TOPページへ

産婦人科医・助産師・臨床検査技師のための胎児スクリーニング指南書!

超音波胎児形態異常スクリーニング

産婦人科医・助産師・臨床検査技師のために

カバー写真
  • 編集:馬場一憲(埼玉医科大学総合医療センター教授)
  • 編集 市塚清健(昭和大学横浜市北部病院准教授)
  • B5判・146頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-3744-5
  • 2015年4月4日発行
定価 4,400 円 (本体 4,000円 + 税10%)
あり
在庫
電子版販売サイト

上記の電子版販売サイトのボタンをクリックすると,外部のサイトに
移動します.電子版の購入方法は各販売サイトにてご確認ください.

正誤表

内容

序文

主要目次

超音波検査による,胎児形態異常の出生前診断の重要性は,広く認識されているものの,その前段階である一般産婦人科医や助産師,臨床検査技師が行うスクリーニング検査のやり方に関しては,まとまったテキストがありませんでした.本書は,胎児スクリーニングという観点から,実際にスクリーニング検査を始めようとする読者のために,胎児形態異常スクリーニングの検査方法を具体的に解説する,わかりやすくて実用的なテキストブックです.
☆図版45点,表組11点,カラー写真12点,モノクロ写真210点,イラスト・線画7点


 超音波診断装置が普及し,ほとんどの胎児が出生前に観察されるようになったにもかかわらず,新生児科医から,どうしてこの形態異常が出生前にわからなかったのか? 出生前診断されていれば予後を良くすることができたのにと指摘されるケースが依然として少なくない.それは,胎児を漫然と見ているだけでは形態異常は見えてこないということが大きな理由の1つと考えられる.
 You only see what you look for
   and you only look for what you know.
 これは,放射線医学の世界での格言だそうだが,胎児形態異常を見つけるための超音波検査にも当てはまる.本書は,胎児超音波検査を行う際に何を捜せば良いのかをスクリーニングのチェック項目として示すとともに,それによって見つかる可能性のある形態異常の超音波像をまとめたものである.
 ただし,超音波検査でどこまで判断できるかは検者の技量に大きく依存するため,検者の技量に応じて対応できるようにレベル分けをしている.
・レベル1: 基本的にレベル2の中から項目を抜き出したもので,2014年度の日本産科婦人科学会周産期委員会の中の小委員会が提案した「妊娠18週〜20週における胎児超音波検査の推奨チェック項目(案)」を基にしている.胎児形態異常スクリーニングを行っていない施設でも比較的容易に開始できるよう項目を絞っている.
・レベル2: 日本産科婦人科学会発行の「産婦人科研修の必修知識」の2011年版と2013年版に掲載されている方法である.
・レベル2+α:レベル2に2項目を加えて,出生前診断が重要な疾患(この意味は,1.胎児形態異常スクリーニング総論を参照)の大半をカバーしている.
・レベル3:レベル2に加えて,さらに高度な項目を含めている.
 本書では,胎児発育異常,胎児付属物異常,切迫早産の各スクリーニング法の章も加えている.また,参考のため,胎児染色体異常のソフトマーカー,形態異常と誤解されやすい超音波像,超音波診断装置の調整法の章も付け加えた.
 本書の刊行にあたり,文光堂編集企画部の嵩恭子氏,清水俊哉氏には,企画の段階から大変お世話になり,刊行直前の最後の最後まで真摯に対応いただき,たいへん感謝している.
 本書が,出生前診断がなされずに分娩に臨み,不幸な転帰をとる児を一人でも減らすことに役立つならば幸いである.

