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眼科手術のサイエンスは書籍で,アートはWEBの動画で

眼手術学  4

角膜・結膜・屈折矯正

カバー写真
  • 監修:大鹿哲郎(筑波大学教授)
  • 編集:西田幸二(大阪大学主任教授)
  • 編集 横井則彦(京都府立医科大学准教授)
  • 編集 前田直之(大阪大学教授)
  • B5判・544頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-5593-7
  • 2013年10月19日発行
定価 33,000 円 (本体 30,000円 + 税10%)
あり
在庫

内容

序文

主要目次

眼科手術全般を,全8冊に分けて網羅したシリーズの第4巻.本書は,選択的層状角膜移植や再生医療の導入,ならびにレーザー角膜手術の導入といった手術革新により,近年劇的な進歩がもたらされた角膜・結膜・屈折矯正手術における,手術理論や術前・術管理方法はもちろん,歴史的変遷,手術侵襲に対する生体反応,光学的影響,デバイスの進歩など,臨床に応用できる幅広い知識とノウハウを提供する一冊.また,実際の手術手技はWEB上にアップされた動画と連動しており,目で見て習得することができる.
☆表組46点,図版94点,カラー写真445点,モノクロ写真7点
「角膜・結膜・屈折矯正」序文

 眼科手術の主たる目的はより良い視機能の回復あるいは獲得である.本書で取り上げた角膜・結膜・屈折矯正手術では,視機能再建という観点から,過去20年間にいくつかの手術革新が起り,劇的な進歩がもたらされてきた.その例として選択的層状角膜移植や再生医療の導入,ならびにレーザー角膜手術の導入が挙げられる.
 角膜移植は1905年にEduard Zirmによって人で初めて成功されたと報告されている.以後,層状角膜移植や全層角膜移植が長年,角膜移植の主流として行われてきた.これらは今も重要な術式として行われているが,続発緑内障や角膜感染,拒絶反応など重篤な合併症が生じるリスクがある.また,術後に生じる不正乱視を低減するには限界があり,満足できる視機能を得られないことが多い.近年,これらの問題点を克服するため,ホスト角膜の悪いパーツのみをドナー角膜に置換する選択的層状角膜移植(パーツ移植とも呼ばれる,欧米ではlamellar surgery)が開発された.特に,角膜内皮疾患への選択的層状角膜移植(角膜内皮移植)は,従来の角膜移植の概念や臨床を劇的に変化させつつある.さらに,患者本人の幹細胞を用いる再生医療の開発により,ドナー角膜不要で拒絶反応フリーの未来的な角膜移植が可能となりつつある.
 もうひとつの手術革新は,レーザー手術の導入である.1990年代に導入されたエキシマレーザーによって,治療的角膜切除術(PTK)やLASIKが開発された.以後,レーザー角膜手術として大きな進歩を遂げ,屈折矯正手術という新たな学問領域が築かれてきた.2000年代にはフェムト秒レーザーが屈折矯正手術や角膜移植に導入され,最近では白内障手術に対しても適応できるようなデバイスの開発が進んでいる.
 一方,視機能再建以外の治療も,眼科手術の新しいテーマとして広がりつつある.それは,結膜疾患であり,結膜の加齢性変化は,瞬目時の摩擦亢進,涙液・涙液層の動態異常を介して,眼不快感や視機能異常の原因となりうる.ともすれば保存的に治療されがちな病態が手術で完治する可能性があり,この分野の手術の発展も期待される.本書では,新しく発達してきた結膜を病変の首座とする疾患群についても大きく取り上げている.
 機能回復を目標とする眼科手術において,術者は単なる手術手技を習得するだけでは不十分である.手術理論や術前・術後管理方法はもちろん,歴史的変遷,手術侵襲に対する生体反応,光学的影響,デバイスの進歩など,臨床に応用できる幅広い知識とノウハウを蓄積することが必要である.しかも,それらをアップデートしていくことが求められる.本書を編集するにあたり,このような知識とノウハウを提供するようにつとめた.本書が,読者の皆様の臨床に少しでも役立つことを切に願っている.

