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かかりつけ医のための認知症診療の入門書!

ゼロから始める認知症診療(電子版のみ)

  • 著:川上忠孝(新小山市民病院神経内科部長・副院長)
  • A5判・204頁
  • ISBN 978-4-8306-3624-0
  • 2017年9月12日発行
定価 3,080 円 (本体 2,800円 + 税10%)
なし
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内容

序文

主要目次

わが国では高齢化とともに,認知症患者数も増加の一途を辿っており,認知症を早期発見・早期治療するために,かかりつけ医の担う役割は年々増している. 本書はかかりつけ医が行う認知症診療において,早期発見のための徴候を見逃さないコツ,周辺症状のコントロール,専門医との連携,介護保険の活用の仕方などがわかりやすく解説された入門書である.改正道路交通法に基づく診断書の作成の仕方,介護保険申請のための主治医意見書の作成の仕方など,かかりつけ医に必要な認知症診療の実際が詰まった1冊に仕上がっている.
序 文
 
 『ゼロから始めるパーキンソン病診療』に引き続き,今回も,一般内科など,日頃は認知症を専門に診療されていない方にも気楽に読んでいただけるようにと,認知症の入門書として本書を執筆しました.
 日本人の平均年齢は年々少しずつですが延びており,2016年には男女とも世界2位の水準となっています.高齢化の進行とともに認知症患者もかなりの勢いで増加しており,近い将来には患者数が700万人にまで増加するともいわれています.認知症の中で最多と言えるアルツハイマー病はパーキンソン病と同様,神経変性疾患の一つです.しかしながら,認知症はいわゆる『症候群』であり,その中にはアルツハイマー病だけでなく,脳血管性認知症のような非変性疾患,特発性正常圧水頭症のような脳外科的疾患などさまざまな病態が包含されています.その症状も疾患による違いもあれば,個人差もまた大きく,見た目だけでは鑑別が困難なことがしばしばあります.また,パーキンソン病(これも完治する疾患ではありませんが…)などとは異なり,症状は運動症状よりもむしろ精神症状が主体であるため,特に一般内科などの先生方にとってはとっつきにくいもの,理解しにくいものと感じられるのかもしれません.
 これだけ患者数が増えてくると,認知症はもはや対岸の火事ではなく,common disease として認識すべき疾患であると言えるでしょう.しかしながら,医師であれば皆が同じレベルで治療ができるわけではありませんし,必ずしもそうである必要はないだろうと考えます.
 日頃診ている患者の認知症に気がついたときにはすでにかなり症状が進行し,日常生活にも非常に支障が生じて対応が後手に回るということにならないように,日常診療などの場でどのような症状・徴候に注意して診療すべきか,ということについても言及しています.入院したときの認知症状やせん妄などへの対応だけでなく,介護保険利用など医介連携についても解説を加えました.
 本書が,皆様の認知症に対するご理解や認知症診療の手助けに少しでもなるようであれば,筆者としては嬉しい限りです.
  
2017年9月
川上 忠孝
1章 認知症とは
1 認知症とは?
  1 記憶の分類・種類・評価
  2 認知症の定義・主たる原因疾患
2 基本的症候
  1 認知症の中核症状
  2 認知症の周辺症状(BPSD)
3 認知症の疫学
  1 これまでの疫学調査より
  2 若年性認知症の疫学
4 軽度認知機能障害(MCI)とは
  1 MCIの定義
  2 MCIを疑うとき
  3 MCIから認知症へのコンバート予測
  4 抑うつ状態の存在からMCIを疑う
5 認知症の経過
  1 発症前期〜発症初期認知症
  2 認知症の重症度分類
  3 中等度〜高度認知症
  4 認知症の終末像
2章 認知症の各病型の診断
1 認知症を疑うとき
  1 家族など患者周囲の人が認知症を疑うのは?
  2 診察の仕方:問診・病歴聴取・診察のポイント
  3 検査法:スクリーニング〜専門的診断
2 認知症との鑑別が必要な状態
  1 せん妄状態
  2 うつ病/抑うつ状態
  3 老人性精神病などの精神科疾患
3 覚えておきたい代表的な疾患・各病型の症候など
  1 アルツハイマー病(AD)
  2 レビー小体型認知症(DLB)
  3 前頭側頭型認知症(FTDもしくはFTLD)
  4 嗜銀顆粒性認知症(AGD)と神経原線維変化型老年認知症(SD-NFT)
  5 脳血管性認知症(VaD)
  6 特発性正常圧水頭症(iNPH)
4 認知症の臨床診断は難しい
3章 認知症の治療
1 抗認知症薬総論
  1 抗認知症薬は対症療法である
  2 症状に合わせた薬の使い方
2 アルツハイマー病に対する治療薬
  1 コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル,リバスチグミン,ガランタミン)
  2 NMDA 受容体拮抗薬(メマンチン[メマリー])
3 その他の治療薬
  1 向精神薬(抗不安薬,抗精神病薬,抗うつ薬)
  2 漢方薬
4 非薬物療法:リハビリなど
  1 認知症に対するリハビリの考え方
  2 楽しむことができれば症状進展の防止につながる?
  3 身体機能面のリハビリ
5 服薬が上手くできないとき(服薬拒否・飲み忘れ・飲みすぎ等)の対応
  1 服薬拒否
  2 飲み忘れ
  3 飲みすぎてしまった!?
4章 認知症患者と合併疾患
1 てんかん
  1 てんかんに対する誤解
  2 高齢者の意識消失の原因
  3 高齢で初発するてんかんも多い
  4 認知症はてんかんを合併しやすい
  5 てんかん発作が認知症と間違われることもある
  6 高齢者てんかんの治療開始の判断
  7 高齢者てんかんの薬物によるコントロール
  8 抗てんかん薬の注意すべき副作用
2 糖尿病
  1 糖尿病はアルツハイマー病発症の危険因子である
  2 糖尿病とアルツハイマー病の悪循環
  3 認知症患者の血糖コントロール
3 高血圧
  1 高血圧と認知症
  2 降圧剤と認知症
4 脂質異常症
  1 脂質異常症と認知症
5 いろいろな薬剤と認知症
  1 プロトンポンプインヒビター(PPI)と認知症
  2 その他の薬剤
5章 認知症患者と社会資源
1 もの忘れ外来とかかりつけ医
  1 認知症は誰が最初に気づく?
  2 かかりつけ医が認知症を疑うポイント
  3 認知症患者と運転免許
2 認知症と介護保険
  1『 介護保険』とは
  2 主治医意見書作成のポイント
  3 主治医意見書提出後の流れ
  4 要介護認定により受けられるサービス
3 デイサービス・デイケアの利用
  1 介護は一人で頑張ろうとしない
  2 日本人の感性としての『恥の文化』
  3 現在の日本に必要なこと
  4『食わず嫌い』は拒否の表れかもしれない
  5 介護サービス施設へお願いしたいこと
4 認知症患者の入院中のケア
  1 口腔内ケア
  2 せん妄の予防
5 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)について
  1「認知症」という疾患への理解の推進
  2 若年性認知症への取り組み
  3 高齢者にやさしい地域づくりの推進
  4 筆者の考える今後の課題
   〜在留外国人の高齢化に伴う認知症発症〜
附録資料
索 引

COLUMN
 認知症と文学作品
 DLBの幻覚・妄想
 認知症と“ドリアン・グレイの肖像”
 幻覚・錯覚(誤認)・妄想とは?
 認知症と“しごと”
 “老人Z”
 認知症と生活のメリハリ
 あとがきにかえて