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感染症病理のエッセンスが詰まった決定版アトラス!

新刊

非腫瘍性疾患病理アトラス

感染症

カバー写真
  • 編集:栃木直文(東邦大学医療センター大森病院病理診断科教授)
  • 編集 鈴木忠樹(国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所感染病理部部長)
  • B5変型判・340頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-0701-1
  • 2026年2月6日発行
定価 19,800 円 (本体 18,000円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

感染症の病理診断とは病原体の診断であり,そのために知っておかなければならないことも多い.本書では,総論的なこととして,感染症の病理診断の考え方や生体反応,感染防護などの基本事項を取り上げ,各論では,代表的な感染性疾患から,まれではあるが特徴的な疾患,新たに概念が確立した疾患,さらに腫瘍性病変の下地としての感染症まで,今,知っておきたい感染症を豊富な写真とともに取り上げた.まさに感染症病理の決定版アトラス.


 人類の歴史は感染症との戦いの歴史である.第二次世界大戦直後においては,日本における死亡最多原因は結核であった.抗結核薬の開発により死亡頻度は大きく減少したものの,現在でも結核症患者は少なからず存在することを一般社会に周知することは,医療従事者の重要な使命である.近年では死亡原因が「肺炎」とされる症例が少なからず存在する.折しもCOVID-19のパンデミックによって,感染症が与える影響というのは,患者個人だけでなく社会全体に広がっており,患者数や死亡者数といった数字のみでは評価できないことが認知された.さらに,交通機関網発達と経済のグローバル化により国境を越える人の移動がますます増加し,また,高齢化および免疫系を調節する様々な医薬品の実用化により免疫機能が低下した感受性者が増加するなど,社会・医療環境の変化により,今世紀に入り様々な感染症が再び人類の健康上の大きな問題になりつつあることを認識しておく必要がある.
 感染症の病因は病原体であり,感染症の診断は原因病原体の同定すなわち病原体診断が基本となる.病原体診断は,様々な臨床検体を用いた微生物培養検査や病原体遺伝子検査,病原体抗原検査などの病原体を検出しようとする検査によってなされており,病理診断の過程においても,この原則は変わらない.しかし,同じ病原体であっても人工培地上での所見と,宿主とのせめぎ合いの結果として確認される組織検体中での所見は違って然るべきであり,病理診断における病原体診断においては,まずこの相違を頭においておく必要がある.さらに,感染症の存在が考慮されずに提出された病理検体の取扱いや培養検査の感度が低い病原体の病原体診断に関しては,病理医の担う役割が極めて大きいことを再認識する必要がある.病理医は,培養検査の結果にとらわれず,標本上にいつもは見かけない「何か」を見出した場合,それが微生物であるのか否か,どんな微生物であるのか,患者の病態にどのような影響を与えているのか,よく考察する必要がある.
 今回,「非腫瘍性疾患病理アトラス」シリーズとしては初めて臓器別ではなく,臓器横断的な側面で企画がなされた.代表的な感染性疾患を初めとして,遭遇頻度が少ないものの特徴的な疾患,新たに概念が確立した疾患,さらに腫瘍性病変の下地としての感染症の存在など,知っておくべき事項を取り上げた.また,病理医のみならず多彩な専門家に執筆を依頼した.
 病理医は,病気の診断においてあらゆる観点からの見識を有しているべき医師であり,最終診断を下す唯一無二の存在である.殊に感染症や自己免疫性疾患をはじめとする炎症性疾患においては,純然たる形態学的所見のみならず,病歴や様々な検査所見を勘案して適切な病理診断すなわち最終診断を下していく必要がある.幅広い鑑別診断を挙げることは病理診断に重要なことの1 つである.本書がその一助になれば,編集者として最大の歓びである.

2025年12月
栃木直文,鈴木忠樹
総論
 Ⅰ.感染症診療における臨床推論
 Ⅱ.感染症診療における病理の役割
 Ⅲ.感染症病理診断の考え方
 Ⅳ.病原微生物と生体反応
  1.病原体に対する生体反応の形態的な現れ方
  2.ウイルス
  3.細菌
  4.抗酸菌
  5.真菌
  6.原虫
  7.蠕虫
 Ⅴ.感染症病理診断のための検体取扱と感染予防策
  1.細胞診検体,組織診検体
  2.剖検
  3.感染性検体の保管と輸送

各論
 Ⅰ.心血管
  1.心筋炎
   コラム:オズウイルス心筋炎
  2.感染性心内膜炎
  3.感染性大動脈瘤
 Ⅱ.頭頸部
  1.ヒトパピローマウイルス(HPV)と中咽頭癌
  2.Epstein-Barrウイルス(EBV)と上咽頭癌・リンパ腫
 Ⅲ.呼吸器
  1.細菌性肺炎
  2.結核症
  3.非結核性抗酸菌症
  4.ウイルス性肺炎
  5.肺真菌症
  6.輸入真菌症
  7.Candida aurisによる感染症
  8.肺吸虫症
 Ⅳ.消化管
  1.ヘリコバクター属菌と胃病変
  2.Epstein-Barrウイルス(EBV)と胃癌
  3.胃のアニサキス症
  4.細菌性腸炎
  5.アメーバ性大腸炎
  6.スピロヘータ症
  7.ウイルス性腸炎
  8.カンジダ症
 Ⅴ.肝胆道
  1.肝炎ウイルスと肝細胞癌
  2.日本住血吸虫症
  3.エキノコックス症(包虫症)
 Ⅵ.生殖器
  1.妊娠関連感染症
  2.ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸癌
  3.HPV関連癌の治療
  コラム:先天性ジカウイルス感染症
 Ⅶ.皮膚
  1.皮膚結核
  2.皮膚真菌症
  3.ポリオーマウイルスとMerkel細胞癌
  4.その他の皮膚感染症
 Ⅷ.骨・関節
  1.化膿性・結核性骨髄炎および関節炎
 Ⅸ.中枢神経
  1.プリオン病・進行性多巣性白質脳症(PML)・亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
  2.トキソプラズマ症
  3.脳炎(トキソプラズマ症を除く)
  4.髄膜炎・脳膿瘍
 Ⅹ.リンパ・造血器系
  1.Epstein-Barrウイルス(EBV)と血液腫瘍
  2.ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-I)と成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)
  3.ヒトヘルペスウイルス8型(HHV8)とリンパ腫・リンパ増殖性疾患
  4.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
 Ⅺ.全身感染症
  A.ウイルス感染症
   1.COVID19
   2.インフルエンザウイルス
   3.狂犬病
   4.エムポックス
    コラム:ウイルス性出血熱
  B.免疫不全状態における感染症・腫瘍と病理診断
   1.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症
    (1)病理学的特徴
    (2)疫学および治療の変遷
   2.免疫抑制療法
   3.臓器移植後
  C.その他の感染症一般と病理診断の関わり