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心臓外科医の長年にわたる試行錯誤,経験の積み重ねから得られた貴重な知恵を,サイエンスに裏打ちされたアートとして次の世代に伝える好評のシリーズ!

心臓外科Knack & Pitfalls  

心不全外科治療の要点と盲点(電子版のみ)

カバー写真
  • 監修:髙本眞一(三井記念病院院長)
  • 編集:許 俊鋭(東京大学教授・東京都健康長寿医療センター副院長)
  • B5判・270頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2334-9
  • 2012年11月15日発行
定価 19,800 円 (本体 18,000円 + 税10%)
なし
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内容

序文

主要目次

2010年7月に臓器移植法が改正され,法律上は国際水準並みに脳死臓器提供が可能となったが,まだまだドナー不足は否めない.そこで,植込み型補助人工心臓の開発がなされ,心臓移植へのブリッジ(Bridge-to-Transplant;BTT)適応から心臓移植を受け皿としない,QOLの向上と延命を目的とした長期在宅治療Destination Therapy(DT)へと発展を遂げた.今の重症心不全の外科治療の最先端と今後の展望をまとめた.
☆図版126点,表組56点,カラー写真78点,モノクロ写真17点
序文

 2010年以後,日本の重症心不全外科治療は大きな転換期を迎えています.2010年7月に臓器移植法が改正されました.国際水準並みに「脳死を人の死」と定義し家族の承諾による脳死臓器提供が可能となり,小児心臓移植への道が開けました.2011年4月には国産の植込み型補助人工心臓Left Ventricular Assist Device(LVAD)「EVAHEART,DuraHeart」が心臓移植へのブリッジ(Bridge-to-Transplant;BTT)適応のみではありますが,正式に保険償還され,植込み型LVAD在宅治療が日本でも標準的な医療となりました.心臓移植はこの2年間に法改正前の13年間に実施された移植数を凌駕し,植込み型LVAD治療は保険償還のもと,この1年間に50例以上に実施され驚異的な治療成績が達成されています.
 ほとんどの症例が植込み型補助人工心臓植え込み手術後2~3ヵ月で在宅治療に移行しています.これまで,心臓外科の標準的な治療領域とは認識されてこなかった心臓移植・補助人工心臓治療をはじめとする重症心不全に対する外科治療が国際水準並みの標準的医療としてスタートしたといえるでしょう.すでに世界ではThoratec社のHeartMateⅡの使用実績は10,000例を超え,BTT適用とともに心臓移植を受け皿としないQOLと延命を目的とした長期在宅治療Destination Therapy(DT)もBTTと同様に保険償還されています.成人開心術症例の10%以上が植込み型LVAD治療という施設も米国では出てきました.一方,2009年のSTICH Trialの報告で有効性が肯定されなかった外科的左室形成術も,日本では研究者によりSAVE手術やOverlapping法などさまざまな工夫が加えられ,欧米とは異なった優れた治療成績が報告されてきました.
 今回,これまで編纂されてきた心臓外科Knack&Pitfallsシリーズ「冠動脈外科」「弁膜症外科」「大動脈外科」「小児心臓外科」に新たなラインナップとして「心不全外科」を加えることとなりました.心臓外科の古くて新しい分野である「心不全外科」は日本でこれから飛躍的な発展が期待される領域です.日本の心臓外科の将来を担っておられる若手研修医,専門医,指導医の先生方に広く活用して頂ける心臓血管外科専門書となることを願っています.

2012年10月
許 俊鋭
Ⅰ.心不全外科治療の現況
 1.心不全外科治療の現況
 2.心不全内科薬物治療の現況
 3.心不全内科非薬物治療の現況
II.非薬物治療戦略決定のKnack & Pitfalls
 1.心不全へのカスケード
 2.心不全治療を分類から考える
 3.急性心不全の非薬物治療の適応
  a.虚血性心疾患を原疾患とする急性心不全
  b.弁膜症を原疾患とする急性心不全
  c.先天性心疾患を原疾患とする急性心不全
 4.慢性心不全の外科治療の適応
  a.虚血性心筋症を原疾患とする慢性心不全
  b.特発性心筋症を原疾患とする慢性心不全
  c.劇症型心筋炎を原疾患とする慢性心不全−機械的補助循環の適応−
  d.弁膜症と高血圧による二次性心筋症を原疾患とする─慢性心不全─
III.術前管理のKnack & Pitfalls
 1.心不全の術前管理
 2.呼吸不全合併症例の術前管理
 3.腎不全合併症例の術前管理
 4.肝不全合併症例の術前管理
 5.その他の合併症の術前管理
IV.周術期管理のKnack & Pitfalls
 1.呼吸・循環不全合併症例の周術期管理
 2.腎不全合併症例の周術期管理
 3.肝不全合併症例の周術期管理
 4.糖尿病合併症例の周術期管理
 5.右心不全症例の周術期管理
 6.感染対策
 7.抗血栓・出血対策
 8.心臓リハビリテーション
Ⅴ.心不全外科のKnack & Pitfalls
 1.左室形成術
 2.補助人工心臓
  a.種類と特徴
  b.植え込み手術の実際とデバイス管理
   1)第2世代植込み型補助人工心臓
    ①EVAHEART
    ②Jarvik2000
    ③HeartMateII
   2)第3世代植込み型補助人工心臓−DuraHeartとHeartWare HVAD−
   3)ニプロ型VADシステム
   4)体外設置型補助人工心臓-BVS5000,AB5000-
  c.補助人工心臓の長期在宅療法-destination therapy-
 3.心臓移植
  a.補助人工心臓ブリッジ症例の心臓移植手術
   1)心臓移植手術の実際
   2)補助人工心臓送脱血管・ドライブライン刺入部の処置
  b.急性拒絶反応と術後早期の免疫抑制療法
  c.感染対策
  d.冠動脈病変の進行防止
  e.悪性新生物対策
 4.再生医療
  a.心筋再生のマテリアル
  b.心臓再生医療の術中アプローチ法
  c.心筋シート臨床治験-術後評価のポイント-
  d.補助人工心臓ブリッジ症例の再生医療
VI.在宅安全管理のKnack & Pitfalls
 1.薬物治療・右心不全管理
 2.ドライブライン管理
 3.デバイス管理・モニタリング
 4.抗血栓療法
索引