TOPページへ

これでもう胎盤病理は怖くない.全ての病理医のための胎盤アトラス!

新刊

胎盤病理アトラス

  • 編集:南口早智子(京都大学准教授)
  • 編集 佐藤勇一郎(宮崎大学准教授)
  • B5変型判・196頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-0484-3
  • 2021年10月5日発行
定価 11,000 円 (本体 10,000円 + 税10%)
あり
在庫

内容

序文

主要目次

近年,高齢・ハイリスク出産の増加や妊産婦・胎児死亡に関連した社会的要請から,胎盤病理診断の機会が増えている.本書は,正常構造や切り出しのポイント,臨床との関わりなど基本的知識を整理したうえで,各疾患の臨床・肉眼・組織所見と鑑別診断を豊富な写真・図表を用いて解説.胎盤病理に苦手意識を持つ人も手に取りやすい内容とした.また「知っていますか?」のコーナーでは稀だが知っておきたい症例を紹介.さらに巻頭には特に重要な肉眼像を集めて掲載し,巻末には診断の目安となる胎盤重量などの基準値データも収録.胎盤病理の理解を深め,日常診断に長く役立つ内容で,あなたの心強い味方となってくれる一冊.

序文

 胎盤は胎児と母体をつなぐ重要な臓器ですが,胎盤の病理診断は限られた専門施設で経験するものであり,一般的に病理診断の機会は少ない領域でした.しかし近年,ハイリスク妊娠の増加,画像を含めた周産期医療の進歩,医療安全に関わる諸問題により,周産期センターを抱える比較的大規模の病院だけでなく,検査センターにも一般開業医から胎盤が病理検査に提出される機会が増えてきています.しかし,多くの病理医から,「胎盤は何を書いたら良いのかわからない」という声をよく聞きます.
 癌の診断と異なり,胎盤の病理診断に関しては,絨毛性疾患を除いては,癌取扱い規約のような報告様式がありません.参考となる教科書やアトラスは少なく,日本語の胎盤病理専門書も限られています.胎盤病理は,教育を受ける機会も決して多くなく,苦労して色々調べて診断しても出産はすでに終わっており,治療方針に関わることも少なく,病理診断の臨床的意義は非常にわかりにくい側面があります.結果として胎盤診断は,興味がなければ,“お荷物扱い”であることは否めません.
 一方,月刊誌「病理と臨床」では,2007年,2014年に周産期胎盤の病理が特集され,さらに2019年9月号,10月号において,「胎盤病理診断 基礎編・応用編」という形で,多くの先生方にご協力いただき,特集号を発刊することができました.国際的には2016年にAmsterdam Placental Workshop Group Consensus Statementとして胎盤病理診断の用語,定義の統一などが決定され,胎盤病理診断の“標準化”の動きが出てきており,診断病理分野としての胎盤病理診断も徐々に変わってきている事実があります.
 今回,このような流れを受けて,病理医のための胎盤アトラス作成を企画することになりました.本書では,一般病理医に向けて,絨毛性疾患を含む,胎盤を診断する場合の基本的な知識,また診断におけるポイントをわかりやすく解説し,実際の胎盤病理診断に役立つことを目的として,胎盤病理に造詣の深い先生方に執筆をお願いいたしました.執筆者の先生方のおかげで,写真や図を多く取り入れたわかりやすい内容になっております.
 その執筆者の中で,日本の胎盤病理診断の第一人者であられた中山雅弘先生が,去る2021年8月20日に逝去されました.私たちは,中山先生のご講演や執筆された論文,書籍などで胎盤病理を勉強させていただきました.本書にも大変素晴らしい内容をご寄稿いただきました.もっと色々とご教示いただきたいことがあったのに残念でなりません.本書を一緒に作らせていただけたこと,今までの中山先生の胎盤病理へのご貢献に対し深謝するとともに,ご冥福をお祈りいたします.
 胎盤病理は他の領域と異なり,新たな知見による内容や診断定義の変化が頻回にある領域ではありません.一般病理医が,この先10年以上,日常診断に使える胎盤の本を作ることを目標といたしました.手にとっていただいた病理の先生方,また産科の先生方の日常診療,診断において長くお役に立てることを祈っております.
 最後になりますが,“編集”という仕事が初めてだった私たちと共に本書の企画,作成を担当していただいた文光堂の佐藤真二氏,松本夏美氏に厚くお礼申し上げます.

令和3年10月
南口早智子
佐藤勇一郎

巻頭 胎盤マクロ診断

総論 胎盤病理の基礎知識
 Ⅰ.胎盤病理に必要な臨床情報と胎盤病理の意義
 Ⅱ.臨床からみた胎盤病理の意義と画像所見
  1. 胎盤の超音波画像
  2. 胎盤のMRI像
 Ⅲ.胎盤の発生と正常構造
 Ⅳ.肉眼所見と切り出しのポイント

各論 胎盤病理診断の実際
 Ⅰ.流産と絨毛性疾患
  1. 流産
  2. 胞状奇胎
  3. 胞状奇胎の補助診断法(STR多型解析・染色体分析・FISH法)
   [知っていますか?❶ 異所性妊娠(卵管妊娠)]
   [知っていますか?❷ 異所性脱落膜変化]
 Ⅱ.母体合併症と胎盤循環障害
  1. 妊娠高血圧症候群,全身性エリテマトーデス/抗リン脂質抗体症候群
  2. 常位胎盤早期剝離
  3. 妊娠糖尿病
  4. 絨毛間血栓と広範絨毛周囲フィブリン沈着/母体床梗塞
  5. びまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシス(慢性早剝羊水過少症候群)
   [知っていますか?❸ 新生児ループス症候群と胎盤病理]
 Ⅲ.胎児血管異常
  1. 胎児血管灌流不全
  2. 間葉性異形成胎盤
   [知っていますか?❹ 臍帯血管腫]
 Ⅳ.感染症,炎症性疾患
  1. 経腟感染症(絨毛膜羊膜炎)
  2. 血行感染(特異的感染症)
  3. 原因不明慢性絨毛炎
  4. 慢性絨毛間炎
 Ⅴ.多胎妊娠
  1. 多胎胎盤の正常構造
  2. 双胎間輸血症候群
  3. 無心体
 Ⅵ.癒着胎盤と類縁疾患
  1. 癒着胎盤
  2. 胎盤遺残,弛緩出血,羊水塞栓症
 Ⅶ.胎児の先天異常・子宮内胎児死亡と胎盤病理
  1. 子宮内胎児死亡と胎盤の死後変化
  2. Potterシークエンス,羊膜索シークエンス
  3. 一過性骨髄異常増殖症と先天性白血病
  [知っていますか?❺ 先天性消化管閉鎖に合併する臍帯潰瘍]
 Ⅷ.妊娠関連絨毛性疾患と胎盤腫瘍
  1. 胎盤部トロホブラスト腫瘍
  2. 類上皮性トロホブラスト腫瘍
  3. 妊娠性子宮絨毛癌
  [知っていますか?❻ 卵巣絨毛癌]
  4. 胎盤原発腫瘍・転移性腫瘍(母体由来・胎児由来)
  [知っていますか?❼ 胎盤の異所性胎児肝組織]

付録 胎盤重量・臍帯の長さ・胎児体重の目安
索引