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肺腫瘍病理の診断に必須の形態学的特徴と鑑別診断を押さえた座右の書!

腫瘍病理鑑別診断アトラス

肺癌第2版

カバー写真
  • 編集:谷田部恭(国立がん中央病院科長)
  • 編集 野口雅之(成田富里徳洲会病院部長)
  • 監修:腫瘍病理鑑別診断アトラス刊行委員会
  • 編集協力:日本病理学会
  • B5変型判・368頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2261-8
  • 2022年11月4日発行
定価 18,700 円 (本体 17,000円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

腫瘍病理鑑別診断シリーズ「肺癌」,待望の第2版.2021年にはWHO分類第5版が発行されたほか,分子標的治療や免疫チェックポイント阻害薬の導入など,当該領域を取り巻く環境は日々変化している.そうした状況を踏まえて,肺腫瘍病理のエキスパートが精選した病理写真とともに,定義や概念,診断上の要点を解説.病理診断に必須の形態学的特徴を理解しつつ,鑑別ポイントをも網羅.さらに臨床との連携では欠かせないX線所見のみかたや治療法も解説した.
第2版の序

 これまで,肺癌病理アトラスとしては,下里幸雄先生がまとめられた「腫瘍鑑別診断アトラス 肺」(1996年)と,日本病理学会の編集協力を得て臓器横断的に作成された「腫瘍病理鑑別診断アトラス 肺癌」(2014年)が刊行されてきた.前者はWHO分類第2版(1981年)に準じて記載されている一方,後者は同年に発表されたIASLC/ATS ERS腺癌分類に基づき,まだ出版されていないWHO分類第4版(2015年)を先取りした記載となっている.この後,WHO分類第4版が発表されたうえ,それがマイナーチェンジされたWHO分類第5版(2021年)が発刊されるとともに,肺癌取扱い規約第8版の病理の項目も「WHO第5版に基づく胸部腫瘍組織分類」に合わせて改訂された(2021年).これを機会に,今回「腫瘍病理鑑別診断アトラス 肺癌」も第2版に改められることになった.
 2014年の第1版からはWHO分類の変遷のほか,治療法の変化,特に分子標的治療,免疫チェックポイント阻害薬の導入により肺癌治療は大きく変わるとともに,現在も変遷し続けている.また,遺伝子検査,がんゲノム医療の導入により,検体を正しく固定する必要性が強調されるようになるほか,このような臨床的な変化に合わせて肺癌組織型同定に免疫組織化学染色が必要となる腫瘍や遺伝子異常に規定される疾患単位も登場している.例えば,充実性増殖をした非小細胞癌ではTTF-1陽性所見によって充実型肺腺癌と診断されるに至り,NUT癌は扁平上皮への分化があってもBRD4-NUT 融合遺伝子の存在によって定義される.しかしながら,診断の基礎は形態学にあり,組織学的分類は肺癌診断や患者マネージメントの礎となる.正しく腫瘍の形態学的特徴が把握されなければこれら補助診断は意味を持たず,むしろ迷走を始めるきっかけとなる.特に生検組織は採取された腫瘍の一部であり,アーチファクトによる組織像の変化も少なくない.そのために,形態を主軸とし,それぞれの疾患概念を適切に理解し,最終的な診断に至る組織学的な解釈の仕方に力を注ぐことにした.
 今回の第2版発行にあたり,本邦の肺腫瘍病理専門医の総力を挙げて執筆をお願いした.このアトラスで肺癌病理診断の標準化を図りつつ,臨床との連携にも配慮した実用的なレファレンスブックとすることを試みた.診断の場において役立てていただければ幸いである.

 令和4年9月
 谷田部 恭
 野口 雅之


 この「腫瘍病理鑑別診断アトラスシリーズ」は日本病理学会の編集協力のもと,刊行委員会を設置し,本シリーズが日本の病理学の標準的なガイドラインとなるよう,各巻ごとの編集者選定をはじめ取りまとめを行っています.

