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“合理的”な意思決定はなぜ難しい? 行動経済学を知ればIBD診療はもっと面白くなる!

近刊〔予約商品〕

行動経済学がIBD診療を変える

「最適」な治療選択へ導く「最強」戦術

カバー写真
  • 著:北畑翔吾
  • A5判・208頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-2129-1
  • 2026年10月28日発行予定
定価 4,950 円 (本体 4,500円 + 税10%)
なし
在庫

内容

序文

主要目次

IBD(炎症性腸疾患)診療で最後に向き合うのは「人」だ――.医学的に最適と思われる治療を勧めても患者さんが首を縦に振らないのはなぜ? その答えを行動経済学で紐解きます.患者さんの認知バイアスに対し,対話のテクニックや意思決定をサポートする問診票,個別化治療へのアプローチなど,真に「最適」な治療選択へ導く「最強」戦術を詳しく紹介.どうすれば患者さんの不安を理解し,ともに意思決定できるのか.迷える医療者の羅針盤となる一冊です.
序文

 ――あなたは,自分が合理的な意思決定をしていると思いますか.

 IBD診療は,不思議な診療です.内視鏡をみて,血液データを確認し,治療指針を読み,最新のエビデンスを学ぶ.それでも最後に向き合うのは,「人」です.医学的には最適と思える治療を勧めても,患者さんは首を縦に振らない.反対に,医学的には勧めにくい選択を強く希望されることもあります.私は長い間,その理由を「価値観」や「性格」の一言で片付けていました.ところが,診療を重ねるほど,それだけでは説明できない場面に何度も出会いました.
 そして迷っているのは患者さんだけではありません.
 私たち医療者もまた,知らないうちに感情や思い込み,その場の状況に影響を受けながら判断をしています.人は,自分が思っているほど合理的には意思決定していないのです.そのことを教えてくれたのが,行動経済学でした.行動経済学というと,マーケティングや経済の学問という印象を持たれるかもしれません.しかし,その本質は「人はどのように意思決定するのか」を理解する学問です.私はこれを知ったとき,「これはIBD診療そのものではないか」と感じました.
 IBD診療は,治療薬を選ぶだけではありません.患者さんの不安を理解し,迷いを整理し,ともに意思決定することが求められます.つまり,エビデンスだけでは完結しません.人を理解する視点が必要なのです.
 本書は,行動経済学を専門的に学ぶための本ではありません.明日の外来で「あ,これだったのか」と思える瞬間を増やし,IBD診療をもっと面白く,もっと納得できるものにするための本です.
 患者さんの行動が少し理解できる.
 自分自身の診療にも新しい視点が加わる.
 そして,治療選択という難しい時間が,今までより少し楽しくなる.
 そんな一冊になれば,この上ない喜びです.

 患者さんが「先生と一緒に選べてよかった」と思える診療を増やしたい,と本気で思っています.そして本書が,同じ思いを抱えながら診療に向き合う方々の支えになれば幸いです.

 さて,最初の質問に戻ります.
 ――あなたは,自分が合理的な意思決定をしていると思いますか.

 北畑翔吾
Chapter 0 プロローグ
 バイアスまみれの診察室/活字アレルギーでも読める行動経済学

Chapter 1 なぜ行動経済学がIBD診療で役に立つ? SDMの実現手段としての行動経済学
 人は合理的? ……いいえ, “なんとなく” で生きています/なぜ行動経済学がIBD診療に必要なのか/SDMの実現手段としての行動経済学

Chapter 2 知っておきたい! IBD診療の現場でよく遭遇する認知バイアス
 認知バイアスは起こり得るもの/FAST & SLOW/Column 医療統計におけるバイアス/なぜ人は変われないのか/損失を避けたいという思いが事実をゆがませる/Column 行動しなければ世界は変わらない/Column プロスペクト理論/2次無効になってもしがみつく たとえ新規薬剤があっても/Column バイアスにも上下関係がある!?/ネットやSNSは医療者の最大のライバル/見たい世界しか見えない/Column 確証バイアスは未曾有の危機に出現しやすい/ “いつかやる” は “永遠にやらない” の親戚/Column 臨床研究の“集計したくない症候群”の治療/陥っているバイアスの見分け方/Column ディアゴスティーニは行動経済学の教科書的存在/「自由に選んでください」がいちばん難しい/ Column スティーブ・ジョブズはなぜ服を選ばなかったのか/見えざる枷(かせ)/自己注射の提案で,最初に言わないようにしている一言/飲み薬は安全? 点滴は危険?/ Column 学会発表で緊張しない方法/Column ビッグマウス/白衣のポケットに潜むバイアス/利用可能性ヒューリスティック/現状維持バイアス/アンカリング/Column 良い認知バイアス
 
Chapter 3 明日からの診察で活きる! 患者説明・対話で使えるテクニック
 人は “理屈” だけでは動かない──だからこそできる支援がある/医療におけるナッジとは?/それ,本当にナッジですか?/Column 本来のナッジの意味/初期設定という見えない選択/Column 使えるお金の初期設定/「全て説明する」は本当に患者さんのためか/聞こうとしても聞けない現実/まだ言語化されていないだけ/患者の価値観を可視化する選択アーキテクチャ型問診票/成功の方法は数多あるが,失敗の方法は決まっている/治療選択は “未来の話” では決められない/ “どこで書くか” までが治療設計/Column まだまだある選択アーキテクチャ型問診票の魅力/Column 実は2代目選択アーキテクチャ型問診票/伝え方がAdvanced Therapy導入を左右する/Column 車のセールストーク/同じ事実でも,言葉の枠組みで決断が変わる/Advanced Therapyをやめたい/将来やめられますか? という質問へのリフレーミング/Column 行動経済学からみた白衣高血圧/見慣れていることが安心につながる/患者さんにとって最も身近な医療情報源は誰か/ “みんなやってます” の使い方/Column どうにもならないケースもある/ナッジをするための “仕掛け” の作り方/関係性そのものをナッジする/Column IBD診療のちょっとしたコツ/患者さんとの対話の時間を作るために/患者心理をつかんで治療をスムーズに進めるコツ

Chapter 4 治療選択の「ズレ」を防ぐ! 個別化治療を導くCOVE approach
 「COVE approach」

Extra Chapter 絶対に身につけたいIBD診療スターターキット
 治療フローチャート/直腸炎型フローチャート/左側大腸炎型・全大腸炎型フローチャート/5-ASA/5-ASA不耐/服薬アドヒアランス/5-ASA不溶性/PSL/Advanced Therapy

Final Chapter エピローグ

あとがき
索引