研修医,一般医師を対象に書きました.日常的に頭痛を診療している外来担当医にはぜひ,読んでいただき,頭痛の広い守備範囲,奥深い診断・治療の難しさを感じていただければ幸いです.患者はあなたが,頭痛を理解し,受け止めてくれることを期待しています.
 そして本書を読んで,頭痛診療への関心がさらに深まったならば,学会や研究会に参加してください.医学は日進月歩です.本の知識は古くなります.最新の知識,情報は学会や雑誌にあります.そしてあなたが指導医となったら,頭痛の面白さ,奥深さを,新たな研修医や学生に語っていただければと思います.そして,本書よりもより良い頭痛の診断学の本を書いてください.
 本書の企画,編集,出版にご尽力いただいた株式会社文光堂の佐藤真二氏らスタッフの皆さんに深謝します.
 本書の売り上げの一部は日本頭痛協会に寄付させていただきます.

2020年2月
柴田 靖
第Ⅰ章 頭痛の病態生理 頭痛のメカニズムを理解しよう
 1 頭痛の病態─総論
  1.痛みのメカニズム
  2.痛覚神経終末はどこにあるか
 2 器質的頭痛 二次性頭痛の病態生理
 3 機能的頭痛 一次性頭痛の病態生理

第Ⅱ章 頭痛の疫学 頭痛の有病率,環境の影響をみてみよう
 1 診断基準
 2 世界の頭痛
 3 日本人の一般市民の頭痛
 4 医療機関受診者の頭痛
 5 医療従事者の頭痛
 6 頭痛の遺伝
 7 頭痛に影響する環境因子
 8 頭痛に影響する社会因子
 9 頭痛を誘発する食事,飲料

第Ⅲ章 頭痛の問診 頭痛の診断は問診のみでほぼ決まる
 1 急性頭痛の問診
  1.くも膜下出血
  2.脳動脈解離
  3.可逆性脳血管
  4.一次性雷鳴頭痛
 2 慢性頭痛の問診① 初診時,問診前の情報収集
  1.外来の問診票
  2.頭痛ダイアリーの活用
 3 慢性頭痛の問診② 総論:頭痛の問診で確認すべきこと
  1.頭痛の発症様式の問診
  2.頭痛の部位と性状の問診
  3.頭痛の随伴症状の問診
 4 慢性頭痛の問診③ 各論:それぞれの頭痛で確認すべきこと
  1.片頭痛の問診
  2.緊張型頭痛の問診
  3.三叉神経・自律神経性頭痛の問診

第Ⅳ章 頭痛の身体診察,神経診察 頭痛のサインを見逃すな!
 1 まずはバイタルサイン
  1.高血圧になりうるのは
  2.低血圧になりうるのは
  3.バイタルサインから疑う
 2  ○○頭痛かな? 身体診察,神経診察ではここをみる!
  1.片頭痛を疑った場合
  2.緊張型頭痛を疑った場合
  3.三叉神経・自律神経性頭痛を疑った場合
 3 頭痛を呈する頭蓋外疾患
 4 頭痛を呈する眼疾患
  1.緑内障
  2.炎症
  3.腫瘍
  4.眼精疲労
 5 頭痛を呈する耳鼻科疾患
  1.副鼻腔炎
  2.睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  3.中耳炎
  4.耳下腺炎
 6 頭痛を呈する脊椎疾患
  1.頸椎疾患
  2.脊椎腫瘍・炎症
  3.crowned dens syndrome
 7 頭痛を呈する顎関節疾患・歯科疾患
 8 頭痛を呈する精神疾患・神経疾患
  1.うつ病
  2.発達障害
  3.線維筋痛症
 9 頭痛を呈する内科疾患
  1.甲状腺機能の亢進と低下
  2.透 析
  3.心筋虚血
  4.高血圧
 10 感染症による頭痛
  1.髄膜炎
  2.脳炎・脳膿瘍
 11 炎症性疾患による頭痛
 12 脳腫瘍による頭痛
  1.脳腫瘍とは
  2.脳腫瘍の症状
  3.髄膜腫と下垂体病変

第Ⅴ章 頭痛の検査 それぞれの検査の適応,限界,リスクを理解しよう
 1 頭部CT
  1.画像診断の優先順位
  2.CTの原理
  3.頭部CTの適応,被曝の影響
  4.頭部CTの所見
  5.頭部CTのヘリカルによる立体撮像
  6.造影CT
 2 頭部MRI
  1.MRIの原理
  2.拡散強調画像(DWI)
  3.微小出血の検出
  4.CTと比較したMRIの利点と欠点
  5.MRIの禁忌
  6.MRIの適応
  7.MRIの所見
 3 血管の画像検査
  1.3DCTA
  2.MRA
  3.CTA,MRAのピットフォール
 4 頸椎,頭蓋頸椎移行部
  1.変形性頸椎症
  2.キアリ奇形
  3.crowned dens syndrome
 5 血液検査
 6 髄液検査
  1.髄液の採取
  2.腰椎穿刺のリスク
  3.髄膜炎の髄液検査
 7 生理検査,脳波
 8 抑うつ状態の評価

第Ⅵ章 ケーススタディ 症例に学ぼう!頭痛の診察の進め方
〔症例1〕右口腔内外の痛みにて受診した54歳女性
〔症例2〕10代からの慢性頭痛にて受診した28歳女性
〔症例3〕心気症と診断されてきた70歳男性
〔症例4〕背部痛を主訴とした40代男性
〔症例5〕頭痛で欠勤する42歳男性
〔症例6〕貧血により頭痛が悪化した80歳男性
〔症例7〕9歳男児.片頭痛のみか?
〔症例8〕発達障害を疑われ頭痛外来を受診した12歳女児
〔症例9〕頻脈,貧血,低栄養,低脂質のある51歳女性
〔症例10〕46歳女性.線維筋痛症に伴う頭痛
〔症例11〕43歳,肥満女性.排便時に急に発症し継続する頭痛,嘔気
〔症例12〕自宅で倒れていた80代女性
〔症例13〕54歳男性.突発する眼の奥の痛み
〔症例14〕51歳男性.難聴,耳鳴りを呈し,徐々に悪化する慢性頭痛
〔症例15〕口渇,多飲,多尿のある34歳女性
〔症例16〕82歳男性.高齢者の時々激しい後頭部,頸部痛
〔症例17〕発熱後に頭痛が継続する貧血のある47歳女性
〔症例18〕突発する頭痛,嘔気を繰り返す66歳女性
〔症例19〕61歳女性.前頭部から頸部の慢性頭痛
〔症例20〕22歳女性.片頭痛を合併した後頭葉病変
〔症例21〕27歳男性.連日性で特徴のない頭痛
〔症例22〕40歳女性.顔面痙攣の術後1ヵ月から頭痛が出現

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