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古典的組織分類から分子遺伝学的分類へ中枢神経系腫瘍分類の新時代への幕開け

腫瘍病理鑑別診断アトラス  

脳腫瘍

カバー写真
  • 編集:小森隆司(東京都立神経病院部長)
  •     廣瀬隆則(兵庫県立がんセンター部長・神戸大学特命教授)
  • B5変型判・264頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2252-6
  • 2017年6月発行
定価 17,280 円 (本体 16,000円 + 税)
あり
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内容

序文

主要目次

脳腫瘍の病理診断が難しい要因の一つとして,組織・免疫・遺伝学的所見が必ずしも腫瘍型に特異的ではないことが挙げられる.それを補うために,形態情報に加えて,臨床,画像,遺伝子情報を統合的に判断するintegrated diagnosisが提唱されている.臨床画像情報から候補となる腫瘍を思い浮かべつつHE標本を鏡検し,必要な免疫組織化学染色と遺伝学的検査を選択する診断の流れを学ぶ.

序文

 脳腫瘍の組織像や悪性度は年齢や部位に強く依存することが古くから知られてきた.近年,その背景に特徴的な遺伝学的異常が存在することが明らかとなり,また,そうした異常が従来の組織分類よりも予後や治療反応性とよく相関し,診断精度の向上に寄与しうることが認識されてきた.
 中枢神経系腫瘍のWHO(World Health Organization)分類は1979年の初版以来,診断技術の進歩と共に改訂を重ね,2016年のWHO分類(第4 版改訂版)では神経膠腫と胎児性腫瘍の分類は形態学に基礎を置く古典的組織分類から分子遺伝学的分類に大きく舵を切った.これは約90年間にわたり分類の中核となっていた中枢神経組織の分化樹に従った組織発生分類を放棄することを意味し,まさにパラダイムシフトと言えよう.
 本書では,第1部で2016年WHO分類の要点とその基礎である脳腫瘍の遺伝学的異常を解説
し,さらに診断に欠くことのできない画像所見と検体の取扱いを取り上げた.第2部では主要な腫瘍型につき,第一線で活躍している脳腫瘍を専門とする病理医に診断のポイントを解説していただいた.第3部で術中迅速診断と細胞診,また分子分類に則した免疫染色の応用,さらに脳腫瘍と鑑別を要する非腫瘍性病変を取り上げた.第4部では病理診断にあたっての脳外科から病理への要望事項,治療に伴う病理所見の解釈と報告書の記載法について解説した.
 脳腫瘍の病理診断が難しい要因の一つとして,組織・免疫・遺伝学的所見が必ずしも腫瘍型に特異的ではないことが挙げられる.それを補うために,形態情報に加えて,臨床,画像,遺伝子情報を統合的に判断するintegrated diagnosisが提唱されている.臨床画像情報から候補となる腫瘍を思い浮かべつつHE 標本を鏡検し,必要な免疫組織化学染色と遺伝学的検査を選択する診断の流れを汲み取っていただければ幸いである.