平成25年10月
西田幸二・横井則彦・前田直之
[角膜]
I.角膜手術に必要な基礎知識
  1.角膜上皮の解剖生理,創傷治癒
  2.角膜実質の解剖生理,創傷治癒
  3.角膜内皮の解剖生理,創傷治癒
  4.角膜輪部の解剖生理
II.角膜手術に必要な評価
  1.スリットランプによる観察法
  2.角膜形状解析
  3.角膜内皮検査
  4.角膜厚測定
  5.視野検査, 眼圧測定
  6.涙液検査 
  7.前眼部OCT
III.角膜手術のドナー,器具・材料
  1.ドナーの準備 
  2.角膜手術の共通器具・材料
  3.スリット式顕微鏡 
IV.角膜手術の基本手術
  1.術前処置 
  2.麻酔 
  3.トレパネーション, 角膜縫合
  4.ドナー角膜の作り方
  5.乱視の調整
V.全層角膜移植
  1.全層角膜移植総論
  2.全層角膜移植
  3.全層角膜移植―白内障同時手術1
  4.全層角膜移植―白内障同時手術2
  5.術後合併症 
VI.眼表面疾患に対する選択的層状角膜移植,手術
  1.上皮疾患への選択的層状角膜移植総論
     (KEP,LT,培養角膜上皮細胞シート移植)
  2.角膜上皮形成術, 輪部移植
  3.培養上皮細胞シート移植
  4.羊膜移植
  5.術後合併症
VII.実質疾患に対する選択的層状角膜移植
  1.実質疾患への選択的層状角膜移植総論
     (ALK,DALK,ALTK)
  2.ALTK 
  3.LKP中央部
  4.深層層状角膜移植
  5.術後合併症
VIII.内皮疾患に対する選択的層状角膜移植
  1.内皮疾患への選択的層状角膜移植総論
  2.DSAEK
  3.DMEK
  4.術後合併症
IX.治療的角膜移植
  1.感染症に対する手術
  2.免疫疾患に対する手術
X.角膜表層混濁に対する手術
  1.PTK(エキシマレーザー角膜表層切除術)
  2.種々の角膜疾患における角膜搔爬
  3.異物処理(除去)
XI.ファムト秒レーザーによる角膜移植
XII.円錐角膜に対する手術
  1.総論 
  2.角膜内リング
  3.角膜移植
    ●角膜クロスリンキング
    ●角膜熱形成術
XIII.人工角膜
  1.Boston keratoprosthesis
  2.歯根部利用人工角膜
XIV.資料
  1.アイバンク
  2.臓器移植法
[結膜]
I.結膜手術に必要な基礎知識
 1.結膜の解剖・生理・創傷治
II.結膜手術に必要な評価
III.瞼裂斑,結膜母斑
  1.瞼裂斑
  2.結膜母斑
IV.翼状片に対する手術
  1.翼状片手術総論
  2.初発翼状片に対する手術(有茎弁移植)
  3.初発翼状片に対する手術(遊離弁移植)
  4.再発翼状片
    ●術中MMCの使い方
  5.術後管理・合併症
V.増殖性アレルギー性結膜炎に対する手術
  1.春季カタルに対する結膜乳頭切除術
    ●シールド潰瘍合併例
VI.結膜弛緩症とその関連疾患に対する手術
  1.結膜弛緩症手術総論
  2.結膜弛緩症(単純型) 結膜切除を行う方法
  3.結膜弛緩症(単純型) 結膜切除を行わない方法
  4.結膜弛緩症(円蓋部挙上型)
  5.上輪部角結膜炎に対する上方結膜切除術
  6.術後管理・合併症
VII.囊胞性疾患に対する手術
  1.結膜封入囊胞
  2.涙腺の貯留囊胞
VIII.結膜腫瘍に対する手術
  1.結膜上皮内癌
  2.結膜扁平上皮癌(眼表面再建を要するもの)
  3.結膜悪性黒色腫
    ●結膜生検,MALTリンパ腫とその鑑別診断
IX.眼瞼癒着に対する手術
  1.結膜囊形成術
X.角膜疾患に対する結膜手術
  1.角膜結膜被覆術
  2.周辺部角膜潰瘍に対する結膜切除術
[屈折矯正]
I.屈折矯正手術に必要な基礎知識
  1.屈折矯正手術における創傷治癒
II.屈折矯正手術に必要な評価
  1.視力検査 
  2.視機能検査
  3.角膜形状解析
  4.波面収差解析
  5.角膜厚検査
  6.スクリーニングの実際
     ●円錐角膜の評価 
III.屈折矯正手術の器具
  1.マイクロケラトーム
  2.エキシマレーザー
  3.フェムト秒レーザー
IV.角膜屈折矯正手術
  1.角膜屈折矯正手術総論
  2.PRK 
  3.advanced surface ablation
  4.フェムト秒レーザーを用いたLASIK
     ●マイクロケラトームを用いたLASIK
     ●フェムト秒レーザーのみで行う
      屈折矯正手術:ReLEx,SMILE
     ●LRI, フェムト秒レーザーによるAK 
     ●トーリック眼内レンズ
  5.術後管理・合併症
V.老視治療
  1.老視手術総論
  2.conductive keratoplasty
     ●AcuFocusリング
     ●多焦点眼内レンズ
VI.Phakic IOL(有水晶体眼内レンズ)
  1.phakic IOL総論
  2.虹彩支持型
  3.後房型
  4.隅角支持型
  5.術後管理・合併症
VII.refractive lens exchange
VII.資料
  1.屈折矯正手術ガイドライン,講習会
  2.屈折矯正手術適応と各種資格
索引