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栄養療法のA to Zがこの1冊に!25の病態別栄養管理を要約解説!

レジデント・医療スタッフ・学生のための

臨床栄養入門

  • 編集:雨海照祥(滋慶医療科学大学医療科学部臨床工学科教授)
  • 編集 山東勤弥(滋慶医療科学大学医療科学部臨床工学科教授)
  • 編集 幣 憲一郎(京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部副部長)
  • A5判・232頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-6067-2
  • 2022年5月18日発行
定価 3,740 円 (本体 3,400円 + 税10%)
あり
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正誤表

内容

序文

主要目次

栄養療法の基礎から実践までの「A to Z」を,レジデントや看護師・管理栄養士などの医療スタッフ,学生に向けてわかりやすくひもときます.前半では栄養ケアプロセスの各過程のポイントを「演習問題」や図表をまじえながら解説.経口・経腸・静脈栄養の具体的な運用についても学びます.後半には炎症性腸疾患や糖尿病など,25の「病態別栄養管理」を掲載.さらに「Q&A」,「症例検討(16例)」を設け,「疾患」と「栄養」の関係を理解しながら,より幅広い視野で栄養療法を把握することができます.「病院食にはどんな種類があるの?」「3分粥,7分粥はどう違うの?」といった初学者の疑問に応える内容も含まれているので,栄養や食事について何も知らないまま臨床現場に来てしまった……なんていう方にもうってつけのテキストです.

病院栄養失調Hospital Malnutritionの失われた50年を取り戻すために

 1974年11月,アメリカ東海岸のボストン市立病院外科の入院患者の低栄養の有病率を調べる2人の男がいた.いずれも名前の頭文字がBであることから,のちにもう1人を加えて3Bと呼ばれることになるうちの2人(Bistrian BR, Blackburn G)が明らかにしたのは,さまざまな手術目的で入院した患者の低栄養の有病率が実に40%に及ぶという,それまでだれもが思いもよらなかった事実である.彼らはこの状態を病院栄養失調Hospital Malnutritionと命名した1).一方,それからさかのぼること8ヵ月,1974年3月,ボストンから南西に1,900km,アラバマ州バーミンガム市のアラバマ大学のバタワースButterworth教授がある雑誌に書いた論文のタイトルが話題を呼んでいた.そのタイトルとは,「The Skeleton in the HospitalCloset」(病院のクロゼットにガイ骨がいる)2).まさか院内殺人事件ではないだろう.これは病院栄養失調をガイ骨と極論し,院内のクロゼットの奥にごろごろガイ骨が隠されている,との警鐘だった.その後,彼は1977年にアラバマ大学に新設された栄養学部Department of Nutrition Sciencesの責任者として活躍,医学部生への栄養教育によって,有能なスタッフ達を世に送りだすことになる3)
 それから50年近くが過ぎた.病院栄養失調の頻度は変わらない.病態が重症化し,高齢化した.しかしそれだけではない.低栄養(栄養失調)が診断名であることが知られなさすぎる.適切な治療の有効な道標として診断されなければ,治療もされず,低栄養による合併症と死亡(morbidity & mortality:M&M)カンファレンスも開かれず,当然M&Mの分析もされなかった半世紀,多くの命が低栄養で失われてしまったに違いない.がん,ICU・呼吸障害・褥瘡,外科・消化器,内科,婦人科・泌尿器科・整形外科ごとに低栄養の頻度は違う(60%,50%,40%,30%,20%)3).多彩な原因の最終型としての共通型である敗血症や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が重症度や原因別に亜型subphenotypes4,5)を分類するように,多彩な原因の最終型としての共通型である低栄養も原因別の亜型分類がなされるときがくるかもしれない.例えば,がん低栄養cancer‒(related)malnutrition,外科低栄養surg‒malnutrition,褥瘡低栄養pressure injury(PI)‒malnutrition,など原因別低栄養に分類され,個別の栄養療法disease‒specific nutritional support(DNS)の設計が必要であろう.疾患自体の十分な理解なくして,栄養療法の進退は決められない.疾患と栄養は医療の両輪であり,どちらか一方だけでは医療は成立しない.本
書の第8章「病態別栄養管理」がこのDNSにあたる.DNS の理論と実践である総論が,見開き2ページにコンパクトにまとめられている.また索引も使いやすさを念頭にした.十二分に日本語,英語の索引を活用いただきたい.
 こうして科別に各医療スタッフのだれかが,目の前の患者さんの低栄養の存在にさえ気づいていけば,適切なタイミングで栄養治療,栄養療法を施すことができ,救命できる命が必ずある.低栄養でガイ骨を生まないためには,教育効果,伸びしろの大きい若者に,熱いうちに,疾患としての低栄養を染み込ませるしか,失われた50年間の借りを取り戻すことはできそうもない.50年の間に,がんゲノム医療,病理,放射線などのAI診断,ロボット手術など,医療の華々しい躍進の陰で,低栄養という太古からの未解決問題は手つかずのままでいる.
 本書をレジデント,医療スタッフ,学生全員が手元に忍ばせ,その表紙に触れ,目の前の患者さんの低栄養に思いが及び,低栄養の診断から治療,アウトカムの改善,経済的負担の軽減までの,低栄養医療の一連のまっとうな医療行為を医療の常識にしていただきたい.このままでは,同じ50年が過ぎて,医学は砂漠と化し,病院は本当にガイ骨の置き場になってしまうかもしれない.
 本書で勝手に失われた50年奪還計画実行委員会を立ち上げて,あなたもこの計画の委員になって失われた50年分の奪還作戦にぜひ参加してください.
 どうか一日も早く,この悲惨な低栄養の惨状からあなたの患者さん達をあなたの力で救い出し,まっとうな栄養と医療を提供し,HMの栄養難民のみなさんを元気にして,ご家庭や社会での生活を楽しんでいただけることを目標として本書を発刊いたしました.本書が少しでもあなたの大切な患者さんの力になることを祈っています.