平成29年6月
小森 隆司
廣瀬 隆則

第1部 検鏡前の確認事項
I.脳腫瘍組織分類の現状
 1.WHO中枢神経系腫瘍分類改訂の概要
 2.びまん性星細胞系および乏突起膠細胞系腫瘍
 3.その他の星細胞系腫瘍
 4.上衣系腫瘍
 5.神経細胞性および混合神経細胞─膠細胞系腫瘍
 6.胎児性腫瘍
 7.神経鞘腫瘍
 8.髄膜腫
 9.間葉系腫瘍
 10.リンパ腫と組織球性腫瘍
II.脳腫瘍の画像診断
 1.知っておくべき放射線学的診断法
 2.診断に大きく影響を与える代表的な画像所見
III.病理検体の取扱い
 1.検体を扱う前に:病理診断依頼書で確認する事項
 2.術中迅速診断等の小検体の取扱い
 3.切除材料の取扱い
IV.脳腫瘍の分子遺伝学
 1.脳腫瘍における遺伝子異常の全体像
 2.遺伝子プロファイルに基づく治療戦略
 3.脳腫瘍におけるクリニカルシーケンスの実際
第2部 組織型と診断の実際
I.浸潤性星細胞腫と乏突起膠腫
 1.IDH変異型・浸潤性星細胞腫
  1.浸潤性星細胞腫の診断
  2.びまん性星細胞腫・IDH変異
  3.退形成性星細胞腫・IDH変異
  4.膠芽腫・IDH変異
 2.IDH野生型・膠芽腫
 3.膠芽腫の亜型
  1.巨細胞膠芽腫
  2.膠肉腫
  3.類上皮膠芽腫
  4.特徴的な組織形態を呈する膠芽腫
 4.IDH変異・1p/19q共欠失乏突起膠腫
 5.小児の浸潤性神経膠腫
II.その他の星細胞腫と上衣細胞系腫瘍
 1.限局性星細胞腫
  1.毛様細胞性星細胞腫
  2.毛様類粘液性星細胞腫
  3.多形黄色星細胞腫
  4.退形成性多形黄色星細胞腫
 2.上衣系腫瘍,脈絡叢腫瘍
  1.上衣系腫瘍
  2.上衣分化を示すその他の神経膠腫
  3.脈絡叢腫瘍
III.神経細胞系腫瘍と胎児性腫瘍
 1.神経細胞系腫瘍
  1.胚芽異形成性神経上皮腫瘍
  2.神経節細胞腫,神経節膠腫,退形成性神経節膠腫
  3.異形成性小脳神経節細胞腫
  4.線維形成性乳児星細胞腫・神経節膠腫
  5.乳頭状グリア神経細胞腫瘍
  6.ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍
  7.びまん髄膜性グリア神経細胞腫瘍
  8.中枢性神経細胞腫,脳室外神経細胞腫
  9.小脳脂肪神経細胞腫
  10.傍神経節腫
 2.松果体部腫瘍
  1.松果体細胞腫
  2.中間型松果体実質腫瘍
  3.松果体芽腫
  4.松果体部乳頭状腫瘍
 3.胎児性腫瘍
  1.髄芽腫
  2.多層性ロゼットを有する胎児性腫瘍,C19MC異状
  3.非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍
  4.その他の胎児性腫瘍
IV.間葉系腫瘍
 1.髄膜腫
  1.WHO GradeIの髄膜腫
  2.WHO GradeIIの髄膜腫
  3.WHO GradeIIIの髄膜腫
  4.塞栓術に伴う壊死およびそれに起因するMIB-1陽性率の偽陽性的な高値所見に
    ついて
 2.末梢神経腫瘍
  1.Schwann細胞腫
  2.神経線維腫
  3.悪性末梢神経鞘腫瘍
 3.その他の間葉系腫瘍
  1.孤立性線維性腫瘍・血管周皮腫
  2.血管芽腫
  3.脊索腫
  4.脂肪腫
  5.血管腫
  6.その他の肉腫
  7.その他の良性間葉系腫瘍
V.その他の腫瘍
 1.血液系腫瘍
  1.造血器系腫瘍
  2.組織球性腫瘍
 2.胚細胞性腫瘍
第3部 鑑別ポイント
I.術中迅速診断・細胞診
 1.術中迅速診断の留意点
 2.術中迅速診断の目的
 3.凍結組織標本で注意すべき人工産物(アーチファクト)
 4.迅速診断のポイント
II.免疫組織化学の実際
III.腫瘍と鑑別を要する非腫瘍性病変
 1.非特異的反応性変化
 2.放射線治療後の変化─偽増悪と遅発性放射線壊死─
 3.感染症
 4.炎症性脱髄性疾患
 5.血管炎
 6.脳血管障害
第4部 臨床との連携
I.脳腫瘍の臨床診断と病理情報
  −脳神経外科医から病理診断医への9つのメッセージ−
 1.病理診断を待っています
 2.頭部MR入門
 3.迅速診断での注意1─BCNU wafer留置─
 4.迅速診断での注意2─必要要件を満たした返事で十分─
 5.迅速診断での注意3─定位生検・内視鏡診断─
 6.転移性脳腫瘍─re-biopsy部位としての脳実質
 7.成人大脳半球初発膠芽腫の治療
 8.高齢者の膠芽腫治療
 9.中枢神経系悪性リンパ腫
II.組織学的治療効果判定
III.病理診断報告書の記載法
索引