 腫瘍病理鑑別診断アトラス刊行委員会
 小田義直,坂元亨宇,都築豊徳,深山正久,松野吉宏,森谷卓也
第1部 検鏡前の確認事項
 Ⅰ.肺癌総論
  1.肺の構造,組織
  2.肺癌の分子生物学
  3.肺癌のTNM分類と取扱い規約
 Ⅱ.病理標本の扱い方
  1.生検材料(経気管支,CTガイド下,cryobiosy)の取扱い
  2.細胞診検体の取扱い
  3.手術材料の取扱い(VATSを含む)

第2部 組織型と診断の実際
 Ⅰ.上皮性腫瘍
 A.良性腫瘍
  1.乳頭腫(扁平上皮,腺上皮,扁平上皮腺上皮混合型)
  2.腺腫(肺胞腺腫,乳頭腺腫,唾液腺型腺腫,粘液囊胞腺腫)
  3.硬化性肺胞上皮腫
  4.気管支腺腫・CMPT
 B.悪性腫瘍
  1.前浸潤性病変
  (1)扁平上皮異形成,上皮内(扁平上皮)癌
  (2)異型腺腫様過形成,上皮内腺癌
 (3)びまん性特発性肺神経内分泌細胞過形成
  2.扁平上皮癌
  (1)扁平上皮癌(角化型,非角化型,類基底細胞型)
  (2)リンパ上皮腫様癌
  3.腺癌
  (1)微少浸潤性腺癌
  (2)浸潤性腺癌
  (3)特殊性浸潤性腺癌
    a.浸潤性粘液性腺癌
    b.コロイド腺癌
    c.胎児型腺癌(低,高悪性度)
    d.腸型腺癌
  4.大細胞癌
  5.腺扁平上皮癌
  6.肉腫様癌
  (1)多型癌,癌肉腫
  (2)肺芽腫
  7.神経内分泌腫瘍
  (1)カルチノイド
  (2)大細胞神経内分泌癌
  (3)小細胞癌
  8.唾液腺型癌
  (1)唾液腺型腫瘍(粘表皮癌,腺様囊胞癌)
  (2)稀な唾液腺型癌
  9.その他の上皮性腫瘍
  (1)NUT癌
  (2)胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍
 Ⅱ.非上皮性腫瘍
 A.軟部組織腫瘍
  1.肺過誤腫,肺軟骨腫,びまん性肺リンパ管腫症
  2.胸膜肺芽腫,血管内膜肉腫,先天性気管支周囲筋線維芽細胞腫,原発性肺粘液性肉腫
  3.PEComatous腫瘍(LAM,PEComa)
  4.炎症性筋線維芽細胞腫瘍,デスモイド線維腫症,孤立性線維性腫瘍,石灰化線維性腫瘍
  5.類上皮血管内皮腫,血管腫,脂肪肉腫
  6.滑膜肉腫,小円形細胞肉腫
 Ⅲ.リンパ組織増殖性疾患
  1.MALTリンパ腫
  2.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,血管内大細胞型B細胞リンパ腫
  3.リンパ腫様肉芽腫症,節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型
  4.組織球性腫瘍(PLCH,ECD)
 Ⅳ.転移性肺腫瘍
  1.悪性腫瘍の転移
  2.良性腫瘍の転移(平滑筋腫,多型腺腫,脊索腫)
 Ⅴ.腫瘍様病変
  1.多発性増殖性病変(テューモレット,微小肺髄膜細胞様結節,多巣性小結節性肺胞上皮過形成)
  2.炎症性疾患(IgG4関連肺疾患,限局性器質化肺炎,気管支炎症性ポリープ)
  3.感染症(抗酸菌症,真菌症,寄生虫症)
  4.その他(アミロイドーシス,子宮内膜症,肺分画症,肺動静脈瘻/肺動静脈奇形,硝子化肉芽腫,サルコイドーシス
 Ⅵ.家族性腫瘍(Carney triad,生殖細胞系列EGFR/HER2 変異)

第3部 鑑別ポイント
 Ⅰ.腺癌浸潤径測定の実際
 Ⅱ.迅速診断の評価
 Ⅲ.低分化な癌の免疫染色評価
 Ⅳ.胸膜中皮腫との鑑別
 Ⅴ.生検評価の注意点

第4部 臨床との連携
 Ⅰ.術前診断:画像所見
 Ⅱ.術前・術中細胞診
 Ⅲ.治療
  1.肺癌治療総論(外科)
  2.肺癌治療総論(内科・化学療法)
  3.分子標的治療
  4.免疫チェックポイント阻害薬治療
 Ⅳ.病理診断報告書の記載
  1.生検検体
  2.手術検体
  3.治療効果判定

索引