2015年4月吉日
馬場 一憲
市塚 清健
1 胎児形態異常スクリーニング総論
 ■出生前診断の重要性 ■胎児超音波検査実施上の問題
 ■胎児形態異常スクリーニング検査の基本的考え方
 ■胎児形態異常と胎児染色体異常
 ▶胎児も患者さん
2 胎児形態異常スクリーニング実施上の留意点
 ■スクリーニングという概念をしっかり意識して検査を行うこと
 ■通常超音波検査と胎児形態異常スクリーニング超音波検査および胎児染色体異常
 リスク評価超音波検査と分けて考え行うこと
 ■スクリーニング至適時期を考慮に入れて行うこと
 ■もれがないようにチェックシートなどを活用して系統立てて行うこと
 ■適した超音波設定で行うこと
 ■適切な超音波画像を保存しておくこと
 ■妊婦の様子を考慮しながらスクリーニングを進めること
 ▶各チェック項目により発見に至る可能性のある主な疾患
3 [レベル1]基礎的スクリーニング法
 レベル1 スクリーニング 総論
 ■スクリーニングの時期
 ■スクリーニングの前に
 ■レベル1スクリーニングのチェック項目 
 ■スクリーニングの判定
 ▶超音波検査を行うための資格
 a.チェック項目の正常像とチェックのポイント
  1)全身
  ■浮腫はないか
  2)頭部
  ■BPD(児頭大横径)は妊娠週数相当か
  ■頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか
  ■頭蓋外に突出する異常像を認めないか
  3)胸部
  ■心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか
  ■左右心房心室の4つの腔が確認できるか
  ■胸腔内に異常な像を認めないか
  4)腹部
  ■胃胞が左側にあるか
  ■胃胞,膀胱,胆嚢以外に嚢胞像を認めないか
  ■腹壁(臍部)からの臓器脱出は認めないか
  5)背部・殿部
  ■異常な隆起を認めないか
  6)四肢
  ■十分な長さの四肢が確認できるか
  7)羊水
  ■羊水過多や過少は認めないか
 b.発見に至る可能性のある疾患
  1)全身
  ■浮腫はないか
  2)頭部
  ■BPD(児頭大横径)は妊娠週数相当か
  ■頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか
  ■頭蓋外に突出する異常像を認めないか
  3)胸部
  ■心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか
  ■左右心房心室の4つの腔が確認できるか
  ■胸腔内に異常な像を認めないか
  4)腹部
  ■胃胞が左側にあるか
  ■胃胞,膀胱,胆嚢以外に嚢胞像を認めないか
  ■腹壁(臍部)からの臓器脱出は認めないか
  5)背部・殿部
  ■異常な隆起を認めないか
  6)四肢
  ■十分な長さの四肢が確認できるか
  7)羊水
  ■羊水過多や過少は認めないか
 c.レベル1では発見に至る可能性が少ない疾患
  1)頭部
  ■BPD(児頭大横径)は妊娠週数相当か
  ■頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか 
  ■頭蓋外に突出する異常像を認めないか
  2)胸部
  ■‌心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか
  ■左右心房心室の4つの腔が確認できるか
  ■胸腔内に異常な像を認めないか
  3)腹部
  ■胃胞が左側にあるか
  ■胃胞,膀胱,胆嚢以外に嚢胞像を認めないか
  4)背部・殿部
  ■異常な隆起を認めないか
4 [レベル2]産婦人科専門医向けスクリーニング法
 レベル2 スクリーニング 総論
 ■妊娠10〜11週
 ■妊娠12〜15週
 ■妊娠18〜20週
 ▶3次元超音波とスクリーニング
 A.10〜11週 
 a.チェック項目の正常像とチェックのポイント
 ■胎児頭部が半球状で不整はないか
 ■四肢は4本確認できるか
 ■胎児全体が羊膜腔の中にあるか
 b.発見に至る可能性のある疾患
 ■胎児頭部が半球状で不整はないか
 ■四肢は4本確認できるか
 ■胎児全体が羊膜腔の中にあるか
 B.12〜15週 
 a.チェック項目の正常像とチェックのポイント
 ■頭部横断面で左右対称に脳や脈絡叢を認めるか 
 ■胸部横断面で拍動する心臓がやや左寄りに位置しているか
 ■腹壁外に突出した臓器を認めないか
 b.発見に至る可能性のある疾患
 ■頭部横断面で左右対称に脳や脈絡叢を認めるか 
 ■胸部横断面で拍動する心臓がやや左寄りに位置しているか
 ■腹壁外に突出した臓器を認めないか
 C.18〜20週
 a.チェック項目の正常像とチェックのポイント
 1)頭部
 ■BPD(児頭大横径)は妊娠週数相当か
 ■頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか
 ■頭蓋外に突出する異常像を認めないか
 2)上唇
 ■口唇裂はないか
 3)胸部
 ■心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか
 ■左右心房心室のバランスは良いか 
 ■胸腔内に異常な像を認めないか
 ■大動脈と肺動脈が螺旋状に走行しているか
 ■大動脈と肺動脈の太さはほぼ同じか
 4)腹部
 ■胃胞が左側にあるか