2022年4月
編集者一同

参考文献
1)Bistrian BR, et al:Protein status of general surgical patients. JAMA 230:858‒860, 1974
2)Butterworth CE:The skeleton in the hospital closet. Nutr Today 9:4‒8, 1974
3)Krumdieck CL. In memoriam. Am J Clin Nutr 68:981‒982, 1998
4)Souza TT, et al:Is the skeleton still in the hospital closet? A review of hospital malnutrition emphasizing health economic aspects. Clin Nutr 34:1088‒1092, 2015
5)Seymour CW, et al:Derivation, validation, and potential treatment implications of novel clinical phenotypes for sepsis. JAMA 321:2003‒2017, 2019
6)Calfee CS, et al:Subphenotypes in acute respiratory distress syndrome:latent class analysis of data from two randomised controlled trials. Lancet Respir Med 2:611‒620, 2014
7)Schuetz P, et al:Cost savings associated with nutritional support in medical inpatients:an economic model based on data from a systematic review of randomised trials. BMJ Open 11:
e046402, 2021
第1章 栄養療法の重要性
 1 栄養障害と栄養療法のプロセス
 2 栄養療法のポイント

第2章 栄養アセスメントの実際
 1 栄養アセスメントとは
 2 栄養障害のフィジカルアセスメント

第3章 栄養管理の実際
 1 アクセスルートの選択
 2 投与量の決定方法
 3 栄養療法のモニタリング,アウトカム評価,再プランニング
 4 代謝性合併症のモニタリングとその対策

第4章 栄養管理に必要な検査
 1 栄養療法に必要な検査 ①
 2 栄養療法に必要な検査 ②

第5章 経口栄養
 1 摂食嚥下機能の評価
 2 食事栄養オーダーの方法,食事指示箋に記載すべき内容
 3 院内の給食システムの運用
 4 病院食
 5 栄養指示指導

第6章 経腸栄養剤の使い方
 1 経腸栄養剤の種類
 2 経腸栄養法の合併症と対策

第7章 静脈栄養輸液の使い方

第8章 病態別栄養管理
 1 炎症性腸疾患
  ① クローン病
  ② 潰瘍性大腸炎
 2 短腸症候群(SBS)
 3 虚血性腸炎
 4 消化管がんの周術期
 5 肝疾患
  ① 肝硬変
  ② 肝炎
 6 胆嚢・胆管疾患
  ① 胆石症
  ② 胆嚢炎
 7 膵疾患
  ① 急性膵炎
  ② 慢性膵炎
 8 糖尿病(2型,1型)
 9 高血圧
 10 心不全
 11 脂質異常症
 12 慢性呼吸不全,慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 13 急性腎障害・慢性腎臓病(透析)
 14 甲状腺疾患
  ① 甲状腺機能亢進症
  ② 甲状腺機能低下症
 15 貧血
 16 妊婦の鉄欠乏性貧血
 17 クリティカルケア(外傷,多臓器障害,熱傷)
 18 敗血症
 19 フレイル
 20 オーラルフレイル
 21 褥瘡
 22 サルコペニア
 23 骨粗鬆症
 24 リフィーディング症候群
 25 がん化学療法中

第9章 Q&A
 Q1 嚥下調整食の国際分類について教えてください.
 Q2 CVC手技のリスクマネジメントについて教えてください.
 Q3 水の管理の方法について教えてください.
 Q4 中心静脈栄養施行時の経口移行についての注意点を教えてください.
 Q5 脂肪乳剤のメリットとデメリットを教えてください.
 Q6 プロバイオティクス,プレバイオティクス,シンバイオティクスとは何ですか?
 Q7 経口補水液とは何ですか?

第10章 症例検討

第11章 臨床栄養の周辺分野
 1 災害栄養
 2 法栄養学
 3 ジェンダー栄養学

附・資料(栄養アセスメントツール,栄養関連の計算式,栄養関連の検査・基準値一覧,栄養の倫理)
索引