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脳卒中理学療法臨床現場の理学療法士が押さえておくべき理学療法の現在的諸相!

脳卒中理学療法ベスト・プラクティス(電子版のみ)

科学としての理学療法実践の立場から

カバー写真
  • 編集:奈良 勲(金城大学特任教授・元学長,広島大学名誉教授)
  • 編集 松尾善美(武庫川女子大学教授)
  • ゲスト編集:土山裕之(金沢脳神経外科病院リハビリテーション部部長)
  • B5判・288頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-4512-9
  • 2014年9月15日発行
定価 6,820 円 (本体 6,200円 + 税10%)
なし
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内容

序文

主要目次

脳卒中理学療法臨床と研究に携わり28年の土山裕之専門理学療法士をゲスト編集に迎え,臨床現場に必要な脳卒中理学療法の現在(共時)的な諸相を解説するよう問題点を提示.変遷と今後の方向性,脳卒中理学療法にとってベスト・プラクティスとは? 脳の可塑性と運動療法,姿勢と動作の分析からバランストレーニングへ,運動連鎖の評価と臨床応用,歩行との関わり,高次脳機能,心理,精神機能からプッシャー(押す人)現象への対応,日常生活評価から回復期リハにおける基本ー応用動作練習,住環境評価から在宅支援,外来療法・生活・家族指導,などを解説.最後に脳卒中・片麻痺理学療法のスペシャリストであるゲスト編集者自らの臨床経験を踏まえ,未来を展望する.
☆図版466点,表組27点,モノクロ写真64点
序 文

 日本において正規に理学療法が始まってから半世紀が経過した.草創期の理学療法の対象は,主に整形外科や関節リウマチなどの骨・関節疾患(疼痛を含む)だった.理学療法と並行してリハビリテーション医学・医療,そして,その理念も導入されたことで,過去には対象外であったあらゆる疾患が対象になってきた.脳卒中患者もその例外ではなく,安静第一とされてきた時代から早期理学療法へと変遷してきた.だが,その理学療法プログラムは従来の方法論とさほど変わることはなく,いわゆる量的対応であった.
 その後,欧米から導入された種々の神経生理学的アプローチ,いわゆる質的対応が重視されるようになったが,筆者自身は,バランスのある質量的対応および運動学的対応などを加えて,特定の方法論に偏らない方法論を模索してきた.これについては,筆者だけではなく,脳卒中患者の理学療法に関与する誰もが模索してきたことである.
 さらに,より科学的もしくは根拠に基づいた理学療法への意識の高まりや脳科学などの進歩に伴い,多様な理学療法介入の試行が実践されていることが,この領域の発展に寄与するとすれば極めて喜ばしいことである.しかし,忘れてならないことは,あらゆる事象の現在は過去の延長線上にあり,未来は現在の延長線上にあるとの考え方を認識することなく未来に進むことは,無神経な挑戦となりかねない.
 本書の特長の1つは,新卒時代から現在に至る長年にわたり特定の医療施設で脳卒中の臨床と研究に携わり,流動する制度の枠組みの中で理学療法の発展に前向きに対処してこられた土山裕之氏をゲスト編集者として迎え,企画と執筆とに関与していただいたことである.氏の苦悩的体験は,ノルウェーの画家,ムンクの「叫び」のようでもある.
 本書では,それらの点を踏まえて,理学療法にかかわる歴史的な変遷についてもページを割いている.また,最新の脳科学などの知見をいかに実践的な理学療法の中にとり入れていけばよいのかなどについても多角的に情報提供し,読者の今後の臨床・研究の一助となることに配慮した.
 めまぐるしく変遷する保健・医療・福祉制度の中で「より良い・善い理学療法」を再編成し続けていくことは至難の技である.単に古典的な事象を捨て,新たな事象だけを追いかける精神構造は,理学療法の知的財産の蓄積を損なうことにもなりかねない.朱子曰く,「少年老い易く学成り難く」の知恵を謙虚に受け止めて,理学療法の過去・現在を未来に引き継ぐべく,望ましい新陳代謝を志向することが大切であろう.