 ■胃胞,膀胱,胆嚢以外に嚢胞像を認めないか 
 ■腹壁(臍部)からの臓器脱出は認めないか
 5)脊柱・殿部
 ■椎体と棘突起が欠損なく並んでいるか
 ■異常な隆起を認めないか 
 6)四肢
 ■十分な長さの四肢が確認できるか
 7)羊水
 ■羊水過多や過少は認めないか
 b.発見に至る可能性のある疾患
 1)頭部
 ■BPD(児頭大横径)は妊娠週数相当か
 ■頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか
 ■頭蓋外に突出する異常像を認めないか 
 2)上唇
 ■口唇裂はないか
 3)胸部
 ■心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか
 ■左右心房心室のバランスは良いか
 ■胸腔内に異常な像を認めないか
 ■大動脈と肺動脈が螺旋状に走行しているか
 ■大動脈と肺動脈の太さはほぼ同じか
 4)腹部
 ■胃胞が左側にあるか
 ■胃胞,膀胱,胆囊以外に囊胞像を認めないか
 ■腹壁(臍部)からの臓器脱出は認めないか
 5)脊柱・殿部
 ■椎体と棘突起が欠損なく並んでいるか
 ■異常な隆起を認めないか
 6)四肢
 ■十分な長さの四肢が確認できるか
 7)羊水
 ■羊水過多や過少は認めないか
c.レベル2では発見に至る可能性が少ない疾患
 1)頭部
 ■BPD(児頭大横径)は妊娠週数相当か
 ■頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか
 ■頭蓋外に突出する異常像を認めないか 
 2)上唇
 ■口唇裂はないか
 3)胸部
 ■心臓の位置はほぼ正中で軸は左に寄っているか
 ■左右心房心室のバランスは良いか
 ■胸腔内に異常な像を認めないか
 ■大動脈と肺動脈が螺旋状に走行しているか
 ■大動脈と肺動脈の太さはほぼ同じか
 4)腹部
 ■胃胞,膀胱,胆嚢以外に嚢胞像を認めないか
 5)脊柱・殿部
 ■椎体と棘突起が欠損なく並んでいるか
5 レベル2+α
 1)胸部
 ■肺静脈が少なくとも1本は左心房に流入しているか
 ■大動脈を左心室から下行大動脈まで追えるか
6 [レベル3]少し高度なスクリーニング法
 a.チェック項目の正常像とチェックのポイント
 1)頭部
 ■透明中隔腔は存在するか
 ■大脳鎌は存在するか
 ■側脳室は正常か
 ■小脳は半球,虫部とも正常か
 ■大槽は存在し,拡大所見はないか
 ■脳溝は正常か
 2)胸部
 ■心室中隔は正常か
 ■肺静脈は左心房に流入しているか
 ■three─vessel view, three─vessel trachea viewは正常か
 ■大動脈弓は正常か
 ■SVC─RA─IVCは正常か
 ■静脈管は存在するか
 3)四肢
 ■overlapping finger(重積指)はないか
 ■手足関節に異常はないか
 ■手足指は5本あるか
b.発見に至る可能性のある疾患
 1)頭部
 ■透明中隔腔は存在するか
 ■大脳鎌は存在するか
 ■側脳室は正常か
 ■小脳は半球,虫部とも正常か
 ■大槽は存在し,拡大所見はないか
 ■脳溝は正常か
 2)胸部
 ■心室中隔は正常か
 ■肺静脈は左心房に流入しているか
 ■three─vessel view, three─vessel trachea viewは正常か
 ■大動脈弓は正常か
 ■SVC─RA─IVCは正常か
 ■静脈管は存在するか
 3)四肢
 ■overlapping finger(重積指)はないか
 ■手足関節に異常はないか
 ■手足指は5本あるか
7 胎児計測による胎児発育異常のスクリーニング法
 ■児頭大横径(BPD)計測法
 ■腹囲(AC)計測法
 ■大腿骨長(FL)計測法
 ■胎児頭殿長(CRL)計測法
 ■胎児発育不全(fetal growth restriction;FGR)の診断
8 胎児付属物異常のスクリーニング法
 a.チェック項目の正常像とチェックのポイント
 1)胎盤
 ■胎盤付着部位は正常か
 ■胎盤実質に異常はないか
 ■胎盤後血腫・絨毛膜下血腫はないか
 2)臍帯
 ■臍帯付着部位は正常か
 ■臍帯血管数は正常か
 ■臍帯捻転は正常か
 ■臍帯の位置は正常か
 b.発見に至る可能性のある疾患
 1)胎盤
 ■胎盤付着部位は正常か
 ■胎盤実質に異常はないか
 ■胎盤後血腫はないか
 2)臍帯
 ■臍帯付着部位は正常か
 ■臍帯血管数は正常か
 ■臍帯捻転は正常か
 ■臍帯の位置は正常か
9 切迫早産のスクリーニング法
 ■子宮頸部の妊娠経過に伴う変化
 ■正しい子宮頸部の計測法
 ■早産予知
10 妊娠初期・中期の胎児染色体異常のソフトマーカー
 ■マーカーによる染色体異常のリスク推定(スクリーニング)
 ■初期の超音波マーカー
 ■nuchal translucency(NT)
 ■nasal bone(鼻骨)
 ■facial angle
 ■tricuspid flow(三尖弁血流)
 ■ductus venosus(静脈管)
 ■fetal heart rate
 ■中期の超音波マーカー
11 通常超音波検査で形態異常と誤解されやすい超音波像
 ■発生学に関する知識不足
 ■不適切な断面
12 よりよい画像を描出するためのコツ
 ■ブライトネスとコントラスト
 ■深度
 ■ズーム(拡大)
 ■深さごとのゲイン
 ■全体のゲイン
 ■フォーカス
 ■走査角
 ■周波数
 ■ハーモニックイメージング
 ▶ポケットサイズの超音波診断装置
索引