下部消化管内視鏡を効率的にしっかり学べる定番テキストの最新版
新刊消化器画像診断シリーズ 2
消化管内視鏡診断テキスト II 小腸・大腸第5版
内容
序文
主要目次
ここに『消化管内視鏡診断テキストⅡ(小腸・大腸)』第5版をお届けする.
『消化管内視鏡診断テキスト』は,1983年に竹本忠良先生,長廻 紘先生ご編集により産声をあげ,半世紀近くにわたり,消化管内視鏡の世界に足を踏み入れた専攻医の先生方を中心に愛読されてきた歴史を有する.かくいう小生も,研修医時代には初版を手に消化管内視鏡の勉強をした内視鏡医の一人である.その後,長廻先生の寛大なご厚意により光栄にも第4版を編集する機会をいただき,小池和彦先生監修のもと,東大消化管グループを中心に旧ナンバー内科の枠を超えて作成に取り掛かった.2017年10月に『テキストⅠ(食道・胃・十二指腸)』が,2018年4月に『テキストⅡ(小腸・大腸)』が完成した際には,重責から解放され胸を撫で下ろしたのを今でも鮮明に覚えている.
かかる出版から5年が経過し,文光堂の浅井麻紀社長,黒添勢津子氏から改訂の打診をいただいた.今まさに第一線で活躍し,消化管分野の次世代を担う角嶋直美先生,早河 翼先生,辻 陽介先生に編集を依頼するとともに,第2版までは存在した『テキストⅢ(ERCP)』を,近年進歩が著しい超音波内視鏡や腹部超音波,CT,MRI などの他の画像診断も盛り込みながら復活させようと思い至り,当時,光学医療診療部長であった中井陽介先生に取りまとめをお願いした.中井先生を中心に高原楠昊先生,白田龍之介先生,佐藤達也先生が編集に加わることとなり,本テキストは胆膵領域をもカバーする,『消化器画像診断シリーズ』としてリニューアルすることとなった.編集作業中の2024年4月,中井先生が,竹本先生,長廻先生はじめ,かつて『消化管内視鏡診断テキスト』の執筆に尽力された先生方の出身医局である東京女子医大消化器内科教室の主任教授に就任されたことにも運命的な縁を感じざるを得ない.本序文を執筆している2025 年8 月現在,『胆・膵画像診断テキスト』は校正中であり最終原稿をまだ手にしていないが,近い将来の完成を小生自身,大変楽しみにしている.
第5版の作成を通じて,我々の内視鏡診断と内視鏡画像に対するこだわりが増し,消化管内視鏡診療にも向上がみられたことを実感している.今回の改訂では,より良質な内視鏡画像が集まり,かなり充実した内容になったのではないかとも自負している.一方で,本書のみならず内視鏡診断全体の更なる改善・進歩のため,内視鏡診断に熟練しておられる諸先生方からは忌憚ない意見をいただければ幸いである.また,まだ内視鏡診断に不安がある,もしくは,これから内視鏡を握ろうと考えている諸先生方には,日々の内視鏡診療のお供として本書をお役立ていただければ幸いである.
最後に実務担当として我々に常に寄り添い,執筆まで伴走してくださった,黒添氏,村岡直樹氏,照屋綾乃氏に心からお礼を申し上げて,序文を締めくくりたい.