2014年9月
編著者代表 奈良 勲
序論 科学としての理学療法実践の立場から
  筆者自身の歴史をひも解いてみる
  脳卒中理学療法における科学性とは
  ICFに準じた理学療法とは
  なぜ課題指向型の理学療法アプローチが必要なのか
  環境が行動を支配するとは
  なぜ道具を積極的にとり入れるのか
I 脳卒中理学療法の変遷と今後の方向性
  日本の脳卒中理学療法の歴史的変遷
  脳卒中理学療法の理論的変遷
   1) 反射階層理論からシステム理論へ
   2) 脳科学の理学療法理論への寄与
  脳卒中理学療法の理論から実践—新たな展開へ
   1) 反射階層理論からのアプローチ
   2) システム理論からのアプローチ
   3) リハビリテーション医療と理学療法の展開
   4) 脳卒中ガイドライン
II 「ベスト・プラクティス」と脳卒中理学療法の結合
  ベスト・エビデンスの臨床適用
   1) ベスト・エビデンスとは
   2) エビデンスに基づいた理学療法実践
   3) 知識(情報)翻訳
   4) ベスト・プラクティス
  脳卒中リハビリテーション
   1) 脳卒中の回復
   2) 合併症の管理
   3) 脳卒中リハビリテーションのベスト・エビデンス
  脳卒中患者に対する理学療法のベスト・プラクティス
   1) ICF関連指標による評価
   2) 脳卒中患者に対する理学療法
III 脳卒中理学療法の評価・臨床推論・治療を検証する
 1 脳の可塑性と運動療法
  脳損傷後の機能回復のメカニズム
  脳の可塑的変化—動物実験から
   1) 身体経験による脳の可塑的変化
   2) 環境要因による脳の可塑的変化
  脳の可塑的変化—ヒトを対象とした脳イメージング研究から
   1) 運動スキル学習における脳の再組織化
   2) 脳損傷後の脳の再組織化
  脳損傷後の運動機能回復の手続き
 2 姿勢と動作の分析を踏まえバランストレーニングへ
  姿勢や動作を分析するにあたって
   1) 姿勢,運動,動作,行為
   2) 正常な姿勢および動作
   3) 姿勢を評価する際に注意すること
  座位姿勢保持の背景と見方
  立位姿勢保持の背景と見方
   1) 安静立位姿勢
   2) 立位位置知覚能
   3) 高齢者の立位位置知覚能
   4) 立位姿勢の安定性と位置知覚能
   5) 立位位置知覚と感覚情報
   6)既存の評価バッテリーを用いるときの注意点
  トレーニング
   1) 座位姿勢
   2) 立位姿勢
 3 運動連鎖の評価と臨床応用
  重力環境下での運動の原則
  エコノミカルな筋活動
  シナジーと知覚運動連関の発達
   1) 背臥位でのシナジー形成
   2) 腹臥位でのシナジー形成
   3) 座位でのシナジー形成
   4) 立位でのシナジー形成
  運動連鎖機能を捉える主要な概念
   1) パーキングファンクション(parking function)
   2) ダイナミックスタビリゼーション(dynamic stabilization)
   3) 支持機能(supporting function)
   4) ブリッジ(bridging activity)とCKCメカニズム(closed kinetic chain
      mechanism)
   5) テンタクル(tentacle activity)と支持機能
   6) 運動の広がり(continuing movement)と支援活動(buttressing)
   7) 筋の不均衡(muscle imbalance)とクロスシンドローム(cross syndrome)
   8) 運動連鎖に重要な筋連結
  運動連鎖の評価
   1) 姿勢観察
   2) 構造の評価(可動性)
   3) 筋緊張の評価
   4) 随意的な運動パターンの評価
   5) 基本動作の分析
   6) 疼痛回避反応
   7) 介入後の再評価
  アプローチの原則
   1) 背臥位姿勢での運動連鎖の促通
   2) 腹臥位姿勢での運動連鎖の促通
   3) 側臥位姿勢での運動連鎖
   4) 座位姿勢での運動連鎖の促通
   5) 立ち上がりから立位姿勢での展開
 4 歩行分析から歩行に対する課題指向型アプローチ
  歩行を理解するための動作分析の基礎
  通常歩行の理解
  片麻痺者の歩行の特徴
  短下肢装具の働き
  装具を使用した歩行練習
 5 pusher現象への対応—なぜ押してしまうのか
  pusher現象の病態と評価
   1) 病態
   2) 臨床評価
   3) pusher現象のメカニズム─垂直性(verticality)との関連性
  症例提示
