臨床や競技現場の「なぜ?」が,論文になる.学生とセラピストための,迷わない研究プロセス
新刊はじめての研究・論文作成 THE教科書
内容
序文
主要目次
本書を手に取ってくださり,ありがとうございます.このページを開いているあなたは,論文を書くことや研究に,少なからず関心をもっている方なのではないでしょうか.今まさに初めて研究・論文作成に向き合おうとしている方,あるいは,卒業論文や修士論文,日々の臨床活動などをきっかけに,向き合わざるを得なくなった方もいるかもしれません.
私たちも大学院時代,よくわからないまま,初めて研究・論文作成に取り組むことになったのを覚えています.
修士課程における私たちの日々は,疑問と試行錯誤の連続でした.研究テーマをどう決めればよいのか.どのような研究デザインを選べばよいのか.集めたデータをどう整理し,どの統計解析を使えばよいのか.そして,その結果をどう論文としてまとめればよいのか.その一つひとつが難解に感じられ,論文を書き上げることなど,遠い世界の話のように思えていました.
その後,なんとか論文を書き上げ,修士課程を終えた私たちは,スポーツ現場でアスリートに関わったり,医療現場で患者さんをケアしたりしながら,研究を続けてきました.一方で,大学で学生に研究や論文作成について講義するなど,教育にも携わるようになりました.
そうしたスポーツ・臨床・教育の現場で多くの方と接する中で気づいたことがあります.それは,研究を始めたばかりの臨床家や学生の多くが,かつての私たちと同じところで迷い,同じような不安を抱えているということです.
「研究テーマはどうやって決めるの?」
「統計解析は何を選べばいいの?」
「論文って,そもそもどこから書けばいいの?」
研究を始めると,次々に新しい疑問が出てきます.しかし,振り返ってみれば,その多くには一定の「考え方」や「進め方」の型があります.それを最初から知っていれば,私たち自身も,もう少し迷わず研究を進められたのではないかと思います.
だからこそ本書では,難しい知識を網羅することよりも,「まず何を考え,次に何をすればよいのか」が初学者にも見えることを大切にしました.日頃の疑問の拾い上げ方,研究の方針の考え方,データの集め方,分析の選び方,そして論文のまとめ方までを,1つの流れとして解説していきます.
そして,この考え方を本書のタイトルにも込めました.
本書のタイトルは,『はじめての研究・論文作成 THE教科書』です.「THE」には,「研究・論文作成を始めるとき,まず手に取れる一冊にしたい」という思いとともに,研究を進めるうえで大切にしてほしい3つの言葉を込めています.
●Think―考える
現場で感じた「なぜ?」「本当にそうなの?」を拾い上げ,自分が本当に知りたい問いを考える.
●Hypothesize―仮説を立てる
これまでにわかっていることを調べ,その問いに対する仮説を立て,検証できる研究の形へと落とし込む.
●Evidence―知見として残す
集めたデータを適切に分析し,得られた結果を論文として残し,次の臨床や研究へつなげる.
研究は,最初から完璧な知識をもった人だけが行うものではありません.考え,仮説を立て,確かめ,その結果を知見として残す.この一連のプロセスを,一歩ずつ進めていく営みです.
本書では,かつての私たちと同じように研究・論文作成に不安を抱えている方が,「次に何をすればよいのかわかった」と思えるよう,できるだけ実践的にポイントを整理しました.
本書が皆さんにとって,自分自身の「なぜ?」を研究として形にし,論文としてまとめ上げるための一助となれば幸いです.
2026年10月
前道俊宏・筒井俊春
キャリアの定義/AI時代だからこそ,論文を書く意義がある/研究生活の思い出――研究の始まり/論文は「専門家としての名刺」/書く力=伝える力=キャリア形成力/ 現場で生きる “科学的判断力” /「書くこと」が患者・選手を支える
2章 その疑問が “研究テーマ” になる―臨床の疑問を研究にする発想法―
研究生活の思い出――研究テーマへの期待/研究の全体像と構成/クリニカルクエスチョンとリサーチクエスチョン/クリニカルクエスチョンの代表的な型/クリニカルクエスチョンをリサーチクエスチョンに変換する/3つのキーワードでリサーチクエスチョンを整理しよう/「既存の知見」の調べ方/ICO/PECOとは?/PICO/PECOを用いて,リサーチクエスチョンの骨格を作成しよう/FINERの原則をもとに,研究の意義を考えよう
3章 デザインを制する者が研究を制す―バイアスとエビデンスを味方につける―
研究生活の思い出――研究デザインに悩む/研究デザインとは何か――問いを “研究” に変える作業/研究デザインは好みで選ばない/研究は段階的に積み上げるもの/研究デザインの第一分岐点:質的研究か,量的研究か/「腰痛」をテーマにした研究を考えてみよう/「競泳」をテーマにした研究を考えてみよう/量的研究で注意すべきこと/研究デザインの第二分岐点:「何を明らかにしたいのか」から選ぶ/量的研究デザインの整理/研究の段階ごとに適切な研究デザインは変わる/各研究デザインの特徴――「できること」「できないこと」/バイアスを理解する――研究の信頼性を左右するもの/エビデンスレベルを理解する――研究の信頼性の階層/研究デザイン選択の実践フローチャート
4章 データが語る真実を見抜こう―収集・整理・統計解析を現場目線で考える―
研究生活の思い出――統計解析は敵か/データを収集しよう①:測定項目を決める/データを収集しよう②:例題で考える/データを収集しよう③:データの記録/データを収集しよう④:精度を上げるポイント/データを整理しよう/データを「見える化」で確認しよう/統計手法を選択しよう①:4つの問いの活用/統計手法を選択しよう②:マトリクスの活用
5章 論文作成はIMRADで攻略!―構成の鉄則を “型” で身につける―
研究生活の思い出――論文作成との格闘/IMRADの構造/Introduction――研究の背景と目的を示す/Methods――研究目的を達成するための方法/Methodsの基本構造/Methodsのポイント/Results――図表作成とデータ解釈/Resultsの基本構造/Discussion――結果の意味を考える/論文全体の構造を意識する
6章 英語論文で世界に挑もう―評価される英文の書き方―
研究生活の思い出――英語論文の壁/英語論文の本質/英語論文は「翻訳」ではなく「再構築」/英語論文においてIMRADを書く順番/IMRADにおける英語テンプレート/英語論文の「作法」/投稿先ジャーナルの決め方/英文校正サービス・翻訳会社の活用/投稿前の最終確認
7章 査読は “壁” ではなく “チャンス” だ―査読への対応からアクセプトまで―
研究生活の思い出――アクセプトかリジェクトか/投稿から結果が届くまで――査読プロセスの全体像/査読コメントが届いたら――対応の心得/リバイスを作成しよう――査読者への返答の型/査読者への返答に使える表現集/リジェクトされたら――次のアクションを考える/アクセプトされると?――掲載まであと少し!/アクセプトの先にあるもの
8章 論文がキャリアを変える―発信する人がチャンスをつかむ時代へ―
研究生活の思い出――アクセプト通知の後で/学会発表と研究ネットワークの形成/研究活動を継続的に行うコツ/継続するための3つの工夫/臨床と研究の相互作用/論文作成が拓く新しいキャリアの可能性/AIが進化する時代だからこそ/まずは1本書いてみよう
索引