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教育課程のその先まで使える基礎心理学教科書の決定版!深い理解は質の高い心理療法へつながっていく.現場への橋渡しとなる精神科医のコラムも各章に掲載.

新刊

臨床の質を高める

基礎心理学

  • 編集:坂上貴之(慶應義塾大学名誉教授)
  • 編集 蒲生裕司(医療法人社団心清会理事長)
  • B5判・320頁・2色刷
  • ISBN 978-4-8306-3631-8
  • 2024年5月8日発行
定価 5,280 円 (本体 4,800円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

基礎心理学を身近に感じられる工夫をちりばめた教科書.「公認心理師大学カリキュラム標準シラバス」小項目や公認心理師試験過去問のキーワードが一目でわかるよう青字で表示した.また単なる国試対策本にとどまらず,公認心理師となった後も臨床の質を高められるよう,本書で得た知識と現場の橋渡しとなる精神科医のコラムを掲載.国家試験のブループリントが変更になっても,長く活用できる普遍的・標準的内容をまとめた.
序文

 心は迷宮のようなものだ.
 この迷宮は多くの通路や曲がり角,そして思いもしないような罠で構成されている.この複雑な構造は,すなわち,人間の心の多面性と深い内面によるものだ.心とは,感情,思考,記憶などが複雑に絡み合ったものであり,その全貌を捉えることは容易ではない.
そのため,心理的な反応や感情は予測が難しく,時に思いもしない方向へと心の迷宮を進むこともある.心の迷宮は常に変化している.新しい通路が開かれたり,未知の部屋が現れたりする.
 基礎心理学は心の迷宮の地図を描く冒険家のようなものである.この分野の研究者たちは,人間の心という未知の森を探検し,感情の小川や認知の丘,行動という道などを地図に記す.そして,新たな発見に対し,地図を書き換えることで迷宮の全貌をより正確に捉えようと試みる.
 この地図は,心の迷宮を旅する臨床心理学者にとって,クライエントの心の奥深くへと足を踏み入れるための貴重な道標となる.そのため,臨床心理学者は,最新の研究に目を光らせ,治療のための道標を常に更新しなければならない.心の迷宮を進むということは,時に神秘的で,時に複雑怪奇である.基礎心理学の知見により不安や恐怖などが心にどのような影響を与えるかを知ることは,迷宮の罠を解除する鍵のようなものだ.しかし,理論の鍵だけでは,心の迷宮を脱出するには不十分である.臨床心理学者は,その鍵をどのように使いこなすかという技術を磨かねばならない.
 近年の基礎心理学,特に神経心理学の進歩は,心の迷宮に新たな光を当てている.脳の画像化技術の進歩,分子生物学の進歩などにより,感情や認知のプロセスが脳内でどのように進行するかについての理解が深まり,それに基づいた新しい治療法が開発されることで,臨床心理学者は,新たな地図や鍵を使うことができるようになった.
 心の迷宮では,各々の通路がクライエント一人ひとりの心理的な特色につながっている.臨床心理学者は,この迷宮の案内人として,クライエントの個性や生活背景といった光により迷宮の影を照らしながら,基礎心理学の知見を地図にして,それぞれのクライエントが自分に合った道を見つけ出す手伝いをするのだ.
 このように,基礎心理学の深い理解は,臨床心理学者にとっての実践的な技術と知識の土台となる.この土台の上に立つことで,臨床心理学者はクライエントの心理的な健康を支え,心理療法の質を高めることができる.
 心の迷宮を冒険する旅は難しいが,本書は冒険のために不可欠な装備となるであろう.本書を楽しみながら読んでいただくことで,その旅を成功に導くことができると確信している.

 2024年4月
 蒲生裕司
第Ⅰ章 心理学における研究・心理学に関する実験
 1.科学と実証
 2.実験法
 3.調査法・検査法
 4.観察法・調査的面接法
 5.研究倫理
 6.研究レポートの書き方
 7.精神物理学的測定法
 8.反応時間(視覚探索課題)
 9.信号検出理論
 10.心理量の測定とマグニチュード推定法
 11.心理学的尺度構成とSD法
 12.偶発学習と処理水準

第Ⅱ章 知覚及び認知
 1.感覚の種類と構造
 2.感覚・知覚の基本特性
 3.視覚
 4.聴覚
 5.体性感覚・化学的感覚・多感覚統合
 6.対象認知
 7.感覚・知覚の障害
 8.認知の基本特性
 9.記憶のメカニズム:感覚記憶・短期記憶・ワーキングメモリ
 10.記憶のメカニズム:長期記憶
 11.記憶のメカニズム:日常的記憶
 12.注意のメカニズム
 13.知識の表象と構造
 14.問題解決と推論
 15.認知機能の障害

第Ⅲ章 学習及び言語
 1.学習・行動領域の心理学
 2.行動の測定と実験デザイン
 3.生得性行動
 4.レスポンデント(古典的)条件づけ
 5.オペラント(道具的)条件づけ
 6.刺激性制御
 7.強化随伴性
 8.高次の学習・行動
 9.言語発達のための基本的能力
 10.言語獲得の理論
 11.音声の発達
 12.語彙の発達
 13.文法の発達
 14.言語の生物的基礎
 15.言語の障害

第Ⅳ章 感情及び人格
 1.感情の特徴
 2.感情の測定
 3.感情とそれに伴う反応
 4.感情研究の黎明
 5.基本感情説
 6.感情の認知論的観点
 7.次元説,コア・アフェクト理論,心理学的構成主義
 8.感情制御
 9.パーソナリティ心理学の歴史的展開
 10.パーソナリティの古典的理論
 11.パーソナリティ心理学の発展(1):特性論的研究の展開
 12.パーソナリティ心理学の発展(2):学習理論・認知論的研究の展開
 13.パーソナリティの形成と変容
 14.パーソナリティの障害
 15.パーソナリティのアセスメント

第Ⅴ章 脳・神経の働き
 1.脳と心
 2.神経系の構造
 3.ニューロンの構造と機能
 4.脳における機能局在
 5.脳機能の研究法
 6.神経の可塑性と環境による変化
 7.感覚・知覚と脳(1):視覚・聴覚
 8.感覚・知覚と脳(2):体性感覚・味覚・嗅覚
 9.運動と脳神経系
 10.記憶と脳神経系(1):記憶に関与する脳部位
 11.記憶と脳神経系(2):記憶のメカニズム
 12.感情と脳神経系
 13.動機づけと脳神経系
 14.高次脳機能障害
 15.精神疾患と脳神経系

索引