   1) 発症早期のpusher現象症例の提示
   2) 回復期におけるpusher現象症例の提示
   3) 回復期脳卒中後患者に対する理学療法介入におけるポイント
 6 日常生活活動評価から回復期リハビリテーションにおける
  基本動作・応用動作練習
  日常生活活動(動作)の構造
   1) 日常生活活動(動作)の考え方
   2) ADLと基本動作
   3) 病期に応じたADL
   4) 在宅環境の評価時期
  脳卒中における回復期リハビリテーション
   1) 脳卒中リハビリテーションの段階
   2) 脳卒中における回復期リハビリテーションの実際(回復期リハビリテーション病棟)
   3) 回復期リハビリテーションにおけるADL評価の視点と方向性
  回復期の入院環境における基本的練習
   1) ADLは基本動作の組み合わせである
   2) 実用的なADLの練習のために
  在宅へのソフトランディングのために
   1) 基本動作と環境への適応
   2) 回復期であることの注意
 7 在宅生活を支えるアプローチ
  在宅支援の考え方
   1) 生活を立体的に捉える
   2) 介入の時期と在宅支援
   3) 持続的な在宅生活のために
   4) 在宅理学療法の目標設定はどうなる
  在宅理学療法の根拠
   1) 基本動作能力とADL
   2) 心身機能に影響を与えるもの
   3) 能力はどのように変化するか
   4) 長期的な視点
   5) 明らかになっている在宅理学療法効果
  制度はどのようになっているか
   1) 介護保険におけるケアマネジメントシステム
  在宅対象者に対する脳卒中理学療法
   1) 在宅生活のイメージ作り
   2) 生活環境整備の流れ
   3) 環境整備と理学療法の具体策
  より良い環境整備のために
   1) 本人の能力を最大限に発揮する生活か
   2) 将来を見通した改修か
   3) 専門職間の連携は重要
   4) 目的を明確にしてイメージを共有しよう
   5) 本当にそれで良いのか
   6) できること・していることの評価
  ライフサイクルについて
   1) 成人期(26〜45歳)
   2) 初老期(46〜64歳)
   3) 老年期(65歳以上)
  提供体制別にみた理学療法
   1) 入所系サービス
   2) 通所系サービス
   3) 訪問系サービス
IV 土山専門理学療法士が,28年間の臨床体験を踏まえて,脳卒中の理学療法の
  未来を展望する─制度論と技術論の観点から─
  これからの脳卒中の理学療法はスピードが勝負‼
   1) 超少子高齢化をどう乗り越えていくか
   2) 医療経済を踏まえた短期集中型の理学療法の展開
   3) 診療報酬改定が脳卒中の理学療法に影響していく
  理学療法士はコンダクターになれるか
   1) 予測の眼力をもつことが期待される
   2) 急性期からの予後予測が重要となる
   3) 予後予測で気をつけること
  まず,歩くことにこだわれ‼
   1) 患者への動機づけ
   2) 二足歩行にこだわった早期からの装具療法
   3) なぜ二足歩行にこだわるのか
   4) 二足歩行を意識した歩行練習の実際
   5) 装具は理学療法における武器でもある
   6) 最後まで二足歩行に固執するのか
   7) 歩行スピードを意識する
   8) たくさん歩いたほうが上手になる
   9) 簡単に歩ける工夫をする
   10) 歩くときに下肢筋力は大切である
   11) 最終的には這ってでも移動できれば,患者・家族は救われる
   12) 患者に歩くことをイメージさせる
  脳卒中の理学療法は何を目指すのか
   1) 病期における理学療法の展開
   2) リハ医療に病期は馴染まない
   3) 問われる「質」とその内容
   4) 急性期における理学療法の課題
   5) 回復期における理学療法の課題
   6) 生活期における理学療法の課題
  理学療法士の職域の拡大
   1) 理学療法士の国家資格保持者の数
   2) 理学療法士の就労状況
   3) 新しい技術の導入
   4) 体重免荷トレッドミル歩行練習
   5) 理学療法技術とロボットテクノロジーとの融合
   6) 予防理学療法への可能性
  地域密着型の理学療法の確立
   1) 地域包括ケアシステムへの参画
   2) チーム医療の構築
   3) 期待される短時間通所リハ
   4) 訪問リハステーション創設へ
   5) 介護の分野での自立支援の強化
  2025年の理学療法士配置イメージ
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