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掌蹠膿疱症による“骨関節炎”について,最新の知見を集めた診療の手引き!

掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022

  • 編集:日本脊椎関節炎学会
  • 編集 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎及び類縁疾患の医療水準ならびに患者QOL向上に資する大規模多施設研究」班
  • B5判・212頁・2色刷(一部4色刷)
  • ISBN 978-4-8306-3479-6
  • 2022年9月5日発行
定価 4,400 円 (本体 4,000円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

日本人に多くみられる掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)について,標準的な診療を体系立てて解説した手引き.PAOは病巣感染巣に対する治療が重要で,横断的な診療連携が求められるため,整形外科,リウマチ膠原病内科,皮膚科のみならず耳鼻咽喉科,歯科領域など様々な立場から意見をまとめた.エビデンスの少ない本疾患の診療指針を示す画期的な1冊.
序 文

 掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro‒osteitis;PAO)は日本人に多い疾患で,掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis;PPP)に伴う骨関節疾患として,東京大学整形外科の園嵜秀吉先生が1979年に世界に先駆け報告されました.その後海外から,ざ瘡―膿疱症―骨過形成―骨炎症候群(Syndrome Acne‒Pustulosis‒Hyperostosis‒Osteitis;SAPHO)が報告され,PAOはSAPHO症候群の一疾患として認識されています.したがってPAOよりSAPHO症候群として本疾患を認識されている方も少なからずおられると思います.最近行われたGRAPPA Surveyでも本邦でのSAPHO症候群のほとんどはPAOであることが示されています.また前胸壁の骨関節炎がよく知られていますが,症例によっては強直性脊椎炎様の体軸病変をきたすことも知られています.現時点ではPAOの骨関節病変の病態が完全に解明されているわけではなく,その診断や治療指針も明確に示されているわけではありません.一方でPPPの発症に遠隔臓器での病巣感染の関与が示され,そのほとんどが無症状であること,また病巣感染巣に対する治療が重要であることが示されています.関節疾患の診療に携わる立場であれば最低限知っておくべきことではないかと思います.本疾患の診断・治療には整形外科・リウマチ科や皮膚科のみならず耳鼻咽喉科や歯科との横断的診療連携が必須であり,臨床現場の先生方に有用な体系立った診療ガイドラインが求められています.
 2016年より発足した厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎及び類縁疾患の医療水準ならびに患者QOL向上に資する大規模多施設研究」班(研究代表者:森ノ宮医療大学 冨田哲也)では発足当時からPAOも対象疾患として取り組んで参りました.この度,日本生命済生会日本生命病院 辻 成佳先生,東京医科大学 大久保ゆかり教授ら編集のもと,日本脊椎関節炎学会(理事長:岡山済生会総合病院 山村昌弘先生)の協力を得ながら「掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022」を作成いたしました.本手引きの作成にあたっては,本疾患の治療における病巣感染巣に対する治療の重要性を鑑み,整形外科,リウマチ膠原病内科,皮膚科のみならず耳鼻咽喉科,歯科領域など様々なお立場から御執筆いただきました.快く御執筆いただきました先生方にはそのご協力に対して厚く御礼を申し上げます.
 今回の「掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022」はPAOでの治療エビデンスに関する論文は世界的にほとんど認められないため,Minds 準拠の診療ガイドラインではありません.実際のところ現時点ではPAOに対して適用承認薬もありません.しかし様々な治療法が検討されており,今後保険適用を取得する可能性もあります.本診療の手引き公表前には日本脊椎関節炎学会をはじめ関連学会でパブリックコメントを実施し広く意見を求め透明性を高めております.
 またCOVID‒19感染の影響で出版不況の中,本書の出版を快くお引き受けいただき御尽力いただきました株式会社文光堂ご関係の皆様に深謝申し上げます.
 まだまだ十分なレベルではありませんが,多くの方々の多大なご協力により作成された「掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022」が専門医のみならず骨関節疾患診療に携わる医師,初期・後期研修医,また病巣感染巣の治療を御担当いただけます耳鼻咽喉科,歯科医師,メディカルスタッフ,医学生,患者およびそのご家族にとってわが国での掌蹠膿疱症性骨関節炎診療を理解する一助になることを期待しております.

2022年7月吉日
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎及び類縁疾患の医療水準ならびに患者QOL向上に資する大規模多施設研究」班 研究代表者
森ノ宮医療大学大学院 教授
冨田哲也
Ⅰ.定義
 1.わが国における掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)の歴史・概念
 2.PAOの定義と診断
 3.改訂掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)診断ガイダンス2022
 4.掌蹠膿疱症(PPP)の定義と診断

Ⅱ.疫学
 1.PPPとPAOの疫学
 2.遺伝子とHLA

Ⅲ.臨床症状
 1.骨・関節症状
 2.皮膚・爪症状
 3.PAOの症例提示
 4.小児のPAO,PPP

Ⅳ.臨床検査
 1.血液・生化学検査
 2.単純X線検査
 3.MRI検査

Ⅴ.診断と鑑別疾患
 1.PAOの診断手順
 2.歯科・耳鼻咽喉科への紹介方法

Ⅵ.臨床評価の指標
 1.PAOの評価指標
 2.PPPの評価指標

Ⅶ.PAOとPPPに併存する疾患
 1.PAOとPPPに併存する疾患

Ⅷ.病因
 1.病因総論
 2.病巣感染

Ⅸ.病態
 1.病態総論
 2.病態生理

Ⅹ.病理像
 1.PAO―骨・関節病変
 2.PPP―皮膚病変
 3.歯科領域病変
 4.扁桃病変

Ⅺ.治療
 1.治療目標と治療方針・患者教育・リハビリテーション
 2.治療薬の選択と各薬剤の位置づけ
 3.外科的手術療法
 4.薬物治療における注意点

Ⅻ.患者会
 1.患者の立場から
 2.医師の立場から

索引