2025年8月
東京大学消化器内科
藤城光弘
A.小腸の解剖
B.大腸の解剖
肛門管
直腸
S状結腸
下行結腸
横行結腸
上行結腸
盲腸
回盲弁
Ⅱ 小腸
A.小腸の内視鏡検査
小腸内視鏡検査の特徴
小腸内視鏡検査の手順
各種小腸内視鏡検査の種類と方法
B.小腸の正常像
通常観察
C.疾患からみた内視鏡所見
1.小腸炎症性疾患
1)クローン病
2)腸管型ベーチェット病/単純性潰瘍
3)NSAIDs起因性腸炎
4)サイトメガロウイルス小腸炎(CMV 小腸炎)
5)アミロイドーシス
6)虚血性小腸炎
2.小腸血管性疾患
1)血管拡張症
2)静脈瘤
3)blue rubber bleb nevus syndrome
3.小腸腫瘍性疾患
1)小腸癌
2)ポリポーシス
Cronkhite—Canada 症候群
Peutz—Jeghers 症候群
家族性大腸腺腫症(FAP)の小腸腺腫
3)粘膜下腫瘍
脂肪腫
血管腫
消化管間質腫瘍(GIST)
神経内分泌腫瘍
4)悪性リンパ腫
5)転移性小腸腫瘍
4.その他の小腸疾患
1)移植片対宿主病(GVHD)
2)メッケル憩室
3)蛋白漏出性小腸症
4)リンパ管腫
Ⅲ.大腸
A.大腸の内視鏡検査
大腸内視鏡検査の意義
長所と短所,特徴(他検査との比較を含めて)
適応と禁忌
偶発症と対策
B.大腸の正常像
盲腸と虫垂
回盲弁・終末回腸部
右結腸
左結腸・直腸
腸管攣縮
血管像
肛門部
吻合部・その他
C.疾患からみた内視鏡所見
1.大腸炎症性疾患
1)炎症性腸疾患
炎症性腸疾患と大腸内視鏡検査
炎症の分類
2)腸管の炎症における内視鏡所見
内視鏡所見の重要性
生検の意義
アフタ
縦走潰瘍の鑑別
輪状潰瘍の鑑別
大腸炎と瘢痕
炎症性ポリポーシス
3)クローン病
概念
主要事項
腸病変の形態学的特徴
腸病変の組織学的特徴
クローン病の診断手順
病態(病型・重症度)の分類
非特異性多発性小腸潰瘍とクローン病の鑑別
クローン病の内視鏡所見
上部消化管のクローン病の病変
4)潰瘍性大腸炎
定義
診断手順
病態(病型・病期・重症度)の分類
潰瘍性大腸炎の内視鏡所見
内視鏡所見に影響を与える要素
潰瘍性大腸炎とサイトメガロウイルス感染
潰瘍性大腸炎関連大腸癌
潰瘍性大腸炎関連 dysplasia
5)単純性潰瘍/ベーチェット潰瘍
ベーチェット病の診断基準
単純性潰瘍/ベーチェット潰瘍の内視鏡所見
6)急性出血性直腸潰瘍
急性出血性直腸潰瘍(AHRU)
7)虚血性大腸炎
虚血性大腸炎の内視鏡所見
虚血性大腸炎の診断
8)薬剤起因性大腸炎
急性出血性大腸炎(AHC)
偽膜性大腸炎(PMC)
NSAIDs起因性腸炎
MRSA腸炎
抗癌剤による腸炎
その他の腸炎
9)微生物による腸炎
細菌感染症(感染性腸炎)
寄生虫による腸炎
ウイルスによる腸炎
10)腸結核
腸結核の内視鏡所見
11)粘膜脱症候群
12)その他の炎症性疾患
放射線障害による腸炎
好酸球性胃腸炎 eosinophilic gastroenteritis
腸間膜脂肪織炎 mesenteric panniculitis
移植片対宿主病(GVHD)
コラーゲン大腸炎 collagenous colitis
2.大腸腫瘍性疾患
1)大腸腫瘍の分類
2)腺腫・大腸癌―表面構造所見・腫瘍形態を中心に―
肉眼的分類
観察のポイント
SM癌の内視鏡診断
進行癌
3)ポリープ
通常型腺腫
鋸歯状ポリープ
若年性ポリープ
4)ポリポーシス
家族性大腸腺腫症(FAP)
若年性ポリポーシス
Cronkhite—Canada症候群
cap polyposis
Peutz—Jeghers症候群
serrated polyposis
Cowden病
炎症性ポリポーシス
その他
5)粘膜下腫瘍
消化管間葉系腫瘍(GIMT)
脂肪腫lipoma
良性リンパ濾胞性ポリープ benign lymphoid polyp
リンパ管腫lymphangioma
血管腫hemangioma
腸管囊胞状気腫症(PCI)
神経内分泌腫瘍(NET G1,G2)
6)悪性リンパ腫
内視鏡所見
組織分類
続発性腸管リンパ腫の内視鏡所見
7)他臓器よりの浸潤癌・転移癌
3.その他の大腸疾患
1)大腸憩室
大腸憩室
憩室反転
2)S状結腸軸捻転
3)直腸異物
4)大腸偽メラノーシス
5)子宮内膜症
6)腸間膜静脈硬化症
7)アミロイドーシス
8)Schönlein-Henoch紫斑病
9)肛門乳頭腫大(肛門ポリープ)
10)痔核
11)尖圭コンジローマ
Ⅳ.知っておきたい基礎知識
大腸腫瘍の肉眼分類
Pit pattern分類
NBI分類
大腸ポリープのガイドラインに基づく検査間隔について
大腸内視鏡のquality indicator について
大腸内視鏡検査の前処置のスコアについて